「スーパー堤防」建設へ 住宅を強制撤去7月3日 14時07分
大規模な洪水を防ぐ、国の「スーパー堤防」の事業と一体的に東京・江戸川区が進めている区画整理事業で、区は立ち退きに応じない住宅を強制的に撤去する作業を3日から始めました。
強制撤去されるのは、江戸川区北小岩の江戸川沿いにある木造2階建ての空き家で、3日は午前9時ごろに江戸川区の職員が家の中に立ち入り、家財道具を確認するなど撤去作業の準備を行いました。
この周辺の1.4ヘクタールの土地は、大規模な洪水を防ぐために国が進めている「スーパー堤防」の対象地域で、堤防の建設と一体的に江戸川区が区画整理事業を進めています。
当初、この中にあった住宅などの建物93棟のうち、9割は一時的に移転するなどすでに撤去されています。
しかし一部の住民が立ち退きに反対していて、区は交渉を続けてきましたが、事業が遅れるおそれがあるとして強制撤去に踏み切ったということです。
撤去作業は今月17日まで行われ、区は現在も住民が住んでいる住宅5棟についても、立ち退きに応じない場合は強制撤去を検討することにしています。
江戸川区区画整理課の山口正幸課長は「住民に土地を引き渡す期限を守らなければならないので、工事をこれ以上遅らせるわけにはいかないが、立ち退きに同意してもらえるようできるかぎり話し合いをしていきたい」と話していました。
東京・江戸川区の区画整理事業が進められている北小岩の地域に今も住み続けていて、「スーパー堤防」の建設に反対している宮坂美香さん(53)は「この地区は昔から水害に遭ったことはなく『スーパー堤防』の必然性に疑問を感じる。強制撤去が始まり不安を感じていて、区は事業をやめてほしい」と話していました。
「スーパー堤防」事業とは
「スーパー堤防」は、首都圏や近畿地方の都市部を流れる河川について、想定を超える大規模な洪水が発生した時に流域を守ることを目的とした事業です。
堤防の整備に合わせて周囲も高くして堤防の奥行きを市街地まで広げたもので、完成したあとは再び同じ場所で生活することも可能になっています。
国は昭和62年度に事業を開始し、全体で873キロを整備する計画でしたが、長い時間とばく大な費用がかかるため「非現実的だ」と指摘され、4年前の政府の事業仕分けでは「廃止すべき」と判断されました。
国は専門家の検討会を開き、3年前、人命に関わる被害が想定される地域に限定して、全体で120キロを整備する計画に変更し、国土交通省によりますと、これまでに14%に当たるおよそ16.4キロで整備が進められているということです。
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