インタビュー:ロボット開発、海外勢の追い上げに危機感=山本・科学技術担当相
[東京 4日 ロイター] - 山本一太・科学技術担当相は4日、ロイターのインタビューに応じ、ロボット分野での海外勢の追い上げに危機感を感じていると語った。さまざまな分野での活用が期待されるロボット技術だが、山本科技担当相は、潜在的な可能性の高い分野の一つとして、人間とコミュニケーションが取れる「パーソナルロボット」を挙げた。
政府は6月24日に発表した日本再興戦略の改訂版で、ロボット技術を柱の一つに位置付けた。イノベーション活性化のために「ロボット革命実現会議」を立ち上げ、2020年までにロボット市場を製造分野で現在の2倍、非製造分野で20倍に拡大する方針。同年には、東京五輪に合わせて最先端のロボット技術を競う「ロボット五輪」を開催する予定だ。
インタビューの概要は以下の通り。
──なぜ今このタイミングでロボットなのか。
「日本のロボット技術は世界最先端で、依然として産業ロボット稼働台数は世界一を誇っている。この分野で日本は特に進んでおり、新たな戦略として『ロボット革命』を掲げるのは理にかなっている。どんな政策にも夢がないといけないと考えており、『ロボット革命』というスローガンは国民に夢を与えるし、大きな可能性を感じさせるものだ」
──海外では国を挙げて科学技術の促進に取り組んでいるところもある。
「当然、海外諸国の動向は気にしている。科学技術のイノベーションを進める上での原動力は危機感だ。私だけではなく日本政府全体として、危機感を持っていると思う。日本はこの分野でのレベルが高いと言われているが、例えば論文の引用件数などでは中国に押されてきている。新興国もどんどん追い上げてきており、あらゆる点で競争が激化していることに対する危機感が、政策を後押ししている要因であることは間違いない」
──どの分野のロボットに注目しているか。
「医療・介護の現場、災害対応、農業、海洋資源の探査、宇宙開発など、ロボットが活用できる分野は幅広い。どの分野に特に注力していくのかはロボット革命実現会議で今後考えていくことだが、個人的には人間とコミュニケーションできる『パーソナルロボット』には可能性があると思っている。もちろん産業用ロボットにもチャンスはあるが、人間の話し相手となるような、感情を持ったロボットの分野でもニーズが出てくると考えている」
「どんなニーズが生まれてくるか、はっきりとは分からないが、福祉・介護の現場でいろいろな人の話し相手になるなど、心を癒やす働きに対するニーズはあるのではないか。私自身もそういうロボットがあったら欲しいと思う。政治でも何でも、どんな話題にもきっと付いてきてくれるだろう」
──世界と戦っていくための課題は。
「現場のニーズを踏まえて『こういう現場にロボットが使える』、『こういう状況でロボットを開発した方が産業競争力につながる』といった意見を政府が吸収し、どこにポイントを置くのか戦略を練らなければならない。ロボット革命実現会議では、こうしたことが話し合われるのではないか。ロボットに限らず、レベルの高い研究開発が実用化・産業化に結びつかないという傾向は確かにあったと思う。例えば、大学と産業界の橋渡しをするような体制の整備などはしていく必要がある」
「もう一つは、イノベーションが生まれる環境づくりだ。安倍首相にも何度か提案したが、『日本人1億総アントレプレナー宣言』をやってくれないだろうか。平賀源内のエレキテルなどをはじめ、日本人はもともとイノベーティブな要素を兼ね備えている。そのDNAを呼び起こすための意識改革が必要であり、そこは政府が主導していかなければならない。政治家、サラリーマン、お笑い芸人、主婦など誰でも新しいことを一つでもやって前に出ようとする人を『起業家』と称える雰囲気を日本に浸透させたい」 (梅川崇)
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