●Tyler Cowen, “Can classic moral stories promote honesty in children?”(Marginal Revolution, July 4, 2014)
長年にわたる論争のテーマとなっている話題の一つに関して次のような最新の研究結果が報告されている。
●Kang Lee et al., “Can classic moral stories promote honesty in children?”, Psychological Science, forthcoming
<要約>道徳的な教訓を伝える物語を語りかけることで、嘘をつくとどういう結果が待っているか、正直でいることがいかに有徳な振る舞いなのかを子供たちに教え諭そうとする試みは広く見られる現象である。そうであるにもかかわらず、その効果のほどを検証した具体的な証拠はこれまでのところ存在していない。そこで今回我々は3歳から7歳までの子供たちに対して(道徳的な教訓を伝える)4つの物語を話して聞かせ、その子供たちから正直な振る舞いを引き出す上でどの物語が効果を持ったかを比較・検証する実験を行った。その結果は幾分驚くべきものであった。子供たちから正直な振る舞いを引き出す1上で『ピノキオ』(“Pinocchio”)や『オオカミ少年』(“The Boy Who Cried Wolf”)といった物語はほとんど効果が無かった2一方で、『ジョージ・ワシントンの桜の木の逸話』(“George Washington and the Cherry Tree”)はかなり大きな効果を持った3のである。『ジョージ・ワシントンの桜の木の逸話』とそれ以外の物語との間でそのように(子供たちから正直な振る舞いを引き出す上で)効果に違いが見られる理由の一つは、『ジョージ・ワシントンの桜の木の逸話』では正直な振る舞いに伴う好ましい結果4が強調されている一方で、それ以外の物語では不正直な振る舞いに伴う好ましからぬ結果5に焦点が合わせられている点にあるのではないかと推察される。というのも、『ジョージ・ワシントンの桜の木の逸話』の内容に修正を加えて不正直な振る舞いに伴う好ましからぬ結果を強調したところ、その修正版の『ジョージ・ワシントンの桜の木の逸話』を聞いた子どもたちのかなりの割合が(『ピノキオ』をはじめとした)その他の物語を聞いた場合と同様に嘘をついたのである6。
この話題はケヴィン・ルイス(Kevin Lewis)経由で知ったものである。感謝する次第。
- 訳注;「背後に置いてあるおもちゃを勝手に見てはだめよ」と注意されたにもかかわらず、その注意を破っておもちゃを盗み見したことを正直に告白する [↩]
- 訳注;『ピノキオ』や『オオカミ少年』を話して聞かされた子どもたちのグループでは、おもちゃを盗み見した子供の多くが「見ていない」と嘘をついた [↩]
- 訳注;『ジョージ・ワシントンの桜の木の逸話』を話して聞かされた子供たちのグループでは、おもちゃを盗み見したことを正直に話す子供がかなり大きな割合を占めた [↩]
- 訳注;父親が大事にしている桜の木を切ってしまったことを正直に告白した結果褒められる(『ジョージ・ワシントンの桜の木の逸話』) [↩]
- 訳注;嘘をつくと鼻が伸びる(『ピノキオ』)/何度も繰り返し嘘をついたために(真実を語っても)誰からも信用してもらえなくなる(『オオカミ少年』) [↩]
- 訳注;この研究については次の記事も参照のこと。 ●Shirley S. Wang, “子供を正直に育てる方法、ピノキオより「ワシントンと桜の木」”(ウォール・ストリート・ジャーナル日本版, 2014年7月4日) [↩]
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