原発:「合格」…川内以外、メド立たず
毎日新聞 2014年07月04日 07時31分(最終更新 07月04日 09時13分)
原子力規制委員会が、九州電力川内(せんだい)原発1、2号機の事実上の「合格証」となる審査書案を9日にまとめる見通しになった。昨年7月に原発の新規制基準が施行されてから「合格第1号」の提示まで1年を要した。規制委が当初「半年程度」と見込んだ審査が長期化した背景には、新基準への適応に多くの設備が必要になることに加え、手間やコストを最小限に抑えたいという電力各社の対応のまずさがある。
◇電力各社、対応ずさん
審査の最大の焦点は地震と津波の想定だ。規制委は、近くに活断層が見つからない場合でも、より大きな地震を想定に加えるよう要求したが、追加の対策工事を抑えたい電力各社は抵抗。九電が最初に規制委の要求を受け入れ、想定する最大の地震動を引き上げるまでに8カ月を要した。川内原発の工事費は800億円から1300億円に膨らみ、いまだに完了していない。
電力各社の消極姿勢は今も続く。日本原子力発電と東北電力が、それぞれ東海第2原発(茨城県)と東通原発(青森県)の安全審査を今年5〜6月に申請した際にも、この地震を想定に入れず「これまでの審査の内容を踏まえない申請があることは大変問題がある」(島崎邦彦・規制委員長代理)と厳しい批判を受けた。
川内原発以外の11原発17基の審査終了のメドは立っていない。安全を軽視する姿勢を改めない限り、審査の長期化は今後も避けられない。【酒造唯】