社説:女性蔑視ヤジ 少子化の理由が見えた
毎日新聞 2014年07月05日 02時15分
東京都議会の体たらくにあきれていたら、今度は国会だ。女性を蔑視した同様のヤジが明るみに出た。
4月の衆院総務委員会で質問中の上西小百合議員(日本維新の会)に対し、男性議員が、「早く結婚して子どもを産まないと駄目だぞ」とヤジを飛ばしていたのだ。周囲からは笑い声や拍手まで起こったという。男性議員は4日になって自民党の大西英男議員であることがわかった。
女性に「結婚しろ」「産め」といった言葉を投げつける行為は、場所がどこであれ許されない。だが、それが国民や都民の代表である議員によって、しかも少子化、人口減少というテーマを議論している最中に行われたとなると、事の深刻さを痛感せずにはいられない。
今回の出来事は、図らずも少子化が改善しない理由をあぶり出した。結婚、出産、育児を女性の責任としてとらえる風潮だ。「女は産むためのもの」と言わんばかりのヤジにも敏感に反応しない。非難するどころか、笑ったり、盛り上げたりする。
この風潮がはびこる限り、声高に「女性が輝く社会にする」と繰り返しても意味ある変化は起こるまい。
そこで安倍政権に、意識改革の先頭に立つことを求める。今回のような発言を「断固として許さない」という強い意思表示が繰り返し、ほしい。ヤジの主が与党議員ならなおさらだ。国会や各議会には、あらゆる差別発言を議場から追放する新決議で、改革の意思を示してもらいたい。
今回のヤジ問題は、議場が圧倒的に男性議員によって占められていることと無縁ではないはずだ。もし半分が女性だったら、どうだろう。差別発言をなくす、という目的だけでなく、男女が等しく参加して議論し結論を出すという本来の姿にするために、女性議員の数を大幅に増やす必要がある。与党には、候補者の半数を女性にするなど率先して動く姿を示してもらいたい。
女性議員にも、「負けないで」と訴えたい。蔑視ヤジの被害者側だが、差別にあったら勇気を出して、「ノー」を表明してほしい。どの国でも、不当な扱いに対する女性たちの怒りが意識改革の原動力となってきた。
そして勇気ある行動を社会全体で促し、応援する。都議会でヤジを受けた議員のイメージを傷つけるプライベートな話題を取り上げた週刊誌があるが、不快に思った人は多いはずだ。
中央省庁の幹部人事で、複数の女性局長が誕生するなど、明るい動きが出てきた。だが、目指すは女性の就任がニュースにならない日、だ。それには、まず政府や国会が、意識改革の旗振り役にふさわしい姿に変わらねばならない。