中韓首脳:「日本たたき」抑制…共同声明に歴史問題盛らず
毎日新聞 2014年07月04日 01時22分(最終更新 07月04日 07時54分)
【ソウル西岡省二、澤田克己】中国の習近平(しゅう・きんぺい)国家主席と韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領による3日の首脳会談では、日米両国が神経をとがらせる問題が共同声明ではなく、付属文書に盛り込まれた。中国は、国内向け報道では日本に対する強い姿勢を示したものの、全体としては抑制した印象を与えた。
「これだけか?」
首脳会談後に発表された文書を読んだ韓国紙記者から、不服そうな声が漏れた。日本の歴史問題への言及が、付属文書にあった慰安婦問題の資料共有などに関する1行しかなかったからだ。「河野談話」の見直しや日本の集団的自衛権行使容認などを受け、歴史問題を前面に出した日本たたきを中韓首脳会談に期待していた韓国メディアには期待外れの内容と言えた。
習主席は会談で、抗日戦争勝利と朝鮮半島の植民地支配からの解放の70周年に当たる来年に両国が「記念活動をすることができる」と語ったという。ソウルでの共同記者会見ではこうした内容は一切語られず、中国中央テレビや新華社通信が報じただけだった。式典に関する朴大統領のコメントには触れておらず、国内に向けた宣伝色の強い報道であることは明らかだ。
両首脳が記者会見で質問を受けなかったことも、日本がらみの質問が出ることを警戒した可能性が高い。
◇先に訪韓、揺さぶり
一方で中国は今回、伝統的な友好国である北朝鮮より先に韓国を単独で訪問し、韓国を重視する姿勢を鮮明に示しながら、米中で利害が衝突する問題に関して韓国に同調を迫ったとみられている。
代表的なものが、中国が早期設立を目指しているアジアインフラ投資銀行(AIIB)への韓国の参加を巡る問題だ。
AIIBは昨年10月、アジア各国のインフラ整備を支援するためとして中国が提唱した構想。日米が主導するアジア開発銀行(ADB)に対抗しようとするもので、米国が韓国に参加を見合わせるよう働きかけていたため、韓国の対応が注目されていた。
今回の首脳会談では結局、共同声明ではなく「付属文書」に、アジアでのインフラ投資拡大の必要性に両国が共感したことを合意事項として明示した上で、「韓国が(AIIBを)高く評価した」と盛り込まれた。