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<集団的自衛権の行使容認は利益か損失か>【基礎知識】集団的自衛権をめぐる憲法解釈はどう変遷してきたか?

日本の論点 3月17日(月)19時33分配信

 12月に初めて策定された国家安全保障戦略(NSS)でも、軍備増強を続ける中国の尖閣諸島付近への領海侵入や防空識別圏の設定に懸念を示し、「日米安全保障体制の実効性を高め、多面的な日米同盟を実現していく」として集団的自衛権の行使容認をにじませた。日本が米軍と共同作戦を展開する場面として想定されるのは、これまで中東やアフガンを除けば北朝鮮ミサイルの発射だったが、ここ1年の間で、さらに中国との領海紛争が加わった。

 ◇鍵を握る連立与党の公明党

 安保法制懇の報告書が提出されるのは、平成26年度予算成立後の4月。したがって政府は6月22日の国会閉幕までに憲法解釈の変更についての結論を出すとみられている。1月12日には、安全保障を担当する礒崎陽輔・首相補佐官が「国会が終わってからというのでは、敵前逃亡のような感じがある。国会中にしっかりと決めたい」(フジテレビの番組)という考えを示した。

 安倍首相も2月20日の衆院予算委員会で、「閣議決定して案が決まったら(国会で)議論いただく。それに沿って自衛隊が活動する根拠法がないのであるから、自衛隊法を改正しなければならない」と、憲法解釈の変更については、先に閣議決定で行う方針を表明した。

 これに対し、連立を組む公明党は、支持母体の創価学会が反対していることから慎重な姿勢を崩していない。漆原良夫国対委員長はメールマガジンで「『国民の声を聴く』という一番大切な部分が欠落しており、到底賛成できない」と批判。山口那津男代表も2月13日の党中央幹事会で「従来、政府は行使を認めないと解釈している。変えるならば、なぜ変えるか、変えた結果が国民や同盟国や近隣諸国にどう影響するか。深く慎重に検討する必要がある」と述べた。

 2月25日に安倍首相と会談した山口氏は、4月に安保法制懇の報告書が出てから与党協議を始めることには合意したが、創価学会幹部は行使容認について「学会員に理解してもらうには1年ぐらいの時間は必要だ」(朝日新聞2月26日付)と語ったという。閣議決定には公明党の太田昭宏国交相の署名が必要である。太田氏本人は首相の姿勢に同調しているが、党内で強い反対が起きるのは必至で、とてもすんなり署名、とはいきそうもない。

 自民党も一枚岩ではない。党内リベラル勢力を代表する谷垣禎一法相は、3月7日に記者団の質問に答え、「憲法解釈があまりに不安定だと国家のあり方そのものも動揺してしまう。憲法解釈は極めて安定性がある必要がある」と、憲法解釈変更による行使容認には慎重な姿勢を見せた。手続きに関しても「特に憲法解釈は国民の理解を取り付ける必要がある。手順・段取りを踏むことが大事だ」と、国会での審議が必要ではないか、との考えを示した。

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最終更新:4月1日(火)14時31分

日本の論点

 

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