「自己対話ノート」について

拙著『BizArts』で<自己対話ノート>を紹介しました。

BizArts: 仕事を前に進める23の技術
BizArts: 仕事を前に進める23の技術 倉下忠憲

倉下忠憲 2014-04-25
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本書は各Artsを手短にまとめる方針で編集したので、その分一つ一つの掘り下げは浅くなっています。この<自己対話ノート>も説明が十分ではなかったかもしれません。

かわりにこの記事で補足してみます。

なぜ書くのか

豊かな社会において肥満が問題になるように、高度情報化社会では、他に注意が向きすぎて、自分自身のことを考えないことが問題になります。

ノートを開き、自分が考えていることをどしどし書きだしていきましょう。

私たちがおろそかにしがちなのは、私たち自身の心です。わかっているようにみえて、うまくつかまえられていないのが魂の音色なのです。

どれだけタスクをうまく管理できても、「自分がやるべきことはこれだ」と感じられなければ、充実感は得られません。むしろ、焦燥感ばかりが増えていくでしょう。

自分がやりたかろうが、そうでなかろうが、やらなければいけないことはやらなければいけない。それは確かです。でも、それをお腹の一番底の方で理解しているかどうかの違いは大きくあります。

それが理解できているのならば、やらなければいけないことは、やるべきことと重なるはずです。

○○の責任があるから、〜〜しなければならない。という表現は、何かを押しつけられている、束縛を受けているような印象を覚えます。でも、結局の所、そういう責任を自分は引き受けるという選択があったはずです。自分で選んでいるのです。

極端なことを言ってしまえば、今すぐ何もかもから逃げ出す自由があなたにはあります。罵られたり蔑まれたりあきれられたり迷惑をかけることを厭わなければ、行動の選択肢というのは、ずいぶんと広いものなのです。でも、そうしないことを主体的に選んでいる。そういう視点に立てば、やらなければいけないことは、やるべきことと重なるはずです(※)。
※もちろん、例外的な状況はあるでしょう。

それに、じっくり検分してみると、本当の意味ではやらなければいけないことではないものを発見することもあります。見栄やら周囲との付き合いやら、埃をかぶったプライドで維持しているものも結構あるのです。

  • 今の自分にとって本当に大切なものは何か。
  • 自分が気にしているものは何か。
  • 自分が満足を得られるのはどのような行為なのか。
  • 自分が心の痛みを感じるのはどのような損失なのか。

それを考えてみるのは、遠回りでも何でもありません。むしろ、それを考えない方が人生の遠回りになることすらあり得ます。

書き方の例

使うツールはなんでも良いのです。フォーマットですら問題になりません。

ペルソナごとに書きだしてもいいですし、

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マインドマップを使うこともできます。

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特別気になったことは、別ページに書き出してもよいでしょう。

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重要なのは、外的な情報を一時的に遮断して、心の中に抱え込んでいるものを吐き出す行為です。

「なんかちょっとモヤモヤしてるな。よしノートに書き出してみよう」という風になれば、ALL OKです。そういう心の調律法を一つでも知っておくと、バランスが取りやすくなります。

補足の蛇足

GTDでは、ファーストステップとして「気になることを書き出す」が行われます。

しかし、私はよくよく考えた上でこのステップを一番最後に位置づけました。「気になることを書き出す」は一人で行うにはハードルが高いと感じているからです。実際に、このステップで挫折してしまった人もいるでしょう。一度慣れてしまえばどうということはありませんが、そこに至るまでが難しい。

だから、日常的な作業(=気になること)の扱い方に習熟してから、もう少し心の深い部分にあるものを掘り出す、という位置づけにしたわけです。自分で言うのも何ですが、『BizArts』はそうした順番に注意を払って書いてあります。

それぞれの「仕事術」は、これまでの仕事術本のエッセンスでしかないかもしれませんが、いかにそれを組み立てるのか、という部分こそが本書のエッセンスなのです。教科書のように、導入しやすいステップを設計しているのです。

さいごに

『BizArts』は電子書籍用に構成した本で、それぞれのArtに文字数の制限を決め、必要最低限の記述を目指しました。

今構想している『BizArts』の続編は、違った視点からのコンテンツで、かつ『BizArts』を補足するような内容にしようと考えています。

しかし、あらためて本作りというのは難しいな〜と感じます。出版社・編集者さんの力は偉大です。

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