日本銀行の当座預金残高が150兆円を突破しました。グラフからは、日銀が国債と当座預金を交換していることが見て取れます。2011年までは「国債≒銀行券」でしたが、2013年以降は「国債≒銀行券+日銀当座預金」になっています。
岩田副総裁は就任前に「日銀当座預金残高を70―80兆円に増やせば消費者物価上昇率2%を達成できる」と主張していましたが、その2倍の水準になっても2%には届いていません(消費税率引き上げ分を除く)。
岩田氏はブルームバーグ・ニュースのインタビューなどで、2年以内に物価目標2%を達成するため、現在40兆円台の日銀当座預金残高を70-80兆円に拡大する必要があると主張している。しかし、佐藤委員が6日、前橋市内で行った会見で、日銀当座預金は年内にも「90兆-100兆円に達してくる可能性がある」と述べたように、岩田氏が主張する程度の量的な金融緩和は既に決定済みだ。
下のグラフを見ると、2013年以降、日銀当座預金残高とインフレ率が連動しているようですが、注意が必要です。
いわゆる「ソロスチャート」も、日銀当座預金増加が円安を引き起こしたように見えます。
しかし、長期で見ると、その説明力は疑わしいものになります。
銀行間決済用マネーの日銀当座預金にインフレ率や為替レートを動かす「力」があると言うのは早計ということです。
ところで、日本経済の停滞は、企業が資金余剰を続けることによって引き起こされてきましたが、バブル崩壊からリーマンショックまでは、企業が保有する現金・預金の増加ペースはほぼ一定です。デフレが企業の現預金保有を促進したとは言えません。
現預金の増加ペースが速まるのは、デフレが始まってから10年が経過した2008年のリーマンショック以降です。
1998~2005年までは、企業の資金余剰は、現預金の積み上がりではなく、負債圧縮に回っていました。借入等は約1/3も減少しています。
2002~08年の史上最長の景気拡大時には、企業の設備投資が盛り上がりましたが、同時に現預金保有額も増えています。2013年以降も設備投資と現預金保有額が同時に増加しています。
今迄の所、「インフレ率上昇→設備投資増加→企業の現預金保有減少」は見られないということになります。
「日銀当座預金増加→景気拡大」の岩田ロジックは、今後も検証が必要でしょう。
- 作者: 脇田成
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