習主席はソウル大学での講演で「中国はアジア・インフラ投資銀行(AIIB)の創設を提案した。関係国が積極的に参加することを希望している」とも述べた。AIIBは米国と日本が主導するアジア開発銀行(ABD)=本部:フィリピン=に対抗するため、中国が中心となって運営するアジア専門の銀行という性格が強いが、米国は中国によるこれら一連の動きには強く反対している。韓国政府はAIIBへの参加についても「最終決定は後から決めたい」として今のところ立場を明確にしていない。
習主席の来韓に合わせるかのように、日本と北朝鮮はこれまで以上に一歩近づいた。北朝鮮は4日、日本人拉致問題の再調査を行う特別委員会の構成メンバーを日本側に伝え、これに合わせて安倍政権は北朝鮮に対する独自制裁の一部を解除した。具体的には北朝鮮国籍を持つ者の日本への入国制限、北朝鮮への送金および現金持ち出しの制限、人道目的の船舶の入港規制などが解除されたのだが、これらは2006年に北朝鮮が最初の核実験を行った直後、日本が独自に行ってきた北朝鮮制裁の一部だ。この流れが今後も進めば、近いうちに北朝鮮と日本による外相会談や、安倍首相による北朝鮮への電撃訪問なども十分予想できるだろう。安倍政権は自分たちが行っている歴史問題での挑発により韓国との外交ルートがほぼ断絶状態になったため、北朝鮮に接近することで、韓半島における日本の存在感を一層高めようとしているのだ。
米国は日本による北朝鮮への独自制裁の一部解除について「理解する」との考えを表明した。その一方で米国の主要メディアや専門家たちは、習主席にの来韓について一斉に「中国は韓日関係の悪化を利用し、米国と同盟国との関係にくさびを打ち込もうとしている」などとあからさまに懸念を示した。米国のオバマ政権が掲げる「アジア回帰戦略」は、今のところアジア各国から大きな信頼を得るには至っておらず、韓日関係の悪化で韓米日3カ国による安全保障体制も思い通り進んでいない。米国としては韓半島を舞台に繰り広げられる主導権争いで、中国が一歩先を進むという事態を懸念せざるを得ない状況だ。
大韓民国は今、重大な岐路に立たされている。今回の習主席の来韓と日本による北朝鮮への接近により、韓半島を取り巻く周辺国の覇権争いは遠い未来のことではなく、われわれの目の前で展開される現実のものとなりつつある。120年前にわれわれの先祖たちは国際情勢への無知と度重なる判断ミスにより、国を失うというつらい事態を招いた。われわれは今まさにこのつらい歴史を思い起こさざるを得ない状況に直面しているのだ。
韓国は今後も米国との強固な同盟を維持すると同時に、中国との同伴者関係も進める道を探っていかざるを得ない。これは韓国にとってどうしようもない宿命だ。しかし原則のない綱引きばかりやっているようでは駄目だ。韓国の国益に合致しない問題に対しては、はっきり「ノー」と言えなければならない。何がこの国を守り、国民の生活を豊かにする道なのか、あるいはどうすれば北朝鮮の脅威を克服し、早い時期に統一を実現すると同時に、北東アジアと世界の平和、さらには人権問題の改善に貢献できるか。これらを中心に据えた上で、韓国は今後も引き続き外交の活路を見いだしていかなければならない。