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2014-07-06

おすすめカリフォルニアワインをワイナリーで飲む/米国訪問記(4)

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世界でいちばん美味しいワインができる地域はどこだろう?

味の好みは人それぞれだが、いちばん「ハズレ」が少ないのはカリフォルニアだ。アメリカのワイン生産量はイタリア、フランス、スペインに次いで世界第4位。とくにカリフォルニアは気候に恵まれており、極端な不作・凶作に見舞われにくい。

この地でワイン造りが始まったのは19世紀だが、注目を集めるようになったのは20世紀後半になってからだ。1976年、パリで行われた利き酒大会で、まったく無名のアメリカ産ワインが、バタール・モンラッシェやムートン、オー・ブリオンといった名門のフランスワインよりも「美味しい」と評価されてしまった。『パリスの審判』と呼ばれるワイン業界の大事件だった。以後、カリフォルニアのワインは世界的に注目されるようになり、手頃な価格で最高の味を楽しめる酒として愛されている。

現在、カリフォルニアのナパ群とソノマ群にはあわせて400を越えるワイナリーがある。観光客向けの試飲ツアーも多く、また、どこまでもブドウ畑が広がる光景は圧巻だ。サンフランシスコに行く機会があれば、ぜひナパバレーまで足を伸ばしてみてほしい。



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※ゴールデンゲートブリッジを越えて、いざ、ワインカントリーへ!





■ドメーヌ・カーネロ


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まず私たちが向かったのは、ドメーヌ・カーネロス。フランスのシャンパン大手ティタンジェ社が出資している醸造所だ。シャンパーニュ地方ではないので「シャンパン」と呼称できないが、製法・品質は本場のシャンパンに勝るとも劣らない。


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テラスのテーブル席で試飲ができる。この醸造所はナパ市内よりもやや涼しい地域にあり、スパークリングワインに好適なブドウを栽培している。


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テラスからの眺め。まだ午前中の早い時間なので、日差しは穏やか。


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スパークリングワインの飲み比べセットを注文。奥から順番に、辛口の「ブリュット」、ピノノワールを使用した「ブラン・ノワール」、そして「ロゼ」、やや甘口の「ドミ・セック」の四種類だ。グラスに注いだ直後の泡立ちは力強く、また時間が経っても泡がなくならない。



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ワインを使ったチョコレートなど、お土産も充実していた。






オーパス・ワン


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市内を抜けて、ナパバレーの奥へ。日差しが一気に強くなるが、湿度が低いので不快な暑さではない。オーパス・ワンに到着するころには雲一つない晴天になっていた。先ほどのドメーヌ・カーネロスとは対照的に、現代的なデザインの建物が出迎えてくれる。醸造所ごとの意匠の違いも面白い。


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醸造所のすぐ向かい側には、ブドウ畑が広がっている。ブドウの木はストレスを与えるほど、ワインに適した実をつけるらしい。金属製のワイヤーで枝を押さえつけて、列からはみ出した葉は剪定して、徹底的にいじめ抜く。すると、ワイン造りに好適な糖度の高い実が収穫できるのだそうだ。


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ブドウ用の自動散水器。黒いホースの中を水が通っており、ホースに開いた穴からしたたり落ちる仕組みだ。土壌は固く乾燥していて、水は必要最小限しか与えない。植物にとってはかなり過酷な環境だ。


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いよいよ試飲へ。オーパス・ワンはカリフォルニアの高級ワインのなかでも日本での人気が高い。マンガ『神の雫』や『ソムリエール』に登場したためだろうか。

1976年の「パリスの審判」で、カリフォルニアが注目されるようになったのは先述の通りだ。シャトー・ムートン・ロートシルトのフィリップ・ド・ロッチルト男爵は、カリフォルニアワインの第一人者ロバート・モンダヴィに声をかける。二人は意気投合。そして1978年、本格的なボルドー風ワインの生産を目指してオーパス・ワンが設立された。ラベルに描かれているのはロッチルト男爵とモンダヴィの横顔である。



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グラスを持ったままワイナリーの屋上へ。ナパバレーの牧歌的な景色を眺めながらワインを楽しむ。こんな酒を言い表す言葉は一つしか見つからない。「最高」だ。





■V.サトゥーイ・ワイナリー


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昼食はV.サトゥーイ・ワイナリーへ。1885年創業のかなり古い醸造所だ。


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醸造所内のデリカテッセンでは、様々な料理を量り売りしている。サンドイッチが大きすぎるかも……と言ったら、こころよく人数分に切り分けてくれた。


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デリカの隣では、世界中のチーズが販売されている。お土産を選んでもいいし、お好みのワインとチーズの組み合わせを探してもいい。天国はここにあった。


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醸造所の庭に出て、昼食をとる。


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昼食のメニューは、ベイクド・ベジタブル、エビのマヨネーズあえ、ターキーのサンドイッチだ。写真ではチープに見えるが、味は悪くない。たとえるなら、そう……高島屋の地下のデリカコーナーと同じくらい美味しかった。ほかに味を表現できないボキャブラリーの貧弱さがくやしい。


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醸造所のすぐ隣をワイン・トレインが走っている。乗客が手を振っていたので、こちらも笑顔で振り返す。どちらも観光気分でうかれているのだ。ほろ酔いで過ごす、しあわせな午後。





■ルビコン・エステート


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映画監督フランシス・コッポラが所有していたことで有名なワイナリー。1880年設立のナパバレーで最も古い醸造所「イングルヌック」の畑の一部を買い取って、1975年に創業した。


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建物の中は重厚な調度品で飾られている。コッポラ監督だけにマフィアの親玉でも住んでいそうな雰囲気だ。


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観光客向けの博物館のような区画もある。


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数々の展示品を眺めた先にはカフェスペースが。ここでワインの試飲ができる。


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イングルヌック・ルビコン・ラザフォードを注文。重厚なうまみが口いっぱいに広がり、いつまでも香りが残る。

アメリカは20世紀初頭に「禁酒法」の時代を経験している。19世紀末から始まったメソジスト派キリスト教徒の禁酒運動は、少しずつ議会への影響力を増していき、そして1920年、ついに禁酒法が制定された。あらゆるアルコール類の製造・販売・流通が禁止され、カリフォルニアのワイナリーも事業を停止せざるをえなくなった。ワインの生産設備や樽はすべて廃棄処分されたという。

ところが禁酒法は成功せず、現在では「天下の悪法」と見なされている。

たとえばニューヨークの場合、禁酒法以降には3万2千もの「もぐりの酒場」を生み出すことになり、飲酒量は禁酒法以前に比べて10%も増加した。飲酒運転の摘発は、1920年の1年間に比べて、1927年には467%も増大した。また禁酒法は国外の酒には何の影響力もなく、カナダやメキシコ、カリブ海の酒造業者は大いに栄えた。酒の密造や密輸が横行するようになり、アル・カポネのようなギャングの収入源を増やすだけだった。

たしかに酒を飲んで泥酔するのは、倫理的に褒められたことではない。

しかし倫理的に褒められないからといって、法律で禁じれば何が起きるのか。禁酒法は手痛い教訓を教えてくれる。

1933年、禁酒法は廃止される。現在のカリフォルニアにあるのは、その後に復活を果たした醸造所だ。




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カフェにはテラス席も併設されている。ナパバレーの風は、土のいい匂いがした。草木が日に焼かれて焦げたような懐かしい匂いだ。木漏れ日のなか、歴史に思いを馳せながらワインを味わいたい。





■ロバート・モンダヴィ


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最後はロバート・モンダヴィへ。ラベルにも描かれている三角屋根の建物が出迎えてくれる。


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爽やかな風が気持ちいい。


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そして試飲。手前から順番に、2012年フュメ・ブラン、2012年ピノ・ノワール、1992年カベルネ・ソーヴィニヨン、2001年ソーヴィニヨン・ブラン・ボトリティスを選んでみた。


フュメ・ブランは、この醸造所を代表する製品の一つ。白ワインなら取りあえずこれを買っておけば安心だ。使われているブドウはソーヴィニヨン・ブラン。香りは華やかで風味豊かなのに、口の中はベタベタしない。


ピノ・ノワール種のブドウは「シルクのような」と評されることもある飲み口の柔らかさが特徴だ。ロバート・モンダヴィでもその特長は活かされており、ベリー系の果実味のあとに複雑な香りが残る。


ワインの味は保存状態によって変わるため、長期熟成のものほど当たり外れが大きい。しかしワイナリーで飲めばその不安はない。カベルネ・ソーヴィニヨン種のブドウは渋みが強く、荒々しい味だというイメージを持っていた。が、12年間の熟成を経ると角が取れ、じつにまろやかな美酒になるようだ。カベルネ・ソーヴィニヨンの実力を教えてくれる一杯だった。



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ワイン畑には、かならずバラが植えられている。現在では観賞用でしかないが、昔は意味があったらしい。バラの花はブドウよりも少し早く咲き、そしてブドウよりも少し早く実をつける。バラの木に虫がつくかどうかを見れば、その年の虫害を予測できたという。




     ◆




世界でいちばん美味しいワインができるのは、どこか?

味の好みは人それぞれだ。イタリアの気楽なワインを楽しむのが好きという人もいれば、スペインのワインをがぶがぶ飲みたいという人もいるだろう。サイフに余裕のある人はフランスワインを一番だと感じるかもしれないし、ドイツの甘いワインを愛する人もいるだろう。

そういった好みを幅広く満たしてくれるのがカリフォルニアのワインだ。ハイエンドな最高級品から気軽なテーブルワインまで、何を買ってもハズレが(ほとんど)ない。恵まれた気候と作り手たちの情熱が、カリフォルニアワインの現在の地位を作った。

6月のナパバレーは温かく、空気はカラッと爽やかだ。風には豊かな土壌の香りが混ざっていて、屋外で酒を飲むと本当に気持ちがいい。口にするのが最高のワインとなれば、なおさらだ。あなたが酒を愛する人間なら、一生に一度はカリフォルニアに寄り道してもいいだろう。





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