字幕とクローズドキャプション

放送業者や配給業者は、たいてい、放送用、DVD 複製用、およびアーカイブ作成用プログラムについて、クローズドキャプションや字幕をプログラムに含めることに関する一定の配布要件を設けています。

米国では、放送用のクローズドキャプションは、FCC(Federal Communications Commission:連邦通信委員会)により義務付けられています。放送用のテープマスターを配布する場合は、クローズドキャプションは重要な考慮事項になります。通常、字幕は便宜上の理由で提供され、映画祭や劇場見本市へ出品するにはその国の母国語への翻訳が必要になりますが、その土地の劇場への配給や DVD の販売を確実に促進します。

詳しくは、以下を参照してください。

クローズドキャプションの処理

クローズドキャプションは、聴覚に障害のある人がテレビを利用しやすくなるように設計された字幕システムです。残りのサウンドトラックを聴くことのできる人のために会話を通訳することを主眼とする映画の字幕とは異なり、クローズドキャプションはプログラムの再生時に発生する重要なサウンドエフェクト、音楽によるキュー、非言語的表現、および会話すべてを伝える必要があります。

FCC は、家庭用プログラムを配給する場合は、暦四半期ごとに提供するクローズドキャプション付きプログラムの最低時間を規定しています。この規則は、地上波放送と衛星放送の事業者、およびケーブルテレビ事業者に適用されます。このため、例外があるとはいえ、多くの放送事業者はクローズドキャプション付きのテープマスターを配布物に含めるように求めています。

クローズドキャプションのエンコードは、ビデオ形式に応じてさまざまな方法で行われます。

  • SD アナログとデジタル NTSC の放送、テープ、および DVD: SD アナログテレビのクローズドキャプションは、NTSC ビデオ信号の 21 行目にエンコードされるテキストのみのデータストリームです。モニタをアンダースキャンモードにしたときにビデオ画像の端に沿って一連のダッシュ記号と線が点滅して表示される原因の 1 つが、これです。SD デジタルビデオのクローズドキャプション作成には、CEA-608 規格が使用されます。これを使ってクローズドキャプションを MPEG-2 ストリームにエンコードできます。クローズドキャプションは、ビデオ信号に直接エンコードされるため、ビデオテープに録画したり、地上波や衛星、ケーブルを使って放送したり、DVD に記録したり、TIVO などのデジタルビデオレコーダ(DVR)を使って録画したりできます。
  • SD と HD デジタルテレビの放送およびテープ: 高精細度テレビ(HDTV)は元来 Line 21 方式のクローズドキャプションをサポートしていましたが、新たな HD デジタルビデオ形式の広まりにつれて、新たな手法が必要になりました。さまざまな方法でエンコードされた HD ビデオに対応するため、ATSC デジタルテレビ対応の EIA-708 クローズドキャプション規格が開発されました。その後、この規格は、SD と HD の両方のデジタルテレビに対応した CEA-708 に置き換えられました。この規格では、クローズドキャプションのデータは、デジタル・ビデオ・ストリームの VANC データ内に格納されます。「Final Cut Pro」と「Compressor」は、どちらも CEA-708 規格内への CEA-608 クローズドキャプションの埋め込みをサポートしています。
  • ヨーロッパのテレビ: ヨーロッパのテレビにおけるクローズドキャプションは、英国で開発されたテレビ向けのテキスト専用情報取得システムであるテレテキストに基づいています。現在、ヨーロッパのデジタル放送では、テレテキストスタイルデータのデジタル・ビデオ・ストリームへのエンコードに DVB-T および DVB-S 規格が使用されています。「Final Cut Studio」は、これらの規格には対応していません。

実際には、テレビがビデオ信号を受信することにより、クローズドキャプションが表示されます。これは、クローズドキャプションのオン/オフが可能であることを意味します。これはまた、クローズドキャプションのフォントやスタイルは、テレビに依存することも意味します。クローズドキャプションは、単なるプレーンテキストです。

Final Cut Pro を使ってクローズドキャプション付きのビデオを取り込む

使用しているビデオ・キャプチャ・カードがクローズドキャプションに対応している場合、取り込み時に次の 2 つの方法のいずれかでクローズドキャプションが保持されます:

  • Apple ProRes コーデックは、Line 21 と VANC のいずれかのクローズドキャプションデータの取り込みおよび保持に対応しています。これには、クローズドキャプション規格である CEA-608(SD 用)と CEA-708(HD 用)の両方が含まれます。

  • アップルの 8 ビットおよび 10 ビット非圧縮 4:2:2 コーデックは、Line 21 クローズドキャプションを保持します。ただし、アップルの非圧縮コーデックでは、VANC クローズドキャプションデータはそのまま保持されません。取り込んだビデオ信号内に VANC クローズドキャプションが存在する場合には、QuickTime クローズドキャプショントラックを介して抽出および保持されます。

Final Cut Pro を使ってクローズドキャプション付きのビデオを出力する

テープに出力する際、「ビデオにプリント」ウインドウや「テープに編集」ウインドウ内の「クローズドキャプション」コントロールを使って、CEA-608 または CEA-708 のクローズドキャプションをビデオストリームにエンコードできます。「ファイルからクローズド・キャプション・データを挿入」を選択し、「ファイルを選択」ボタンをクリックしてから、次のいずれかを選択します:

  • Scenarist 形式のファイル(拡張子は .scc)

  • クローズドキャプショントラック付きの QuickTime ファイル

Scenarist ファイルは、常に CEA-608 でエンコードされています。このため、Scenarist 形式のクローズドキャプションファイル付きのプログラムを HD テープ形式に出力する場合、「Final Cut Pro」が出力する CEA-708 クローズキャプションには、(QuickTime 7.6 以降がサポートする)CEA-608 形式のクローズドキャプションが「内蔵されている」ことを意味します。

ただし、他社製のユーティリティ(CPC MacCaption など)を使って、CEA-608 クローズドキャプションを実際に CEA-708 でエンコードされたクローズドキャプションとして再フォーマットしてから、QuickTime クローズドキャプショントラックとして保存し、これを代わりに出力として使用することは可能です。

Compressor を使ってクローズドキャプションを追加する

「Compressor」を使って、クローズドキャプショントラック付きの Scenarist ファイル(拡張子が .scc のファイル)または QuickTime ファイルを選択することにより、エンコード中のムービーファイルにクローズドキャプショントラックを挿入できます。これらのオプションは、「インスペクタ」ウインドウの「追加情報」タブで指定できます。含めることのできるクローズドキャプションの形式を次に示します:

  • QuickTime 出力の場合: 「Compressor」は、クローズドキャプションファイルを QuickTime 出力ファイル内に CEA-608 クローズドキャプショントラックとして追加できます。クローズドキャプションは、「QuickTime Player」(バージョン 7.2 以降)を使って表示できます。
  • MPEG-2 エレメンタリーストリーム出力の場合: 「Compressor」は、エレメンタリー MPEG-2 ビデオストリーム内に CEA-608 クローズドキャプションデータを埋め込んで、「DVD Studio Pro」でオーサリングできるようにします。「DVD Studio Pro」は、標準精細度の NTSC DVD プロジェクトのトラックにビデオストリームが追加される場合、このクローズドキャプションデータを保持します。Apple DVD プレーヤーを使用して、生成された DVD Studio Pro ビルドファイルを再生し、クローズドキャプションデータが存在することを確かめることができます。
  • MPEG-2 プログラムおよび転送ストリーム出力の場合: 「Compressor」は、CEA-708 規格を使用して、プログラムおよび転送 MPEG-2 ストリームの中にクローズドキャプションデータを埋め込みます。

テキストとビデオの同期に使用されるタイムコード値は、エンコードするソースメディアファイルのタイムコード値に基づいている必要があります。Scenarist ファイルに含まれるクローズドキャプションデータは、2 バイト 16 進形式で、ラインがタイムコードで区分されています。これらのファイルは可読性が低く、通常は特殊な他社製アプリケーションを使って作成されます。

他社製のユーティリティとハードウェアを使ってクローズドキャプションを追加する

テープへの出力や DVD のエンコードに必要なトランスクリプトの読み込み、タイミング情報を使用する編集、クローズドキャプションデータの求められる形式でのエンコード、および QuickTime ファイルへのクローズドキャプションデータの挿入といった作業には、CPC 社の MacCaption などの他社製アプリケーションを使用できます。

別の業者に作業を依頼する

別のポストプロダクション業者にクローズドキャプションの作業を依頼することは、広く一般的に行われています。字幕化全体を行う業者もあれば、事前に準備されたトランスクリプトを要求する業者もあります。また、プログラムをテープに出力する際に挿入を行う業者もあれば、以前に録画されたビデオテープにクローズドキャプションを挿入可能な業者もあります。

字幕を処理する

通常、字幕は、特定のシーンまたはプログラム全体を翻訳する目的で作成されます。字幕が作成される理由としては、会話が別の言語で行われている、会話が対象とする視聴者に単に分かりにくいなどが挙げられます。「Final Cut Studio」でプログラムに字幕を追加するには、大きく分けて 2 つの方法があります。

Final Cut Pro でテキストジェネレータを使って字幕を追加する

プログラムに恒久的な字幕(オープンキャプションとも呼ばれます)を追加する最も簡単な方法は、スーパーインポーズのテキストジェネレータを編集して、シーケンスにまとめて追加する方法ですが、これには非常に長い時間がかかります。このワークフローを採用する場合は、専用のビデオトラックを 1 つか 2 つ追加して、作成する字幕すべてをそれに含めるのが最善です。こうしておくと、トラック表示領域を使って、すべての字幕を一度にオン/オフできます。

ヒント: 字幕を手動で追加する場合は、「Motion」で作成したマスターテンプレートの使用を検討してください。これにより、必要に応じてすべての字幕の外観と形式をまとめて、簡単に変更できます。詳細については、Final Cut Pro でマスターテンプレートを使うを参照してください。

他社製のユーティリティを使うこともできます。大半の字幕用ユーティリティでは、タイミング指定されたスクリプトに合わせて字幕を作成する処理の自動化に、「Final Cut Pro」の XML 互換形式が使用されます。字幕用ユーティリティの中には、インターフェイスを使ってスクリプトを収集可能なものもあれば、スクリプトを事前に作成しておくことが必要なものもあります。これらユーティリティの大半で使用される手法は、次の 2 つに分類できます。1 つはシーケンス内部でのテキストジェネレータの自動配置を行う方法で、もう 1 つはシーケンスに追加する TIFF グラフィックスを自動的に作成する方法です。いくらかの調査を行って、どちらの手法がニーズに合っているかを決定してください。

DVD Studio Pro で字幕を追加する

DVD 規格は、最大 32 の字幕ストリームに対応するように設計されているため、海外での配信用に多言語の字幕を提供することが可能です。視聴者は、DVD プレーヤーのコントローラを使って適切な言語を選択して、視聴できます。

「DVD Studio Pro」で字幕を作成するには、2 つの方法があります。タイムコード値を入力するか、「タイムライン」内でドラッグしてから、各字幕の位置、フォント、サイズ、スタイル、色、および開始フェードと終了フェードを設定して、一度に 1 つずつ手動で作成します。

また、特定のビデオトラックの字幕すべてを含む特殊なフォーマットのファイルを読み込むこともできます。「DVD Studio Pro」は、次のフォーマットの字幕ファイルをサポートしています:

  • STL: Spruce Technologies 社の字幕フォーマット
  • SON: Sonic Solutions 社のビットマップベースのフォーマット
  • TXT: 標準テキストファイル
  • SCR: Daikin U.S. Comtec Laboratories 社の Scenarist ビットマップベースのフォーマット

テキストとビデオの同期に使用されるタイムコード値は、エンコードする MPEG-2 プログラムのタイムコード値に基づいている必要があります。

QuickTime ムービーにテキスト・トラックを追加する

QuickTime がサポートする専用のテキスト・トラックは、「QuickTime Player」内のビューアでオン/オフできます。これらのテキスト・トラックは、インターネットでの配布を目的としたプログラムで有用です。QuickTime 形式では、国際化サポートを提供するために、ユーザが切り替え可能な複数のテキスト・トラックをサポートしています。個別のテキスト・トラックは統一化された言語リストで確認できます。また、QuickTime テキスト・トラック内のテキストは、フォント、サイズ、色、背景、行揃え、エイリアスなどのさまざまな記述子を使って広範な書式設定が可能です。これらのオプションにより、マルチメディアの分野で極めて広範な用途に QuickTime テキスト・トラックを使用できます。

テキスト・トラックは、任意のテキストエディタを使って手動で書式を設定し、「QuickTime Player」を使って QuickTime ムービーに挿入できます。詳細については、http://www.apple.com/jp/quicktime/tutorials/texttracks.html(英語版)にアクセスしてください。いずれかの他社製ユーティリティを使って、より体系的にテキスト・トラックの作成と書式設定を行うこともできます。