福祉や子育て・教育、街づくりといった市民活動を広げるため、NPO法人などを後押しする。行政とNPOが協力し、さまざまな課題を解決していく。

 阪神大震災をへた1998年にNPO法を成立させて以来、私たちはそうした社会を目指し、NPOの基盤を厚くするための税制を整えてきた。

 安倍政権は時計の針をもとに戻そうと言うのか。

 こんな懸念が、市民活動の関係者に広がっている。

 法人税では、政権が急ぐ税率引き下げに伴って租税特別措置(租特)が抜本的に見直される見通しだ。企業のほか、NPO法人や公益法人、社会福祉法人などの「非営利法人」も対象で、NPOなどにメリットが大きい租特も例外ではない。

 法人間で著しく公平さを欠く優遇や、時代遅れになった租特の廃止は不可欠だ。ただ、NPO法人がらみでは、つい数年前に拡充したばかりの租特もある。今後、与党や政府の税制調査会で検討が進むが、一つひとつ丁寧に吟味してほしい。

 所得税に関しても、寄付優遇税制が縮小される懸念がある。

 与党が昨年末にまとめた税制改正大綱は、見直し項目の一つにNPOなどへの寄付に伴う「税額控除」制度をあげた。

 現在は、一定の要件を満たす「認定NPO法人」への寄付について、最大で寄付額の半分近くが確定申告で還付される。世界でも屈指の手厚さだが、与党大綱は「対象範囲などを、主要国の制度も参考に検討」と、縮小を示唆する。

 税額控除は、東日本大震災直後の11年夏、被災地での支援活動を後押しする狙いもあって設けられた。政権にあった民主党のほか野党もそろって賛成し、同時に認定法人となるための基準も緩和された。

 自民、公明両党は、こうした経緯を忘れたのだろうか。税額控除の寄付への効果はやっと出始めたところだ。与党はまず、状況をしっかりと見てほしい。

 非営利法人側にも課題はある。優遇措置を受けるなら、法人の財務や活動に関する情報公開が一層大切になる。

 最近も、自治体から受託した事業をめぐって横領事件を起こした被災地支援のNPO法人や、過度の利益をため込んでいる一部の社会福祉法人が問題となった。そうした事例が相次ぐようでは、優遇措置の必要性を訴えても説得力に乏しい。

 それぞれの法人グループごとに、さらには非営利法人全体として、透明性を高め、説明責任を尽くさねばならない。