はてなブロガーにげろしゃぶくん(id:grshb)というあり得ないハンドルネームの奴がいる。四国の大学生なのだけど、就活のために数ヶ月間東京に滞在して、先日帰っていった。その期間での彼との交流は10年前の自分、上京した頃の自分を思い出させてくれるものだった。
4月の頭、池田仮名さん(id:bulldra)やツベルクリン良平さん(id:juverk)たちとオフ会をした場に彼は現れた。彼のブログは気難しい。小事を大事のように書く有り様は大学生にさもあらんという感じなのだけど、彼の文章を読むと大学時代の自分のブログもそんなえげつないパワーを持っていたことを意識するのだった。
こんなやり取りを経たあと、ブログ以外の場でも絡みを持つようになり、人のことが好きなんだろうなというのは伺える様子だったのだけど、見た目は想像がつかなかった。現れた彼は爽やかな青年だった。小奇麗な格好をして礼儀正しかった。…最初は。
飲んで場がほぐれていくにつれて、飲みの場にいたメンバーとも忌憚なくベシャリが出来るようになってくると目の端っこに独特の生意気な表情が感じられるようになってきた。自意識の塊だ。それが懐かしかった。自分も大学時代、人を小馬鹿にするような目つきで他人を見ていたことを思い出した。ああ、こいつは4年遅れで東京の地にやってきた俺なんだと受け取った。
俺は東京が好きだ。本当に何もなくて、気持ちはあれども機会はない10代を過ごした自分には東京はやっぱり素晴らしい。会ってみたくなる面白い人がたくさんいる。美味しくて雰囲気が良い店がある。見に行きたい服やイベントがいくらでもある。自分が手を伸ばせば、触れられる機会がある場所だ。
俺は彼にとにかく刺激を与えたいと思った。ワクワクして、いてもたってもいられない気持ちをふくらませてやりたいと思った。人は人によって刺激を受ける。変わる。それは自分では想像もつかなかったことを、腕を引っぱってもらうことで「あり得ることなんだ」と実感させてもらえるからだ。自分ひとりで道を拓いていける人なんてそうはいやしない。
とはいいつつも、あんまり押し付けがましいこともしたくなかったので一緒にいる場をなるべく楽しくしようとだけした。東京で見るもの聞くもの出会う人が楽しくてしょうがなくなってしまえば良いと思っていた。ブログの話をした。女の子の落とし方の話もした。たわいもないゲスい話もした。俺はサイボウズ式の原稿を、彼は卒論をカフェで一緒に書いたりもした。
無事に就活を成功させたあとは遊びまくり、俺の弟子として見事な結果も出してくれた。最後の日も一緒にいたのだけど、「東京楽しかったか?」と聞くと「めちゃくちゃ楽しかったですよ!」と満面の笑顔で返してきた。自分ごとのように嬉しかった。(なお、マジで素晴らしい結果であった)
彼自身のキャラクターと社交性もあり、色んな人に可愛がってもらえた数ヶ月だったようだ。男がどれだけカッコ良くなれるかは、どれだけカッコ良い人と出会えたかと言えると思うし、どれだけ女の子と触れ合ってきたかだと言えると思う。彼は学生ながらたくさんの社会人の人たちとふれ合う機会を得て、色んなことを感じたのではないかと思う。
俺はブログを書きながら、ときどき本気で「地方の高校生とか大学生が、俺の文章を読んで新しい世界を知るきっかけになってくれたら良いのに」と思うことがある。彼自身がファンだとか自分のロールモデルだとか俺のことをおだててくるのもあって、アニキぶった接し方をしたのだけど、本当にそういった奴と直接ふれ合う機会は俺にとってもたまらなく楽しかった。
彼は来年の4月に就職のために上京する。東京の楽しさも、虚しさも味わうことになるのだろう。そして何よりもたくさんの人に出会うだろう。色んな人の魅力の欠片を吸収していくにちがいない。そして、彼のなかで大きくなっているであろう東京で出会った人たちも、彼のなかで相対化されて小さな存在になっていくのだろう。それで良いと思う。彼がいまの俺の年齢になったときにどんな人間になって、どんなことを思っているのだろうか。いまからそれが楽しみだ。
そのときにまだ彼がブログを書いていたら、きっと書く文章も変わっているのだろう。内定おめでとう。