3日午後、東京・新宿の早稲田大学近くにある「女たちの戦争と平和資料館(WAM)」。6階建てビルの2階、広さ115平方メートルほどのオフィスの一角で、小さな展示会が始まった。緊急特別展「アンコール企画! 中学生のための『慰安婦』展」だ。戦争中、旧日本軍が韓国・北朝鮮・台湾・フィリピンなどアジアの各地で慰安婦に対して行った「性犯罪」に関する各種の文書や写真、被害者の証言を集めた。「アンコール」と題しているのは、第1次安倍内閣時代の2007年にも一度、同じ名前の展示会が開かれたからだ。
池田恵理子館長(63)は「日本国民として、(慰安婦の強制動員を認めて謝罪した)河野談話を『検証』という名目で損なった安倍政権には恥ずかしさを感じる。今回の展示の目的は、慰安婦問題を日本の中学生も理解できるように、できるだけ簡単に説明すること」と語った。日本政府に対抗し、慰安婦強制動員の残虐性を広く伝えるため用意された特別展というだけあって、見学者の制限はない。
しかしこの日、閉館時刻の午後6時までに展示場を訪れた見学者は、わずか6人だった。ある50代の見学者は、従軍慰安婦に関する写真や公文書を集めたコーナーで、何度も長いため息をついた。この人物は「こんな明白な証拠があるのに、日本政府は慰安婦の強制動員の証拠はないと言っている。そんな政府の下で、知識人や市民団体のメンバーを除き、多くの日本人がこの問題を全く知らずにいる」と語った。11月末まで今回の展示会を続けるというWAM事務局は、週末にもう少し多くの人が訪れることを期待している。
WAMは、07年以降蓄積された従軍慰安婦関連の資料を準備するなど、今回の特別展にかなり力を入れた。展示会場では、慰安婦の強制動員の真相を示す旧日本軍や慰安婦被害者の証言、軍事裁判の記録、旧日本軍の資料など約2500ページ分の記録を閲覧できる。入り口側には、安倍首相、橋下徹・大阪市長、籾井勝人・NHK会長などのいわゆる「慰安婦妄言」に対し、史料を基に一つ一つ批判する「NHK、安倍首相と慰安婦問題」というコーナーがある。また、最近日本の中学校用教科書から軒並み姿を消した慰安婦の記述に関する「教科書攻撃」コーナーも設けられた。
池田館長は「慰安婦問題について語るよう誰かに言われたら『今回の特別展を一度見てみなさい』と言う。それが、わたしにできる最高の答え。安倍首相にも、展示室をぜひ一度訪れてほしい」と語った。
WAMは先月29日までおよそ1年間にわたり、台湾の慰安婦の証言に関する展示会を開いていた。展示会を先月訪れたある大学生は、芳名録にこのような一文を書き残した。「(従軍慰安婦動員の)強制性を示す決定的な証拠が過去の文書に残っています。(中略)被害者の方々のことを真っ先に考えて、その方々を保護することが重要だと思います」
WAMの入り口には、韓国で慰安婦問題を最初に証言した故キム・ハクスンさんをはじめ、慰安婦として強制動員されたアジア各国の女性155人の写真が展示されている。