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<集団的自衛権の行使容認は利益か損失か>【基礎知識】集団的自衛権をめぐる憲法解釈はどう変遷してきたか?

日本の論点 3月17日(月)19時33分配信

 ◇宿題は第2次安倍政権へ

 安倍首相は、第1次組閣の翌年、07年5月に私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)を発足させた。その初回会合で首相は、(1)公海上で海自艦艇と並走中の米国監船が攻撃された場合の応戦、(2)同盟国の米国を狙った第三国の弾道ミサイルをMDで迎撃、(3)PKOで自衛隊と共に行動する他国軍への攻撃に対する応戦、(4)前線への武器輸送などの後方支援の拡大−−という“4類型”を集中的に検討してほしいと要請した。

 安保法制懇は、4類型のいずれの場合も集団的自衛権の行使を認める必要あり、との提言を、07年11月までに出す予定で議論を進めた。だが、9月に安倍首相が辞任。後を受けた福田内閣、続く麻生内閣は「ねじれ国会」の対応に苦慮したこともあって、集団的自衛権の議論に踏み込むことはなかった。結局、福田内閣に提出された安保法制懇の提言は棚ざらしにされることとなる。

 しかし、12年12月の総選挙によって第2次安倍内閣が成立すると、首相はすぐに安保法制懇を復活させ(13年3月)、集団的自衛権の行使容認へ向けて議論を進めるよう指示。さらに13年7月の参院選で大勝すると、議論を加速させることを表明した。8月には、内閣法制局長官に、内部昇格の慣例を破って第1次内閣で安保法制懇の事務方を務めた小松一郎・駐仏大使を充てる人事を発令する。

 10月に開かれた安保法制懇では、安倍首相が冒頭、「自国のみを考えた安全保障政策では尊敬や友人を失う。ともに守り合うことで、国民の生存と国家の存立、国益を守れる」と述べ、第1次安倍政権当時に提起された4類型に加えて、(1)日本近隣で武力攻撃した国に武器を供給するために航行している外国船舶への立ち入り検査や、米国への攻撃を排除することができるか、(2)米国を攻撃した国に武器を提供した外国船舶への検査は可能か、(3)日本の民間船舶が航行する外国の海域で機雷除去ができるか、(4)国連安保理決議にもとづいて多国籍軍が組織された場合、自衛隊は参加できるか−−といった事例についても、集団的自衛権の行使を容認することによって可能となるかが議論された。

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最終更新:4月1日(火)14時31分

日本の論点

 

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