4月の消費税増税に伴う経済支援策として、長野県諏訪郡下諏訪町が町内の生活保護世帯に配布した5千円分の「生活応援商品券」について、県から「収入と認定し、生活保護費を減額する」と指摘されて回収したことが2日、分かった。町は「配慮が足りず迷惑をかけた」とする一方、「生活保護世帯には町の施策が届かなくなる」(青木悟町長)と反発している。
商品券は登録した町内の商店や飲食店で使え、一般町民には4千円で販売。町民税が非課税で75歳以上のみの世帯や要介護度3〜5の認定を受けた人がいる世帯などに、計1355部を無償配布することを決めた。このうち生活保護を受けている71世帯には、6月24日に民生委員に配布を依頼した。
これに対し、町内の生活保護事務を担う県諏訪保健福祉事務所は、町との協議で「国は消費増税に伴い生活保護基準額を引き上げており、商品券配布は『二重取り』になる」と指摘。「商品券を受け取った場合、保護費を5千円減額することになる」と町側に伝えたという。
このため、町は生活保護世帯向けの商品券の回収を決定。大半は民生委員の手元にあったが、一部は配布を終えており、町職員が個別に訪ねて25日に回収した。
生活保護世帯への自治体の支援をめぐり、厚生労働省は2009年、灯油購入目的の商品券は8千円以下を条件に収入と認定しないと通知した。今回のケースは「購入対象の商品が限定されておらず、収入と認定するのが妥当」(社会援護局保護課)としている。
生活保護制度の改善を訴える「生活保護対策全国会議」代表幹事の尾藤広喜弁護士(京都市)は「最も支援を必要としている生活保護世帯だけに、町の支援が行き届かないことになる。公平性を重視するあまり、自治体の意欲を削ぐやり方はおかしい」と話している。