ドクターZは知っている

「パチンコ税」が急浮上してきた本当のワケ

2014年07月06日(日) ドクターZ
週刊現代
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〔PHOTO〕gettyimages

あまり注目されていないが、「パチンコ税」構想が急浮上してきた。議員連盟が勉強会などを開催、表向きは法人税減税の穴埋めという理由で議論されているが、実はもっと隠された理由がうかがえる。

まず、パチンコは「脱税」の多い業種である。毎年国税庁から公表される「法人税等の調査事績の概要」(2012事務年度版)をみると、法人税の不正発見割合の高い10業種の第2位になっている。

次に、犯罪の予防という名目によって、全国管区警察局長ごとに天下りの「縄張り」が決められ、警察官僚の天下り利権にもなっている。パチンコは実質的には、「民間賭博」であるが、法的には風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)で規制されており、「警察の所管」という形になっているからだ。もっとも、このシステムのために、パチンコ店では景品を出し、パチンコ店のすぐそばの景品交換所でその景品をおカネに交換するという、刑法賭博罪的にグレーな運営がされている。

加えて、一部のパチンコ店経営者に北朝鮮出身者がおり、北朝鮮への送金源になっているとの指摘もある。

こうしたパチンコ業界に対しては、「警察官僚の管理下で容認する考え方」と、「パチンコを賭博と位置づけ、代わりにカジノなどと一緒に法規制下に置く考え方」がある。海外では後者が一般的で、最近ではこの考え方をベースに、北朝鮮への牽制としてパチンコに対する新たな法規制への取り組みが強く主張されてきた。

今国会では、国内でのカジノの設置を認める複合型リゾート施設(IR)整備推進法案が提出された。

法案は超党派のいわゆるカジノ議連(国際観光産業振興議員連盟=IR議連)が中心となり、自民、日本維新の会、生活の3党が共同提出したものだ。なお、カジノ議連の最高顧問には、安倍晋三総理、麻生太郎財務相、石原慎太郎・日本維新の会共同代表がいる。

この法案はカジノを民間娯楽として法的に位置づけるため、風営法で規制されるパチンコもその影響を受けざるを得ない。

まず考えられるのが、パチンコ店で換金しないという現状のシステムを見直し、店で換金するという方向に舵を切る流れだろう。その際には、一定の税金(パチンコ税)を導入するか、または景品交換所を公益法人が運営して一定の手数料(パチンコ税相当)を徴収するという案が考えられ、実際にこれらは検討されている。

こうした案が実現すれば、脱税が多く、警察官僚の利権になっている状態よりは「一歩前進」になる。パチンコ税は「1%で2000億円」の財源が生まれるとの試算もあるので、税収も期待できる。

また、本格的なカジノができればパチンコ産業自体が衰退していく可能性も出てくるので、パチンコ税をその過渡期の対応と考えれば、納得のいく話ともいえる。昨年には、大手パチンコ企業トップの娘とキャリア官僚との結婚式に、安倍総理のほか多数の政治家が集まった。パチンコ業界もカジノへの移行を着々と進めている。

さらに安倍政権は、現在進行形で、北朝鮮と拉致問題でガチンコの交渉をしている。パチンコ税の導入は、北朝鮮へのボディーブローにもなるので、そうした交渉を側方支援するツールにもなるだろう。

パチンコ税の水面下では、こうした動きが起きているのである。法人税うんぬんの話ではなく、こうした「氷山」の一角が現れたにすぎない。

『週刊現代』2014年7月12日号より

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