東北楽天監督代行交代 不可解な異例の人事
 東北楽天は佐藤監督代行に代わり、大久保2軍監督を新たな監督代行に据えた。リーグ最下位に沈んでいるとはいえ、直近の2カード連続で勝ち越すなど、チーム状況が徐々に上向き始めた中での交代劇には首をかしげざるを得ない。
 星野監督が休養に踏み切ったのは5月26日。監督代行に佐藤投手コーチを充てたことに、当時、球団は「星野監督とわれわれが話し合った総意」と強調した。
 その「総意」はわずか23試合の成績(9勝14敗)で崩れた。しかも交代理由が不可解だ。球団の安部井チーム統括本部長は「監督だけの責任ではないが、結果の勝負」と話す。しかし、指揮官を代えるだけで劇的に改善されないことは、球団首脳陣はよく分かっていたのではないか。
 サッカー界ではしばしばシーズン途中での監督交代劇が見られる。フォーメーションが多様で、指揮官の考え方によって攻撃的、守備的など戦術が大きく変わる。一方、野球はポジションが固定化し、監督の采配が及ぶ範囲は限定的で戦術の違いが見えにくい。だからこそ、プロ野球界でシーズン中の指揮官交代は異例の人事だ。
 今回の交代劇は1日のオリックス戦の逆転負けが引き金になったという。佐藤コーチの下で達成した、チーム2度目の3連勝(6月21〜27日)はこの1敗でかき消された形となった。
 安部井統括本部長は大久保2軍監督の抜てき人事を「以前からあったアイデア。監督の仕事は特殊なので(1、2軍で監督を)した人がいい。内部からなら自然」と説明する。だとすれば、なおさらふに落ちない。
 大久保氏の能力を決して否定しているのではない。1軍の田代打撃コーチ、仁村チーフコーチはいずれも監督の経験があり、2人のどちらかに指揮を委ねる選択の方がより「自然」に映る。
 球団は「プロ野球はファンあってのもの」と訴える。突然の人事がファンからどれほど納得を得られるか疑問だ。(解説=中村紳哉)
◎元に戻っただけ
<佐藤義則投手コーチの話>
 元のコーチに戻っただけ。球団の考えだから何とも言えない。(ここ数試合は)手応えはあった。選手はよくやってくれている。
◎選手ら「頑張って勝つだけ」
 2日のオリックス10回戦(京セラドーム大阪)を前に、東北楽天の大久保2軍監督が新たに1軍の監督代行に就任したが、選手たちは「自分のできることをやるだけ」と冷静だった。
 大久保監督代行はこの日、急きょ大阪入り。選手は練習前のミーティングで大久保監督代行の就任を知ったという。嶋は「個々に動揺はあるかもしれないが、一人一人何ができるかを考え直す良い機会だと思う」と前向きに受け止める。選手会長の藤田も「自分たちのやることをやればしっかり勝てると思う。監督代行が代わったからといって僕らが変えることはない」と話した。
 チームは星野監督休養後も借金生活が続く。「チーム状況がこうなので、僕たちは毎試合、精いっぱい頑張るだけ」とチーム最年長の斎藤。主将の松井稼は「(大久保監督代行になって)きょうが1戦目。全力で勝ちにいく。チームを良くするために僕たちはやるだけ」と巻き返しを誓う。
2014年07月03日木曜日