<集団的自衛権の行使容認は利益か損失か>【基礎知識】集団的自衛権をめぐる憲法解釈はどう変遷してきたか?
日本の論点 3月17日(月)19時33分配信
自衛隊のMDは、敵国から発射された弾道ミサイルを、海上自衛隊のイージス艦から発射するSM-3ミサイルによって大気圏外で破壊し、さらに撃ち漏らして大気圏に再突入した弾頭を、航空自衛隊のPAC-3ミサイルで撃墜するという二段構えのシステムで成り立っている。PAC-3による迎撃は、日本領空で行われるため「個別的自衛権」の範囲に入るが、SM-3が大気圏外で撃破したミサイルが、もし日本ではなく米国を狙ったものであった場合、それは集団的自衛権の行使に当たるのではないかというわけである。しかし、米国本土に向かって日本上空を通過するミサイルを見過ごせば、日米の軍事同盟は意味をなさなくなる。
そこで05年、自衛隊法が改正された。弾道ミサイルの迎撃要件を「弾道ミサイルその他その落下により人命又は財産に対する重大な被害が生じると認められる物体」が飛来するおそれがあり、落下による被害を防止する必要があるとき、と定めたのである。「その他」にはミサイルの部品が含まれる。つまり、たとえ米国を狙ったミサイルでも、日本領空で推進部分が切り離され落下する危険があるから、これは撃墜できる、すなわち個別的自衛権の範囲である、という説明が可能になった。
こうして、日本の安全保障環境の変化とともに、従来の憲法解釈が自衛隊のあり方と齟齬をきたせばきたすほど、政府および外交当局、研究者らの間で、米国と対等な関係を築き、国際貢献のできる国になるためには、集団的自衛権の行使を認めるべし、との声が大きくなっていった。
一方、米国はこの時期、軍の再編を進めるとともに、在日米軍の活動範囲をアジアから中東、アフリカに広がる「不安定の弧」へと広げていた。それには自衛隊の協力が不可欠だった。米国が、ハーバード大学のジョセフ・ナイ教授やリチャード・アーミテージ元国務副長官らの知日派を通じて「集団的自衛権を行使できるようになれば、より緊密で効率的な安全保障協力ができる」と、日本側へ改憲あるいは解釈の変更を働きかけるようになったのにはそうした背景があった。
最終更新:4月1日(火)14時31分
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