世界を食べたキミは無敵。

情緒不安定で夢見がちな女医のブログ

何かに依存しないと生きていけない。

26年間曲がりなりにも生きてきて気付いたことは、自分は何かに依存しないと生きていけない人間だということだ。

この事実を受け入れるまでには、ある程度の精神的・肉体的な犠牲と、ある程度の時間がかかった。

このひとつの事実は、私なりに考えた『自分の人生を上手く生きていく方法』の答えでもある。



もし、今がまだ人格形成の途中段階の年齢であればこの性質を変える努力も出来るのだろうが、26になった今ではその方法はあまり効率的ではない。

三つ子の魂百までという言葉があるが、成る程確かに、その言葉の通りであるなと思う。私のこの依存体質は、幼い頃から着々と形成されてきていたのだと今振り返ると感じる。



私はひとりっ子であり、私の母は教育ママであった。この構図によって生み出される子供は『ママの期待に答えるべく努力し、親の顔色を伺う"いい子"』である。これにより無意識のうちに、私の人生における様々な選択における判断基準は"母が喜ぶかどうか"'母がいいと言うかどうか"というものになった。


しかし自分の判断基準が母に依存しているという事実は、私が大学に進学し実家を出るまで気づくことはなかった。これに気付いたのは大学生になって、依存相手が母から彼氏に移り、ハッキリと目に見える形でボーダーという病気を発症したからである。


依存相手が身内である母だった時には生じなかった問題が、他人である彼氏となると起きてくる。自分におきている異常な感情や行動がボーダーによって引き起こされているということは、皮肉な事に自分が医学生だったから比較的直ぐに解った。そして心療内科に行ったりボーダーに関する本を読んだりしていくうちに、自分にある依存体質に気がついたのだ。この自分の性質に気がついたのは治療への第一歩だった。


しかし長い時間をかけて培われた人格はそう簡単に変わるものではない。ボーダーがなぜ人に依存するのかというと、人格形成時期において自分という存在を自分で作ることが出来なかった(もしくは明確に認識できなかった)事に起因する。『空っぽ』『自分がない』という感情はここから生まれる。自分がないから自分の生きている現実世界にも足がつかない。ここから『離人感』が生まれるのではないかと思う。自分が無いから他人に作ってもらおうとする。他人に依存して『他人の人格を借りる』のだ。しかし他人は他人であり自分ではない。もし人格を借りた相手が思い通りに動かないと自分の存在に矛盾がおきる。自分で自分をコントロールできなくなるのだ。そもそもここで言う自分は自分ではないので『他人をコントロール』しようとすることになる。そんなことは不可能なので問題が生じてしまう。


大学生時代、制御不可能な怒りと虚無感の中で周りに迷惑をかけながら怒涛の日々を送り、それでもゆっくりとこれらの自己分析に辿り着いた。本当に長い時間かかったし、一番楽しい年代をムダにしたとも思える。けれどこの経験は必ずこれからの人生に活かしていけるはずだと今になって少しは思えるようになってきている。


そしてボーダーが良好なコントロールをもって維持できる決め手となったのが、社会人になった事だった。

私は社会人になると同時に医師免許を手に入れた。この医師免許は国が『あなたを医師として認める』証明書だ。医師免許によって、私には医師という名前がついた。これは私にとって医療行為が出来る以上の意味を持っていた。国が、社会が、私の存在を定義し、明確にしてくれたのだ。社会は私が存在することを認め、社会で生きていくことを許してくれた。『社会の歯車の一つになれた』という実感が私を現実世界にとどめてくれた。私の依存相手が社会に移ったのである。


結局、依存症という根本は治っていない(まだ心のどこかで母親なり誰かなりへの依存は抜け切れていないと思う)が、この状況はあまり人に迷惑をかけていないしこれでいいと思っている。これで心の平穏が保てて楽しくやっていけるなら、依存症を認め共に生きるのも悪い事ではない。私にはこういう生き方しかできないという、ある種の諦めもあるのかもしれない。


もし依存症で悩んでいるのであれば、その事を悪いことと思わない方がいい。高所恐怖症だとかカナヅチだとか、そんなレベルだ。そして依存相手を選ぶことだ。なるべく害のないものに。そしてそれは、あなたと社会を何らかの形で結びつけてくれるものがいいと思う。例えば料理教室に通ってそれをブログで発信するだとか、資格のようにあなたに名前をくれるものだとか。社会はあなたを簡単に裏切ったりしない。あなたがよっぽど社会に対して悪いことをしなければ、社会は簡単にはあなたを排除しようとしたりはしない。


失ってしまった大切な時間を無駄にしないために、これからは健全な依存生活を送っていけたらいいなと思っている。