STAP論文:ネイチャーが撤回 著者ら「複数の誤り」

毎日新聞 2014年07月02日 19時22分(最終更新 07月03日 00時25分)

STAP論文2本のうち、「アーティクル」と呼ばれる主論文の撤回を伝えるネイチャーのウェブサイト
STAP論文2本のうち、「アーティクル」と呼ばれる主論文の撤回を伝えるネイチャーのウェブサイト

 STAP細胞の論文不正問題で、英科学誌ネイチャーは2日、掲載した関連論文2本を3日号で撤回するとウェブサイトで発表した。「生物学の常識を覆す」として世界から注目された論文が、発表から5カ月で白紙に戻る。著者が執筆した撤回理由では、理化学研究所調査委員会が指摘した不正画像などの問題点に加え、細胞の遺伝子データやマウスの画像の取り違えなど5点の誤りを挙げ、「複数の誤りがあり、研究全体の信頼性を損なった」と説明している。

 問題の論文は、今年1月30日号に掲載されたSTAP細胞の性質や作製方法などを示した主論文「アーティクル」と、STAP細胞から作った増殖能力を持つSTAP幹細胞の性質などを分析した論文「レター」の2本。撤回理由は2本とも同文だった。

 理由では、両論文の「誤り」を謝罪した上で、STAP幹細胞の解析結果から「STAP幹細胞現象が間違いなく正しいと自信をもって言うことは難しい」と述べたが、STAP細胞自体の信頼性には言及しなかった。これは、小保方(おぼかた)晴子・理研研究ユニットリーダーや米ハーバード大のチャールズ・バカンティ教授らSTAP細胞の存在を強く主張している著者がいることや、理研で検証実験が進行中であることなどを考慮し、論文撤回の手続きを確実に進めるため著者間で調整したものとみられる。

 また、ネイチャーはSTAP細胞論文の掲載に至るまでの検証結果に関する論説記事も発表した。論文掲載の手続きに不備があったことを認め、論文の改ざん画像などを掲載前にチェックする回数を大幅に増やすなど対策強化を明らかにした。一方、不正論文を掲載した編集部の責任には触れず、論文掲載は原則として著者への信頼に基づいていることを強調。STAP細胞論文のような画像の流用などを編集者が事前に見つけることは難しいと主張し、「(掲載前に)致命的な問題があると見抜くことは難しかった」と釈明した。【八田浩輔】

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