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ネイチャー STAP論文を正式取り下げ
7月2日 19時21分

ネイチャー STAP論文を正式取り下げ
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理化学研究所の小保方晴子研究ユニットリーダーらが科学雑誌ネイチャーに発表したSTAP細胞の2本の論文が2日、正式に取り下げられました。
複数の深刻な間違いが見つかったことが、その理由だとしています。
これで新型万能細胞の作製に成功したという世界的に注目を集めた研究成果は、白紙に戻る結果となりました。

正式に取り下げられたのは、理化学研究所の小保方リーダーらが科学雑誌「ネイチャー」に発表した「article(アーティクル)」と呼ばれる論文と「letter(レター)」と呼ばれる論文の2本です。
このうち、STAP細胞の作製方法などを示した「article」については、ことし4月、理化学研究所の調査委員会が画像のねつ造などの不正があったと認定し、小保方リーダーらに論文の取り下げを勧告していました。
また、細胞の万能性を説明した「letter」についても、実験には使われていないはずの2種類の細胞がデータから見つかり、それぞれ万能細胞の一種、ES細胞と胎盤を作るTS細胞と似ているなど新たな疑義が次々と指摘されました。
論文の取り下げは2日午後7時ごろ、ネイチャーのホームページで発表されたもので、著者から複数の深刻な間違いが見つかったと申告があったことを明らかにしています。
理化学研究所は現在、STAP細胞が本当にあるのかどうかを調べる検証実験を行っていますが、論文の正式な取り下げで新型万能細胞の作製という世界的に注目を集めた研究成果は、発表から5か月で科学的根拠を失い、白紙に戻る結果となりました。

「不正理由の取り下げは科学界での信用失う」

論文は取り下げられても、インターネット上にある世界的なデータベースで「取り下げ」のマークが付けられ、その理由とともに公開され続けます。
このデータベース上で取り下げられた論文は、これまでにおよそ3200本に上ります。
研究不正に詳しい愛知淑徳大学の山崎茂明教授によりますと、不正が理由で論文を取り下げた研究者の多くが、その後、論文を発表することなく、研究の世界から去って行ったとみられるということで、取り下げは研究者にとって極めて厳しい結果を意味します。
山崎教授は「論文取り下げの理由が不正によるものであれば、研究者は科学界での信用を失い、資金が得られなくなって研究が続けられなくなる。ところが、理化学研究所は今回、認定された不正以外にも多くの疑義が指摘されている小保方リーダーに何ら疑義についての説明をさせないまま、検証実験に参加させるなど、考えられない対応をしている」と指摘しています。

「ネイチャー」は審査プロセス見直しへ

イギリスの科学雑誌「ネイチャー」は、理化学研究所の小保方晴子研究ユニットリーダーらが発表し取り下げとなったSTAP細胞の論文について掲載するかどうかの審査に不備があったことを認め、今後、審査のプロセスを見直すことを明らかにしました。
ネイチャーは、ホームページ上で公開した文章の中で、取り下げられた小保方リーダーらの論文について「記録などを基に審査の過程を検証したが、編集者や査読を行った研究者が論文に重大な問題があることを事前に見抜くことはできなかった」と述べました。
そのうえでネイチャーでは、論文を掲載する際、画像などのデータのチェックを、一部の論文でしか行っていなかったと述べ、審査のプロセスに不備があったことを認めたうえで今後、見直すことを明らかにしました。
その一方で、論文を投稿する立場にある研究機関などの手続きにも不備があったと指摘し、「国の研究資金をむだにすることなく市民の科学への信頼を裏切らないためにも研究の信用性を担保するための努力を最優先の課題とすべきだ」と指摘しました。

バカンティ教授「正当性の証明願う」

論文の取り下げについて、ハーバード大学のチャールズ・バカンティ教授は「科学においてデータの信用性は研究成果の根幹だ。論文に問題があったことは非常に残念で、理化学研究所の調査結果などを受けて、論文の撤回に同意した。ただ、STAP細胞現象そのものを疑わせる情報はなく、明らかになった間違いが、現象そのものの信用性を損なわせることをおそれている。そうしたなか、文部科学省と理化学研究所が検証実験に十分な時間を与えると受け取れる情報を聞き励まされる思いだ。STAP細胞現象はそもそも私が私の兄弟と提唱したもので、理化学研究所だけでなく世界のほかの研究者によって、その正当性が証明されることを願っている」とするコメントを発表しました。

共同著者3人がコメント

理化学研究所の小保方晴子研究ユニットリーダーらが科学雑誌ネイチャーに発表したSTAP細胞の2本の論文が、正式に取り下げられたことを受け、論文の3人の共同著者がそれぞれコメントを発表しました。
このうち山梨大学の若山照彦教授は「撤回によって、皆様のご期待を裏切る結果となり、大変申し訳なく思っております。
2点の疑義が不正認定され、さらに新たな疑義が複数指摘されていることからも今回の論文撤回は必要な処置と考えます」とコメントしています。
また理化学研究所の笹井芳樹副センター長は「2つの論文に、多くの誤りが存在することが判明し、撤回いたしましたことは、研究者として慚愧の念にたえません。
こうした誤りを事前に発見できず、それらを回避し不正を防止する指導を徹底しきれなかったことを、共著者として痛切に後悔し、反省しております」としたうえで「重い責任を感じ、その進退については理化学研究所の判断に従う所存です」とコメントしています。
そして、理化学研究所の丹羽仁史プロジェクトリーダーは「論文が撤回される事態に至りました事は、共著者として誠に遺憾であり、つつしんでおわび申し上げます。
本件に係る疑問点につきましては、今後もその解明に真摯(しんし)に対応していく所存です」とコメントしています。

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