セガ・サターン
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目次
機能を使い切る?
今回記事を書こうと思ってサターンのことを調査していたら、こんな情報を見つけました。
バーチャファイター2発売時の話です。「セガサターンマガジン」で開発者インタビューがあり、そこで「まだまだサターンの性能を使い切っていません」と発言したのだとか。
…結局あれは何だったの? サターンの性能は使い切れたの? っていろんな場所で話題に(というか、からかいのネタに)なっています。
先ほど書きましたが、サターンの機能は多すぎて、すべてを同時に使おうとすると処理が間に合いません。そこで、どれを使うかプログラマーが決める必要がありました。
VF2では、画面が一番細かく描ける、704x480 ドットの画面モードを使用して、秒間 60フレームでゲームを進行させていました。
…これ、かなり無謀です。画面が低解像モードの縦横2倍以上あります。逆に言えば、同じ見た目のサイズのポリゴンを描くのに、4倍の面積を塗りつぶす必要があります。
低解像モードでは、1ドットについて2バイトのメモリが使用できます。多くの色が出せる、ということです。でも、高解像モードではこれが1バイトになり、スプライト全部を合わせて256色しか出ません。3Dなのに陰影の処理は出来なくなり、画面が寂しくなります。
VF2は素晴らしい出来でした。制約の厳しい画面モードを選んだのに、技術力で見事に乗り切り、セガサターン最大のヒット作になりました。
…でも、この制限が厳しい画面モードを選ぶと、サターンの機能がいろいろと使えなくなるのも事実。作成中に「あの機能が使えない!」と気づいて悔しい思いをしたこともあるのではないでしょうか。全くの想像ですが、「性能を使い切っていません」というのは、あの機能も使いたかった、この機能も使いたかった…という無念の言葉に思えるのです。
じゃぁ最初の話にもどって、「サターンの性能を使い切ったゲームは出たの?」と問われれば、「そんなの無理!」に決まってます。
ある機能を選ぶと他の機能が使えなくなる。それがサターンの宿命なのです。当時のハードウェア技術の限界を超えてしまっているので、「ゲームごとに最適な性能引き出す」ことはできても、「1本のゲームで性能を使い切る」ことはできない構造なのです。
私事になりますが、当時ゲーム業界で仕事をしていて、ST-V (サターン互換の業務用基板)のプログラム作る会社にいました。
サターンの「機能の選択」に悩まされる構造は…悩みながらもわくわくしたものです。
詳細は別の回に書きますが、アクセスタイミングのような「機能の選択」も含めて、プログラムしないといけない LSI だらけなんですよ。こちらを立てればあちらがたたず、どうすればよいのかと悩み、最適解を見つけ出したときの喜びと言ったら!
チューニングしたときにきっちりそれに応えてくれる、プログラムで機械をいじり倒す楽しみがありました。最近ではこういう環境はなかなか見当たりません。それだけに楽しかった!
…これ、何度も書くけど扱いにくいという意味ではないですよ。何も考えないで、推奨されるデフォルト設定で十分使えるマシンだった。でも、ゲームに合わせてチューニングすると、より機能を引き出せるようになっていた、と言う意味。
パソコンやスマホをいじるのが好きな人が、新しい機械を買ったときに環境設定だけでハマってしまう感覚かな。そんなことしなくても使えるのだけど、設定し始めるといくらでも細かな項目があって、いじるのが楽しくて仕方がない、と言うような感じ。
…と、個人的な思い出を書いたところで今回はおしまいです。
次回はソフトウェアの話。SH2 を2つも積んで、ちゃんと使えていたの? という謎にお答えします。
ニコニコ動画で解説を発見!
追記 2014.3.11
この追記の3日前に、ニコニコ動画で、サターンの画面構成を紹介する動画が公開されていました。
僕も各ゲームがどのように使っているかは知りませんでした。なかなか興味深い。
僕の記事と多少言っていることが違う部分があるのは、たぶん僕の記憶違いです。動画作者の方はエミュレータのソース見ながら解説しているので、説明が食い違っている場合はおそらく動画の説明が正しいです。
参考文献 | |||
Saturn FAQ | Saturn-FAQ編集委員 | 1995 | |
PSXDEV | PSIO / PSDEV | 2011 | |
その他、WEB上の各種ページ |
(ページ作成 2013-10-29)
(最終更新 2014-03-11)