モメンタム投資とは、現在の株価のトレンドが継続することを想定した投資ストラテジーです。
ここで大事な単語はトレンドです。トレンドとは傾向という意味です。
ここにある銘柄の株価チャートがあるとします。みなさんにはトレンドが見えますか?
トレンドを示す線のことを、トレンドラインと言います。

これがトレンドラインです。
トレンドラインの書き方はかんたんです。上昇相場では次第に切りあがってゆく底値を結び合わせ、直線を引きます。
これは当たり前のことかもしれませんが、線がひけるようになるには、最低、二つの底値が必要になります。
ただ、二つの底値を繋いだトレンドラインは、それ自体ではまだ信頼性の高いトレンドとは言えません。
三回目にそのトレンドラインに株価がさしかかり、そのトレンドラインを割り込まずに守ったら、それはかなり信頼できるトレンドラインになるわけです。
つまり、二回より三回テストされたトレンドラインの方が良いし、三回より四回の方が信頼性が高いというわけです。
特に二回きりの底値を頼りにひかれたトレンドラインと、三回テストされたトレンドラインの信頼度は、雲泥の差があると申し上げて良いです。

それに比べて三回テストされたトレンドラインと四回テストされたトレンドラインとでは、信頼度の大きさは、少し高くなる程度です。
私なら、少なくとも三回テストされたトレンドラインをもっている銘柄の中からモメンタム投資の候補銘柄を選びます。
さて、上昇トレンドの銘柄を買うということはこれでわかりましが、「それじゃ、どのタイミングで買うんだ?」という問題を説明します。教科書通り、一番オーソドックスな買い方は、前回の高値を株価が超えた瞬間に買うということです。
それを図で示せば、こうなります。

前回の高値から真横に赤い点線が伸びていますが、この水平の線のことを上値抵抗線、ないしはレジスタンスと言います。
株価がそのレジスタンスを上に切った瞬間、つまりA地点が買いシグナルとなります。
テクニカル分析にはいろいろな手法があって、今、みなさんに説明しているトレンドラインによる投資以外にも、たとえば日本古来のローソク足や、移動平均線を使った分析、オシレーター系のシグナルなど、追求すれば、実にいろいろなアプローチをすることができます。
覚えておいてほしいことは、チャート分析は、自分と同じ切り口で、自分と同じタイミングを狙いながら投資する人が多くなればなるほど、そのシグナルが補強されやすいということです。
すると、誰も使っていないような奇抜なインディケーターは、聞こえは良いですけど、それを見ている人が少なすぎて、シグナルとしての破壊力は薄まってしまうのです。よく相場は「人のゆく裏に道あり花の山」なんていいますけど、ことモメンタム投資に限って言えば、そもそもトレンドの存在そのものに賭ける投資スタイルなので、あまりゴチャゴチャ考えると、その本道を見そこなってしまうのです。
シンプル・イズ・ザ・ベストというわけです。
ただ、レジスタンスからブレイクアウト、つまりそれを上に切る瞬間というのは、誰もが狙っているので、動きが早いです。ちょっとぼんやりしているとチャンスを逃し、株価が上がってしまうことも、しばしばあります。
教科書通りにモメンタム投資を進めるのであれば、Aを逃した場合の次のチャンスはBということになります。

なぜならBの前に株価はトレンドラインまで下がり(=そのことを下値を試す、ないしはテストするといいます)、ちゃんとトレンドラインを死守した後で、また上昇に転じ、そして直近の高値、つまり赤の破線でしめしたレジスタンスを上に切っているからです。それがBのポイントで、ここが買いシグナルになります。
ここで大事な単語はトレンドです。トレンドとは傾向という意味です。
ここにある銘柄の株価チャートがあるとします。みなさんにはトレンドが見えますか?
トレンドを示す線のことを、トレンドラインと言います。
これがトレンドラインです。
トレンドラインの書き方はかんたんです。上昇相場では次第に切りあがってゆく底値を結び合わせ、直線を引きます。
これは当たり前のことかもしれませんが、線がひけるようになるには、最低、二つの底値が必要になります。
ただ、二つの底値を繋いだトレンドラインは、それ自体ではまだ信頼性の高いトレンドとは言えません。
三回目にそのトレンドラインに株価がさしかかり、そのトレンドラインを割り込まずに守ったら、それはかなり信頼できるトレンドラインになるわけです。
つまり、二回より三回テストされたトレンドラインの方が良いし、三回より四回の方が信頼性が高いというわけです。
特に二回きりの底値を頼りにひかれたトレンドラインと、三回テストされたトレンドラインの信頼度は、雲泥の差があると申し上げて良いです。
それに比べて三回テストされたトレンドラインと四回テストされたトレンドラインとでは、信頼度の大きさは、少し高くなる程度です。
私なら、少なくとも三回テストされたトレンドラインをもっている銘柄の中からモメンタム投資の候補銘柄を選びます。
さて、上昇トレンドの銘柄を買うということはこれでわかりましが、「それじゃ、どのタイミングで買うんだ?」という問題を説明します。教科書通り、一番オーソドックスな買い方は、前回の高値を株価が超えた瞬間に買うということです。
それを図で示せば、こうなります。
前回の高値から真横に赤い点線が伸びていますが、この水平の線のことを上値抵抗線、ないしはレジスタンスと言います。
株価がそのレジスタンスを上に切った瞬間、つまりA地点が買いシグナルとなります。
テクニカル分析にはいろいろな手法があって、今、みなさんに説明しているトレンドラインによる投資以外にも、たとえば日本古来のローソク足や、移動平均線を使った分析、オシレーター系のシグナルなど、追求すれば、実にいろいろなアプローチをすることができます。
覚えておいてほしいことは、チャート分析は、自分と同じ切り口で、自分と同じタイミングを狙いながら投資する人が多くなればなるほど、そのシグナルが補強されやすいということです。
すると、誰も使っていないような奇抜なインディケーターは、聞こえは良いですけど、それを見ている人が少なすぎて、シグナルとしての破壊力は薄まってしまうのです。よく相場は「人のゆく裏に道あり花の山」なんていいますけど、ことモメンタム投資に限って言えば、そもそもトレンドの存在そのものに賭ける投資スタイルなので、あまりゴチャゴチャ考えると、その本道を見そこなってしまうのです。
シンプル・イズ・ザ・ベストというわけです。
ただ、レジスタンスからブレイクアウト、つまりそれを上に切る瞬間というのは、誰もが狙っているので、動きが早いです。ちょっとぼんやりしているとチャンスを逃し、株価が上がってしまうことも、しばしばあります。
教科書通りにモメンタム投資を進めるのであれば、Aを逃した場合の次のチャンスはBということになります。
なぜならBの前に株価はトレンドラインまで下がり(=そのことを下値を試す、ないしはテストするといいます)、ちゃんとトレンドラインを死守した後で、また上昇に転じ、そして直近の高値、つまり赤の破線でしめしたレジスタンスを上に切っているからです。それがBのポイントで、ここが買いシグナルになります。
なお、さきほどのAの買いシグナルと、今回のBの買いシグナルでは、Bの買いシグナルの方が信頼性が高いと一般に言えます。
その理由は、Bはその前に三回、トレンドラインを試しているので、この上昇トレンド自体の信頼性がそれだけ高いからです。

突き詰めて言えば、モメンタム投資で最低限、みなさんが知っておかなければいけないことは、たったこれだけです。
どうですか? 簡単ですよね?
あまりにシンプルなストラテジーなので、モメンタム投資は馬鹿にされやすいです。
僕も証券会社に入って間もない頃は、難しい概念ばかりを追っかけて、モメンタム投資は馬鹿にしていました。
しかし経験を積めば積むほど、モメンタム投資の有効性を認めざるを得ないと思うようになりました。
僕はニューヨークではSGウォーバーグ、サンフランシスコではH&Q(いまのJPモルガン)という会社で機関投資家向けのセールスをしたわけですが、その経験から、有名な投資家のスタイルに接する機会がありました。
例えば、今、アメリカでもっとも相場が上手いと言われているSACのスティーブン・コーエンというヘッジファンド・マネージャーは、もともとグランタルという地場証券に居て、そこから独立した人ですが、僕と同期でSGウォーバーグに入社したテッドという友達のセールスマンが担当していました。
テッドは僕のすぐ隣に座っていたので、彼の書く伝票はすぐ見えるわけだけど、スティーブン・コーエンの手口も、それでわかるわけです。
コーエンは典型的なモメンタム投資家です。
またドットコム・バブル時代に一世を風靡したギャレオンというヘッジファンドをやっていたラジ・ラジャナトナンもモメンタム投資家です。
そのほか、フィデリティでピーターリンチの後任として一頃大変影響力を持っていたジェフ・ヴィニックというファンドマネージャーもモメンタム投資でした。
いわゆるエクイティー・ロング&ショート型のヘッジファンドで、最も成功している人たちの多くがモメンタム投資なのです。
さて、ここからが大事な点です。こんなに簡単で、身も蓋もない投資ストラテジーなのに、なぜ個人投資家がそれを真似ると失敗するのでしょうか?
それはリスク管理の手法が、てんで出来ていないからです。モメンタム投資で失敗する人の9割は、これが原因です。
そもそもモメンタム投資というのは上昇トレンドに投資するやり方なのだから、その上昇トレンドが崩れてしまえば、もうそんな株に用は無いわけです。
ところが未練がましくチャートが崩れた株を、我慢して抱えている……これが失敗の原因です。

だからこの図のようにトレンドラインを割り込んだら、即、逃げてください。
その時、個人投資家ほど、自分の買いコストを気にします。(今売れば損になるから……)とかくよくよ考えるわけです。
あるいは先の例ではBの地点で買ったわけだから、一応利が乗っているけど、限りなく収支トントンに近い……こんなに小さな利益じゃ、もったいないなとか、そういう愚にもつかないことをウジウジ考えるわけです。
でもトレンドラインを割り込むということは、その株の上昇の原因になっていた、ファンダメンタルズやその他の好材料など、なんらかのエンジンが止まってしまったから、急落しているわけであって、何か重大な問題が起こっていることがほとんどなのです。
その原因すらしらないくせに、根拠のない自信を持って、「いや、俺の見立に間違いはない」とかなんとか意地を張るのはものすごく危険です。
もう一度言います。ある株がトレンドラインを割り込むと、その背後には、ほとんどの場合、何か重大な、悪い変化が隠れています。ただ個人投資家にはそれが見えていないだけです。
株式市場には常に自分よりその株のことを良く知っている事情通やインサイダーが居るし、彼らは自分より早く行動を起こします。言い換えれば、悪い決算などの事実が明るみになるのは、いつもずっと後だということです。
損を確定するのは辛いですが、多くの場合、迅速な損切りは後後まで粘った挙句の損切りよりダメージが少ないです。
もういちどまとめると、モメンタム投資とは、現在の株価のトレンドが今後も継続することを想定したストラテジーです。すると唯一の買い理由は、勢いが良いということだけなのです。そのトレンド、言い換えれば唯一の買い理由が崩れたとき、それでもまだその株を持ち続けるのは愚鈍です。
ただ、トレンドラインが自分の買値よりずっと下にあり、それを割り込むまで待っていたら、すごく損が出る場合もあります。そのときのために私は、トレンドを割っていようが、いまいが、とにかく、自分の買値より8%株価が下がったら、そこで打ち止め、一旦、売って、仕切り直しするというルールを自分に課しています。
こういうと「マイナス8%には科学的根拠がない。なぜそんな杓子定規なルールを自分に課すのだ?」と反論する人が必ず出てきます。
そこで説明すると、8%のヤラレなら、まだ他の投資機会でいくらでも挽回することができるからです。つまり敗者復活戦のために資金を温存する理由から自分に課している規律というわけです。
私の場合、10回モメンタム投資でポジションを立てれば、そのうち勝てるのはせいぜい6回です。

でもみなさんにそう告白しても、ぜんぜん恥ずかしくありません。
なぜか?
それは名人といわれる投資家でも、勝率は大体そんなものだというのを、この目で長年にわたって見てきたからです。
例えば僕の上司のジョンは株式部長で、ジョージ・ソロスの口座を担当していました。僕は部長のサブとして見習いをやっていたので、ソロスファンドのスタンレー・ドラッケンミラーの電話も何度も取ったし、注文を場にとおしたりしました。
で、それらの有名人の手口を見ていると、やっぱり彼らだって人間だから、間違えることが多いです。
ドラッケンミラーやスティーブン・コーエンや、ジム・クレーマーが7勝3敗くらいの成績なら、僕みたいな虫けら投資家が6勝4敗なら、全然はずかしくないし、自分を褒めてあげてやってもいいよねと感じるわけです。
よく自分は百発百中だとか、負けたためしがないとか言っているトレーダーの人がいますけど、そういう人たちは皆、自分がうそつきだ、ないしは自分が馬鹿だということを世間に吹聴しているのと同じです。
例えば野球で考えてください。
3割打者なら一流でしょう?
イチローの打率が何割か知らないけど、10割ではないわけです。
それをいい加減な人間ほど「俺は10割打者だ」とかいうわけです。
みなさんはそんな自慢話を聞いて「うわぁ、すごいなあ」と感心したり、憧れたりしますか? しないと思うんです。
こいつは軽薄な奴だなと思うでしょう?
なぜなら、常識として、あるいは自分の経験から、10割打者なんてものはありえないということを既にみなさんが知っているからです。
野球の世界では10割は滑稽だとすぐわかるのに、それが投資の世界になると「へー」と感心してしまうのは、ひとえにみなさんの経験が足らないからです。
なぜ、こんなことをしつこく強調するか?といえば、6勝4敗がノーマルなんだという心構えが無ければ、いままさに自分の株価がトレンドラインを割り込んで、ソッコーで逃げなきゃいけない瞬間に、「だけどここでへたれたら損が出ちゃう」とか、くだらない損得勘定でもって理屈にあわない予定変更をしてしまう危険があるからです。
もし10回買ったうちの4回程度は、確率論から言って、当然、やられになると合理的に考えられれば、それだけ損切りがサクサクできるわけです。
まとめると、百戦百勝を語るのは、しろうとか、そうでなければうそつきです。
われわれがしなければいけないことは、オッズ、つまり勝率の管理なのです。
勝率の管理とは、野球でいえば、2割8分8厘打っている選手が、どうやって三割打者にあがってゆけるか?という話です。
わずか2%の勝率UPにすぎないけれど、これを実現するのがどれほど大変な努力かということは、野球をやったことのある人なら知っていると思います。
相場もこれと同じ。スタートは5割くらいです。それをどうやって6勝4敗にもってゆけるか? そのことだけを考えてください。
つまり負けないようにするのではなく、はじめから負けてもよいように、配慮ないしは準備しておくということです。
それは何を意味するか?
ある程度負けることがわかっているわけだから、銘柄は分散した方がいいです。最初は投資資金が少ないので、そんなにたくさん分散できないと思うから、自分の資金を五等分くらいして、五分の一ずつ、それぞれの銘柄に投資してください。
繰り返しになるけれど、損切りを早くしてください。そして、「勝った」、あれは良かったというエピソードを、積み上げてゆくわけです。
もし、過去に勝った経験のある株なら、同じ銘柄を二度、三度トレードしてみてください。逆に以前、損した銘柄は、「今度こそ」と思って買っても、たいていヤラレます。
次にモメンタム投資と、グロース投資とは、一体、どう違うの? ということを説明します。モメンタム投資はひろくグロース投資の中のいち手法であり、言葉を換えて言えば、グロース投資で、ファンダメンタルズを一切気にせず、チャートだけで勝負するのがモメンタム投資だと覚えてください。

それではいったい、グロース投資とは何でしょうか? グロース投資とは、その企業が市場平均より高い収益率を見込める場合、株価収益率、つまりPERや株価純資産倍率、つまりPBRの水準を気にせずに投資する方法を言います。
もう少し言葉を尽くして説明すると、いま、投資の際のチェック項目には業績、バリュエーション、モメンタム、マーケット全体の地合いなどがあります。
今日、これまでずっと説明してきたモメンタム投資は、このうちモメンタムだけに着目し、後は一切、気に掛けないやり方です。
これがグロース投資になるとモメンタムも必要ですが、それに加えて業績も見ます。さらにグロース投資家の多くはマーケット全体の地合いにも気を配ります。
ただ、グロース投資家がやらないことは、バリュエーションを気にするということです。

【お知らせ】
この記事は先に楽天証券のセミナーで喋ったレクチャーを抜粋したものです。動画をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。
『モメンタム投資が上手くなるコツ』
その理由は、Bはその前に三回、トレンドラインを試しているので、この上昇トレンド自体の信頼性がそれだけ高いからです。
突き詰めて言えば、モメンタム投資で最低限、みなさんが知っておかなければいけないことは、たったこれだけです。
どうですか? 簡単ですよね?
あまりにシンプルなストラテジーなので、モメンタム投資は馬鹿にされやすいです。
僕も証券会社に入って間もない頃は、難しい概念ばかりを追っかけて、モメンタム投資は馬鹿にしていました。
しかし経験を積めば積むほど、モメンタム投資の有効性を認めざるを得ないと思うようになりました。
僕はニューヨークではSGウォーバーグ、サンフランシスコではH&Q(いまのJPモルガン)という会社で機関投資家向けのセールスをしたわけですが、その経験から、有名な投資家のスタイルに接する機会がありました。
例えば、今、アメリカでもっとも相場が上手いと言われているSACのスティーブン・コーエンというヘッジファンド・マネージャーは、もともとグランタルという地場証券に居て、そこから独立した人ですが、僕と同期でSGウォーバーグに入社したテッドという友達のセールスマンが担当していました。
テッドは僕のすぐ隣に座っていたので、彼の書く伝票はすぐ見えるわけだけど、スティーブン・コーエンの手口も、それでわかるわけです。
コーエンは典型的なモメンタム投資家です。
またドットコム・バブル時代に一世を風靡したギャレオンというヘッジファンドをやっていたラジ・ラジャナトナンもモメンタム投資家です。
そのほか、フィデリティでピーターリンチの後任として一頃大変影響力を持っていたジェフ・ヴィニックというファンドマネージャーもモメンタム投資でした。
いわゆるエクイティー・ロング&ショート型のヘッジファンドで、最も成功している人たちの多くがモメンタム投資なのです。
さて、ここからが大事な点です。こんなに簡単で、身も蓋もない投資ストラテジーなのに、なぜ個人投資家がそれを真似ると失敗するのでしょうか?
それはリスク管理の手法が、てんで出来ていないからです。モメンタム投資で失敗する人の9割は、これが原因です。
そもそもモメンタム投資というのは上昇トレンドに投資するやり方なのだから、その上昇トレンドが崩れてしまえば、もうそんな株に用は無いわけです。
ところが未練がましくチャートが崩れた株を、我慢して抱えている……これが失敗の原因です。
だからこの図のようにトレンドラインを割り込んだら、即、逃げてください。
その時、個人投資家ほど、自分の買いコストを気にします。(今売れば損になるから……)とかくよくよ考えるわけです。
あるいは先の例ではBの地点で買ったわけだから、一応利が乗っているけど、限りなく収支トントンに近い……こんなに小さな利益じゃ、もったいないなとか、そういう愚にもつかないことをウジウジ考えるわけです。
でもトレンドラインを割り込むということは、その株の上昇の原因になっていた、ファンダメンタルズやその他の好材料など、なんらかのエンジンが止まってしまったから、急落しているわけであって、何か重大な問題が起こっていることがほとんどなのです。
その原因すらしらないくせに、根拠のない自信を持って、「いや、俺の見立に間違いはない」とかなんとか意地を張るのはものすごく危険です。
もう一度言います。ある株がトレンドラインを割り込むと、その背後には、ほとんどの場合、何か重大な、悪い変化が隠れています。ただ個人投資家にはそれが見えていないだけです。
株式市場には常に自分よりその株のことを良く知っている事情通やインサイダーが居るし、彼らは自分より早く行動を起こします。言い換えれば、悪い決算などの事実が明るみになるのは、いつもずっと後だということです。
損を確定するのは辛いですが、多くの場合、迅速な損切りは後後まで粘った挙句の損切りよりダメージが少ないです。
もういちどまとめると、モメンタム投資とは、現在の株価のトレンドが今後も継続することを想定したストラテジーです。すると唯一の買い理由は、勢いが良いということだけなのです。そのトレンド、言い換えれば唯一の買い理由が崩れたとき、それでもまだその株を持ち続けるのは愚鈍です。
ただ、トレンドラインが自分の買値よりずっと下にあり、それを割り込むまで待っていたら、すごく損が出る場合もあります。そのときのために私は、トレンドを割っていようが、いまいが、とにかく、自分の買値より8%株価が下がったら、そこで打ち止め、一旦、売って、仕切り直しするというルールを自分に課しています。
こういうと「マイナス8%には科学的根拠がない。なぜそんな杓子定規なルールを自分に課すのだ?」と反論する人が必ず出てきます。
そこで説明すると、8%のヤラレなら、まだ他の投資機会でいくらでも挽回することができるからです。つまり敗者復活戦のために資金を温存する理由から自分に課している規律というわけです。
私の場合、10回モメンタム投資でポジションを立てれば、そのうち勝てるのはせいぜい6回です。
でもみなさんにそう告白しても、ぜんぜん恥ずかしくありません。
なぜか?
それは名人といわれる投資家でも、勝率は大体そんなものだというのを、この目で長年にわたって見てきたからです。
例えば僕の上司のジョンは株式部長で、ジョージ・ソロスの口座を担当していました。僕は部長のサブとして見習いをやっていたので、ソロスファンドのスタンレー・ドラッケンミラーの電話も何度も取ったし、注文を場にとおしたりしました。
で、それらの有名人の手口を見ていると、やっぱり彼らだって人間だから、間違えることが多いです。
ドラッケンミラーやスティーブン・コーエンや、ジム・クレーマーが7勝3敗くらいの成績なら、僕みたいな虫けら投資家が6勝4敗なら、全然はずかしくないし、自分を褒めてあげてやってもいいよねと感じるわけです。
よく自分は百発百中だとか、負けたためしがないとか言っているトレーダーの人がいますけど、そういう人たちは皆、自分がうそつきだ、ないしは自分が馬鹿だということを世間に吹聴しているのと同じです。
例えば野球で考えてください。
3割打者なら一流でしょう?
イチローの打率が何割か知らないけど、10割ではないわけです。
それをいい加減な人間ほど「俺は10割打者だ」とかいうわけです。
みなさんはそんな自慢話を聞いて「うわぁ、すごいなあ」と感心したり、憧れたりしますか? しないと思うんです。
こいつは軽薄な奴だなと思うでしょう?
なぜなら、常識として、あるいは自分の経験から、10割打者なんてものはありえないということを既にみなさんが知っているからです。
野球の世界では10割は滑稽だとすぐわかるのに、それが投資の世界になると「へー」と感心してしまうのは、ひとえにみなさんの経験が足らないからです。
なぜ、こんなことをしつこく強調するか?といえば、6勝4敗がノーマルなんだという心構えが無ければ、いままさに自分の株価がトレンドラインを割り込んで、ソッコーで逃げなきゃいけない瞬間に、「だけどここでへたれたら損が出ちゃう」とか、くだらない損得勘定でもって理屈にあわない予定変更をしてしまう危険があるからです。
もし10回買ったうちの4回程度は、確率論から言って、当然、やられになると合理的に考えられれば、それだけ損切りがサクサクできるわけです。
まとめると、百戦百勝を語るのは、しろうとか、そうでなければうそつきです。
われわれがしなければいけないことは、オッズ、つまり勝率の管理なのです。
勝率の管理とは、野球でいえば、2割8分8厘打っている選手が、どうやって三割打者にあがってゆけるか?という話です。
わずか2%の勝率UPにすぎないけれど、これを実現するのがどれほど大変な努力かということは、野球をやったことのある人なら知っていると思います。
相場もこれと同じ。スタートは5割くらいです。それをどうやって6勝4敗にもってゆけるか? そのことだけを考えてください。
つまり負けないようにするのではなく、はじめから負けてもよいように、配慮ないしは準備しておくということです。
それは何を意味するか?
ある程度負けることがわかっているわけだから、銘柄は分散した方がいいです。最初は投資資金が少ないので、そんなにたくさん分散できないと思うから、自分の資金を五等分くらいして、五分の一ずつ、それぞれの銘柄に投資してください。
繰り返しになるけれど、損切りを早くしてください。そして、「勝った」、あれは良かったというエピソードを、積み上げてゆくわけです。
もし、過去に勝った経験のある株なら、同じ銘柄を二度、三度トレードしてみてください。逆に以前、損した銘柄は、「今度こそ」と思って買っても、たいていヤラレます。
次にモメンタム投資と、グロース投資とは、一体、どう違うの? ということを説明します。モメンタム投資はひろくグロース投資の中のいち手法であり、言葉を換えて言えば、グロース投資で、ファンダメンタルズを一切気にせず、チャートだけで勝負するのがモメンタム投資だと覚えてください。
それではいったい、グロース投資とは何でしょうか? グロース投資とは、その企業が市場平均より高い収益率を見込める場合、株価収益率、つまりPERや株価純資産倍率、つまりPBRの水準を気にせずに投資する方法を言います。
もう少し言葉を尽くして説明すると、いま、投資の際のチェック項目には業績、バリュエーション、モメンタム、マーケット全体の地合いなどがあります。
今日、これまでずっと説明してきたモメンタム投資は、このうちモメンタムだけに着目し、後は一切、気に掛けないやり方です。
これがグロース投資になるとモメンタムも必要ですが、それに加えて業績も見ます。さらにグロース投資家の多くはマーケット全体の地合いにも気を配ります。
ただ、グロース投資家がやらないことは、バリュエーションを気にするということです。
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この記事は先に楽天証券のセミナーで喋ったレクチャーを抜粋したものです。動画をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。
『モメンタム投資が上手くなるコツ』