2014年7月3日10時48分
県内の自治体が行う市町村除染をめぐり、なかなか進まなかったり、実施後も住民の不安が残ったりするなど様々な問題が起きている。その原因の一つが「毎時0.23マイクロシーベルト」についての国や自治体、県民の考え方の違いだ。
国が個人の追加被曝(ひ・ばく)放射線量低減の長期目標としている年間1ミリシーベルトを毎時の空間線量に換算した数値だが、環境省は先月15日の福島、伊達、相馬、郡山の4市との勉強会で、「0.23は除染する地域を決める基準で、除染の目標ではない」と説明し、今月中旬にも今後の市町村除染の国の方針を示す、と明らかにした。除染を進める側は「0.23」をどうとらえるのか、4市の市長と環境省担当者に聞いた。
●目標値、国が示すべき
――福島市は、除染の目標を空間線量毎時0.23マイクロシーベルトにしている
除染費用を国費でまかなう汚染状況重点調査地域の指定に、国が使っている数字だ。現状で我々が示されているのは0.23という数字だけ。それを目標にせざるを得ないと思う。
――国は0.23は除染の目標ではないとしている
事実上、0.23は目標として使われているのではないか。「あれは除染の目標ではない」と言われても困るという気持ちはある。他に数字があるのか。市民の受け止めも事実上、0.23が除染の目標になっているということでは。
――福島市は4月、環境相に出した要望書で、空間線量ではなく個人線量などを踏まえた除染目標の考慮を求めた。目標の事実上の緩和を求めたということか
0.23というのは果たして危険ではないのか、毎時0.5マイクロなら危険なのか。人が受容できる線量は、ここまでなら安心だ、ということをはっきりさせて欲しい、ということだ。
――0.23の変更は求めるわけではないのか
市の目標として0.23を変えることはない。今の数字に何か問題があれば、国が専門家を集めてしっかり検討し、国民に対して説明するべきだと思う。我々には0.23について判断できる専門性はない。
――0.23以下まで除染を求める声は根強いか
一般的にはそうだ。ただ線量がある程度下がってきた。「もう(除染は)いいよ」「そこまでやる必要があるのか」という声もそれなりにあることも事実だ。
――除染よりは復興にお金を使った方がよいという意見も聞く
福島市においては除染はきっちりやる。もちろん、復興に向けた取り組みも併せてやらなければならない。除染か復興かではなく、両方。同時並行で進めるべきだ。
こばやし・かおる 中央大法学部卒。環境省東北地方環境事務所長などを経て、2013年12年から現職。
●福島市の除染目標
除染は、空間線量が毎時0.23マイクロシーベルト以上の地域を対象に実施。2011年10月から16年9月までの5年間を計画期間とし、将来的には0.23マイクロ以下を目標としている。
●毎時0.23マイクロシーベルトとは
東京電力福島第一原発事故による個人の被曝(ひ・ばく)を年1ミリシーベルトまで下げるのが国の長期目標だ。国は、年1ミリを空間線量に換算すると「毎時0.23マイクロシーベルト」になるとし、これより線量が高い地域の除染費用を負担する。多くの自治体は0.23以下に下げることを除染の目標にしているが、国は先月の福島市内での勉強会で「0.23は国費で除染する地域を決める基準で、これ以下に線量を下げるという除染目標ではない」と説明した。