今回のゲストは、「TSUTAYA図書館」で話題の武雄市の樋渡啓祐市長です!
J-WAVE『JAM THE WORLD』の2014年7月1日放送分よりピックアップ。
番組のコーナーであるBreakThrough、今回のゲストは武雄市の樋渡啓祐市長です。
武雄市と言えば「TSUTAYA図書館」で有名になりましたが、実は図書館改革だけではなく、教育改革などあらゆる分野でどんどんユニークな行政政策を実行して話題となっております。
まず番組の前編は、「TSUTAYA図書館」ができた経緯、「市民が喜ぶ居心地のいい図書館」がこの1年でもたらしてきた効果、など主にこちらの図書館をメインの話題に、最後に市長を目指すようになったきっかけをお話されています。
しゃべるひと
- 樋渡啓祐さん(武雄市長)
- 津田大介さん(ジャーナリスト)
『カンブリア宮殿』で見た代官山・蔦屋書店をヒントに
津田:いま樋渡さん、2006年に総務省のキャリア官僚から退職されて市長選挙に立候補して見事当選されて、現在3期目なんですよね。
樋渡:はい、そうですね。
津田:これまで市のホームページをFacebookに移設したりとか、市職員にSNSなどをちゃんと活用するということを奨励して、オープンガバメントみたいな形で市民と職員がFacebook上で交流するなんていうことが話題になったわけですけれども。
やはりそんな中で多くの新聞やテレビなど大注目されたのが、2013年のTSUTAYAと、カルチュア・コンビニエンス・クラブと市立図書館を運営することで提携するということだったんですが、あれが生まれた経緯を教えていただけますか?
樋渡:いや、今までの図書館がイケてないからですよ。
だって、もう夕方5時半になると閉まるしね、年間94日もそんな閉まる図書館なんて、公共施設としてありえないですよ。しかも居心地、超悪いし。
津田:公共サービスを提供しているところなのに質が悪かった、ということへの不満が原点だったんですか?
樋渡:そうそうそう、そうなんですよ。
顧客や市民の立場に立ったときに、もう全然イケてない図書館だから「じゃあもうやっぱり自分で行きたい図書館を作ろうよね」って思ったときに、たまたま『カンブリア宮殿』を観た時に、代官山・蔦谷書店が出たんで、「あぁこれだったら居心地の良い空間になるんじゃないかな」、と思ってアプローチを僕からしました。
津田:じゃあもう、行政サービスとして市民が喜ぶ居心地の良い図書館を作るという目的があった中で、そこをモデルのように実現していったのがTSUTAYA図書館っていうのがあったので、最初からTSUTAYAありきということだったんですね?
樋渡:そうです、もう完全にありきですよね。
この1年で利用者数は約4倍に
津田:うーん、なるほど。
これ行政だったら通常やっぱり行政が全部管理運営すべきじゃないか、というような意見もあるかと思うんですけれども、一部これCCCに委託しているあたりとかって、このあたりの狙いっていうのは?
樋渡:これねぇ、官がやってたら、これできないんですね。それ、もう官の限界なんですよ。
だから、官のシステムに民のノウハウを乗せるというのは、これ「指定管理者制度」っていう制度そのものがあって、それをもう活用したにすぎないんですね。
しかも、その例えばスタバがあったり蔦屋書店が入ったりっていうのは、やっぱり図書館法で認められている「目的外使用」のところでビジネスとしてなりたっているから、それがまだ色んな例えばアイディアとか色んな外注とかにそのお金をまわせるということなんですよね。
津田:これは、実際にこの図書館で利用されて、運営を委託、TSUTAYAに図書館の運営を委託してからですね、利用者の数は急増したわけですけれども。この1年で100万人突破。
僕も伺った時、ほんと午前中の早い時間だったんですけどかなり満席な状態だったんですけど、それまでの利用者ってどれくらいだったんでしょうか?
樋渡:だいたいもうずっと減ってきてて、直前の図書館だとだいたい25万人です。だからもう3.8倍から4倍近く増えたということになりますよね。だから、もうイケてないから減っていくんですよ。
津田:そして、これ、あのTSUTAYAに任せたっていうこと、官ができないことがあるっていうお話だったんですが、TSUTAYAに一部委託したことによって、これ、開館時間とか休館日ってのはどうなったんでしょうか?
樋渡:まず、開館時間は朝9時から夜9時まで。それで365日開館してますから、年中無休なんですよ。だから休館日とか気にしなくて行けるっていのうが今回の最大の実はポイントなんですよ。
津田:そうすると住民が色々な様々な知にアクセスがしやすくなる。
樋渡:そうです、そうです。
図書館は「無料の貸本屋」ではない
津田:実際に図書館っていうのはそこで色々な人が出会ってコミュニケーションをするようなコミュニティスペースとしての役割っていうのもあると思うんですが、実際にこういうTSUTAYAで武雄図書館がリニューアルしてからそういった予期せぬコミュニティの活性化みたいな、そういう現象は起きましたか?
樋渡:いやー、起きましたよね。
僕らは街の中に図書館を作ったつもりが、図書館の中に街ができたような感じなんですよね。
だから、そこですごい全国からとんがった人たちが、津田さんみたいな人たちが来ることによって、そこに出会いがあったり再会があったり、あるいはそこからイノベーションが生まれたりっていうのは、組み合わせからしかイノベーション生まれないじゃないですか。
だから僕もしょっちゅう図書館に行って、色んな人の話聞いたりとか話をしたりとかっていうふうにして、そこでいくつかもうビジネスが生まれるっていうところまでもう来てるんですよ。それが今まで地方になかったわけですよね。
で、僕らは図書館は「無料の貸し本屋」じゃないと思ってるんですよ。あくまでも知に触れる。それが、本が媒体であったりとか、その空間で本に触れる、人に触れるっていうのは最大の目的だと思っているし、図書館はそもそもそれを目指していたと思うんですよ。
無料の貸し本屋なんか目指してなかったと思うんですよ。それをひとつの類型として僕らは提示をしたっていうことだと思うんです。
津田:そういう意味で、やっぱり新しい市民の図書館っていうものをキーにした、新しい住民サービスを提供することには成功できたという評価ですか?
樋渡:いやー、まぁ賛否両論ありますけどね(笑)。
津田:否定的な意見として最も多いのはどういうものなんですか?
樋渡:いやー、一番多いのは「なんでCCCなんだ」っていうね、いまだに言われるっていうことと、それと図書館に今まで慣れ親しんだ人たちがいわゆる「図書館道」ですよね、「図書館じゃねえんじゃねえか」っていうのは、まぁ慶応の糸賀さんとかが中心として言ったりとかね。
津田:確かに、僕も伺った時にこれは確かに良いと思ったんですね、これブックカフェとしては最高に良いなと思った一方で、武雄の図書館ってこの武雄市図書館1コしかないって言った時に、なんか昔ながらの図書館があって、そしてまた武雄市図書館が、両方あったらなんかすごく良いんじゃないかな、なんて思ったんですね。
樋渡:なるほど、うーん、なるほどなるほど。
ただ、そうするとそれはすごい市民負担になる、コストになるからね。だからこれで、例えば図書館の、今度7月になるとまた満足度調査とって、去年とった時83%だったんですよ、満足度の調査が。
これが急減したりとかってなれば「これ駄目だろう」って思うんだけど、今度の調査結果はやっぱりすごい楽しみですよね。
津田:なるほど。そこはちゃんと満足度が上がっていくだろうという自信はあると?
樋渡:いやー、ちょっと落ちるんじゃないかな、やっぱりさすがに。83%って異様な数字だったから、期待感込めてね。
だけどやっぱり70%ぐらいあったら、また次にイノベーション起こせるなって、その延長線上でイノベーション起こせるなっていうのは思ってますけど。
市民は「雑誌」を求めていた
津田:でも実際に図書館を作って形にしたことによって、思わぬ意外な反応とかもしくは嬉しい誤算みたいなものもあったと思うんですけど、それはどういうものでしょうか?
樋渡:本が売れるようになった。
津田:つまり図書館で蔦谷書店も併設されているっていうことですよ。
樋渡:そうなんですよ、そうなんですよ。
本が売れるようになったっていうのと、もうひとつね、すごい実はいいなぁって思っているのは、要するに今まで図書館とか本に縁遠かった層が結構来てるんですね。10代とか20代の子が。
そしてしかもデートで結構来たりする高校生が、男の子が、背伸びしてすごい難しいビジネス書を買ったりするわけですよ、津田さんの本とか。それがすごく、「なんかいいなぁ」と思って。
アプローチがすごくしやすくなってるんですよね。
津田:僕は実は武雄図書館行った時にこれいいなと思ったのは、雑誌がかなり置いてあるじゃないですか。
雑誌をカフェで持ち込んで読むことができて、結構自由に読める。あそこまでタイトルが色々豊富になっていてそれを読むことができるって、やはり僕はもともと雑誌のライター出身だからということもあるんですけど、雑誌がもたらす情報っていうのはやっぱりネットとは違う、すごく…。
樋渡:いやー、最高に良い人生のライフスタイルを提供しているっていうふうに思ってるんで。
でもこれ、図書館では購入できないんですよね。しかも地方の書店だとますます購入ができない。そういう意味では窮余の策としてこれやったんだけれども、これが実は市民のアンケートとった時に、僕らはものすごく実はアンケートとるんですよ、図書館スタート前に。
一番多かったのは実は雑誌なんですよ。やっぱり求めてるんですよ。それから2番目がカフェだったんですよ、図書館に求めてるって。だからそのワンツーフィニッシュをやっぱり提供するってしたから、市民ニーズに応じて我々はそういったニーズを提供できたんで、それが今受けてるっていうふうに思ってますけどね。
津田:だから、そこの実は雑誌を自由に読めるスペースとしてのその知の共有っていう意味でのあのところに、もう少し僕はクローズアップがされてもいいかなっていうのは思いますけどね。
樋渡:なるほど。それはそうですね。
津田:そこがすごく僕は実は一番の魅力というか、結局雑誌ってあんまりAmazonで買ったりしないですけど、そこに置いてあって読むことによって色んなものにたぶん興味を、扉を開くようなところっていうのもあると思うんですよね。
樋渡:それはそうですね。すごいバックナンバーもたくさんあるんですね。
しかも、ご存知の通り、マガジンストリートの真横がスターバックスのカフェだったり共有のスペースだったりするんで、すぐ手に取って読めるっていう構図になっていてね。
それから面白いのが、その中で単に読むだけじゃなくて、本当にいいものは買ってくださるんですよね。だから結構雑誌も売れてるんですよ。
「市長になるしかないと思った」
津田:なるほど。
ちょっと最初のところに話が戻るんですけれども、そもそも樋渡さんが総務省を辞めて市長になろうと決意されたきっかけってなんだったんでしょうか?
樋渡:僕、高校不登校だったんですよ、そんときに講演会があった時に、隣の町長さんがすっげえかっこいい人だったんですよ。
あの当時、車椅子マラソンとか棚田ウォーキングとか連発して、壇上から転げ落ちるくらいの勢いでやってたんで、「俺の職業はもうこれだ」って高校の時に思ったんですね。
津田:市長だと?
樋渡:「僕はもうこれしかできない」と。
で、僕質問したんですよ、笑われながら。「僕は友達もいないし集団行動もできないし協調性もないけれども、この仕事って僕できるんですか」って言ったら、「むしろそっちのほうがいい」って言ってくださったんですよ。
だから彼は時事通信やめてニューヨーク支局長やって60歳でなったんですね、町長に。それで僕も60ぐらいでなろうと思ってたんですよ。でも色んな人にたぶらかされてね、四半世紀早くなっちゃったんですけど。
津田:なるほど。なんか厳しい意見っていうのも、ちょっと今Twitterで来たんですけれども。「でも、イケてる図書館がないから代官山の蔦谷書店をっていうのは、それはイノベーションじゃなくて単なるな輸入じゃないのか」っていう意見もありますけど?
樋渡:いや、すごい正しいと思いますよ。
だけどほとんど99%真似でいいと思ってるんですよ。それで、100%真似ってできないんですね。だって、そうやってぜんぜん場所も違えばやってる人も違うんだから。
それにプラス1%のイノベーションがあればそれで、しかもそれがひとりよがりじゃなくて多くの市民の皆さんたちに評価されれば、僕は物真似だろうと猿って言われようが、もうぜんぜんOKです。
津田:少なくともそれが今83%の満足度には繋がっているということですね。
こちらの放送、教育改革の取り組みについてお話された内容は後日公開予定です!
つまみのひとこと
”つまみ”も市長になれるかな…。
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