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【社会】

戦争の歯止めになるのか 3要件 他国のため武力 「先制攻撃」

2014年7月3日 07時04分

 安倍晋三首相は、憲法解釈を変更し、他国を守る集団的自衛権の行使容認を決めた直後の記者会見で、武力行使には「明確な歯止めがある」と強調した。だが具体的な根拠は示さず、日本が戦争に巻き込まれる恐れは消えていない。共同通信社が行った全国緊急電話世論調査でも、歯止め策への懸念は七割に上り、前回六月調査よりも懸念の声は強まった。本紙の半田滋編集委員が一日にあった首相の記者会見を分かりやすく再検証した。

 Q 安倍首相は一日の記者会見で、五月十五日の会見と同じパネルを使いましたね。米軍の輸送艦に乗った日本人の母子が描かれていました。

 A 首相、お気に入りのようですね。一日も「自衛隊が米国の船を守れるようにする」と主張しましたが、以前の「まるわかり」で説明した通り、米軍は日本人を運んではくれません。日米ガイドラインには日本と米国がそれぞれ主体的に自国民を退避させると明記されています。

 Q では、なぜまた同じパネルを。

 A 「国民の命を守る」との訴えにぴったりと考えているのでしょう。高い支持率の首相にだれも意見できないのかもしれません。米軍を警護できるぐらいなら、なぜ自衛隊が直接運ばないのか不思議ですね。

 Q 安倍首相は自衛隊の創設、日米安保条約の改定、国連平和維持活動(PKO)への参加を挙げて、集団的自衛権の行使容認後も「平和国家の歩みは変わらない」と言いました。

 A 憲法の縛りの中で自衛隊を活用してきたから平和国家なのです。閣議決定と次に控えた法律の改定により、武力行使を目的として海外の戦争に自衛隊を派遣できるようになれば、平和国家の歩みから大きく逸脱していくのです。

 Q でも、安倍首相は「新三要件はこれまでの自衛権行使の三要件と変わらない」と言いましたよ。

 A 日本が攻撃された場合だけ武力行使する自衛隊と、日本は攻撃を受けていないのに他国のために武力行使する自衛隊。両者は別次元です。「専守防衛」と「先制攻撃」では天と地ほどの開きがあります。

 Q 安倍首相は「外国を守るため日本が戦争に巻き込まれるという誤解があるが、あり得ない」とはっきり言いました。

 A 攻撃を受けてもいない日本から攻撃を仕掛けるのです。その攻撃が「少しだけ」であっても、それで収まるかどうかを決めるのは、日本が攻撃をした相手国です。巻き込まれる事態は「あり得ない」と言って思考停止させているので、政府は何も対応策を考えていないのかもしれません。

 Q 「湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加することは決してない」と言っているから、遠方の戦争には参加しないのですね。

 A イラク戦争当時の小泉純一郎首相は「日米同盟は何より大事だ」と言って、自衛隊をイラクへ派遣しました。憲法の制約から人道支援に徹しましたが、日米同盟を強化するための集団的自衛権ですから、行使容認後に米国の派遣要請を断れるでしょうか。憲法九条という最強の防波堤を破壊すれば「戦争をする国・できる国」になるのは分かりきったことです。

<武力行使3要件> 従来の自衛権発動3要件に替わる。(1)日本への武力攻撃や密接な関係にある他国への武力攻撃が発生し、日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある(2)日本の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がない(3)必要最小限度の実力行使にとどまる−場合の「武力の行使」は憲法上許容されるとして、集団的自衛権の行使を容認した。

(東京新聞)

 

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