[画像]朝鮮総連中央本部(東京都千代田区)

朝鮮総連中央本部(東京都千代田区)の売却が、ニュースでよく報じられています。この施設は、そもそもどういう役割のもので、今どういう状況なのでしょうか?

朝鮮総連とは、正式名称は「在日本朝鮮人総連合会」といいます。朝鮮総連のサイトによると、結成は1955年。日本で暮らす朝鮮人たちの権益と生活を守るための活動などに取り組んでいます。日本と北朝鮮は国交を結んでいないため、大使館がありません。ですが、朝鮮総連は北朝鮮本国と密接に結びついていて、日本における北朝鮮の窓口のような役割を果たしてきました。実際、ビザや旅券の発行代理業務も行っており、いわば中央本部のビルは、北朝鮮の事実上の「大使館」のようなものです。朝鮮総連の広報担当者によると、在日朝鮮人が本国に渡航する際はもちろん、日本人が渡航する際も申請を受ける窓口となっています。その組織の運営は現在、日本国内の都道府県支部や諸団体から寄せられる会費・賛助金ですべて賄われているそうです。

ただ、日本国での朝鮮総連は、法人格を持たない団体に過ぎません。外務省の担当者は、朝鮮総連中央本部について「国交がないので、大使館ではない。それに尽きる。大使館ではない以上、外務省としてはお答えする立場にない。そもそも日本人の渡航自粛を求めているので、(渡航の窓口として)認めていない。黙認もしていない」と話します。

この中央本部ビルは、皇居に近い都心の一等地にあります。報道によると、ビルは地上10階地下2階、延べ床面積1万1730平方メートル。敷地面積は2390平方メートルです。今の建物は1986年に建てられ、耐用年数は残り約18年とされます。2階に大会議室があり、3~9階に事務室や応接室、和室。4階に食堂と「来賓食堂」。最上階の10階には、受付カウンター付きの応接室や縁側付きの和室もあるそうです。

では、その朝鮮総連の本部がどうして、売却されることになったのでしょうか?

新潮新書「朝鮮総連」(金賛汀著)によると、北朝鮮は1975年には、朝鮮総連に37億円の教育援助金を送るなど、総連の財政を支えていましたが、同国の経済がうまく機能しなくなり、その年をピークに年々減少。1986年には6.8億円にまで減ったといいます。一方で、日本の高度経済成長やバブル景気などで、在日の商工人たちは経済的に潤うようになりました。このため北朝鮮は、朝鮮総連を通じ、在日の商工人に対して事あるごとに献金を要求するようになりました。