2014年07月03日
驚き!アルツハイマー治療薬開発に「胃薬」が注目されている!
カテゴリ:薬剤師業界の話題
こんにちは!薬剤師ネットのジョンです!
65歳以上人口の割合が21%を超すことを、「超高齢社会」とよびます。
日本ではすでに、「超高齢社会」に突入しており、アルツハイマー病の患者が今後増えると考えられます。
実は、アルツハイマー病は高齢者だけの問題ではなく、「若年性アルツハイマー病」といって、若ければ18歳から発症することもあります。
このアルツハイマー病の症状を緩和する薬はありますが、根本的に治療することができる薬は実はまだ存在していないのです。
しかし、近年の研究では、アルツハイマー病を根治できる可能性のある薬が開発されつつあります。
今回はそんな、若くても無関係ではいられない「アルツハイマー病」の発症のメカニズムと、その根治療法薬の候補について紹介したいと思いマス!
アルツハイマー病のメカニズム
タンパク質は、体内で様々な機能を発揮したり、身体を構成しています。
筋肉や臓器はもちろん、消化酵素やホルモンなどもタンパク質です。
タンパク質は、糸が規則的に絡み合うかのように、規則的な立体構造をとることで、多種多様な機能を発揮するようになっています。
しかしながら、タンパク質も糸と同様に、意図しない絡まり方をしてしまい、おかしな構造をとってしまうことがあります。
裁縫の際に、糸が絡まってしまいほどくのに苦労したという経験をした方も多いと思いますが、体内では常にタンパク質はそのような危険にさらされている状態です。
異常な絡まり方をしたタンパク質が蓄積され身体に害を及ぼすこともあります。
アルツハイマー病は、この異常な絡まり方をしてしまったタンパク質が原因といわれています。
「アミロイドβ」という異常な絡まり方をしてしまったタンパク質が、脳内に蓄積されることでアルツハイマー病は発症すると考えられています。
他にも、「肺繊維症」や「白内障」や「狂牛病」といったものも、異常な絡まり方をしたタンパク質が原因であると言われています。
これらは近年、「フォールディング病」と呼ばれています。
異常な絡まりをキレイにほどいてくれるHSP
タンパク質の変な絡まりをキレイにほどいてくれるものが、実は体内には存在します。
それが「HSP」と呼ばれるタンパク質です。
HSPは「分子シャペロン」とも呼ばれます。
本来シャペロンとは、中世ヨーロッパでお嬢様のお世話をする係のことをさします。
世間知らずなお嬢様が社交界にデビューする際に、身の回りのお世話をする係の者がかならず同伴し、髪の毛や服が乱れる度にキレイに整えます。
HSPは誤って絡み合ってしまったタンパク質を元通りにしてくれる分子ですので、「分子シャペロン」と呼ばれるようになりました。
HSPをたくさん増やすことができる物質がアルツハイマー病に効く!?
変な絡み方をしたタンパク質が少量であればHSPが処理してくれます。
しかし、変な構造をもったタンパク質が大量になってくると、HSPの処理能力を超えてしまい、フォールディング病である「アルツハイマー病」発症へとつながってしまいます。
いいかえると、HSPを増やすことができる物質を体内に投与すれば、HSPの処理能力が上がり、フォールディング病治療へとつながるということになりますよネ!
それは、胃薬のGGA(Geranyl Geranyl Acetone; 商品名セルベックスR)です。
(参考:HSPと分子シャペロン)
昔からよく処方されている胃薬が、アルツハイマー病の根治療法薬の候補になっているとは、驚きですよね!
新薬が生まれにくくなっている近年、既存の薬を別の疾患にも応用できるといった、研究報告が増えてくるのかもしれないですネ!
HSPを利用したフォールディング病治療の研究が進めば、アルツハイマー病や狂牛病や肺繊維症などを、根本的に治療できる日がくるかもしれませんネ!
※今回の記事は、下記の著者の記事を参考にさせていただきました。
著者:宮川 隆
薬剤師ほか第一種放射線取扱主任者など10以上の資格を保有。
現在は、東京大学大学院医学系研究科がんプロフェッショナル養成基盤推進プラン特任助教