集団的自衛権行使容認の閣議決定は、結論・筋書きありの歌舞伎
その閣議決定の直前、筋書きを狂わせかねない事件が29日午後1時ころ新宿駅南口で起きた。50代と思わしき男性が集団的自衛権の行使容認への動きに抗議し、東京の中心部の駅前で焼身自殺(幸い未遂に終わった)事件。 この人は集団的自衛権行使の危険性、憲法の制約などを明治の詩人・与謝野晶子の“君死にたもう事無かれ”の有名な詩を交え1時間近く拡声器で訴えたという。 集団的自衛権行使容認の憲法との整合性に疑念を抱く、教養のある人には違いなかった。 「国民が命をかけて抗議!?」と、安倍総理、山口代表らは一瞬冷やりとしただろう。
それだけに当然大きく報道されると思ったがNHKは一切無視。事件に一言も触れなかった。テレビ朝日が夕方5時のニュースで短く伝えたが肝心の集団的自衛権との関連をきちんと指摘しなかった。 朝日新聞も翌日の紙面では社会面で小さな扱い。在京マスコミでは僅かに駐日・東京新聞が集団的自衛権との関連を比較的詳しく報じた程度。 果たしてどの程度の国民が事件の本質を知り得たであろうか。 まるで政府与党の懸念を思わんばかりのように小さく、幾つかのメディアは事件の本質を歪める放送までしていた。
この事件報道に関する限り日本のマスコミの扱いに比べ、逆に海外メディアは、彼らが日本のマスコミであるかのように事の本質を正確に報じていた。
アルジャジーラ英語放送は、“平和憲法を変更し日本の軍隊の海外での軍事活動を可能に賞としている安倍総理に抗議”と報道。英BBCも同様の内容を報道。 NYタイムズ・ネット版は、“秩序ある日本では滅多に起きない恐ろしい光景”と事件の衝撃度を伝えた。
AP通信、フィナンシャル・タイムズ、AFP、ロシア国営テレビ、中国新華社など各国のメディアの大半は子の自殺未遂事件を報じ、中国CCTVは速報で伝えている。
スイスのNZZ「ノイエ・ツューリッヒャー・ツァイトゥング」紙とドイツのDie Welt「ヴェルト」紙は大メディア、特にNHKが報じない問題点を指摘していた。
NZZ紙は、“NHKはじめ大半の大手メディアは事件を報じず。NHKが政府の宣伝機関となっていることは長期的に大きな問題となっている”。
ヴェルト紙は、“日本の再軍国化に抗議の焼身自殺”の記事で“(政治的な)抗議の焼身自殺は日本では極めて稀。それなのに公共放送NHKは主要ニュース時間夕方7時のニュースで報道せず。事件から5時間も経って(十分取材できるのに)いるのにも拘わらず。NHKの公正中立性は最近疑念の的となっている。特に半年前、安倍総理と個人的によい人物が会長に任命されて以来のことだ”。と事実を簡潔に指摘し、ドイツやスイスの読者に日本のメディアと民主主義の問題点を考えさせる記事にしている。
こういう論調は本来、日本のマスコミに表れて然るべきものだ。
集団的自衛権行使容認の閣議決定の後、安倍政権はそれに基づき、兎に角自衛隊を戦場に出したいと関連法律の整備を急ぐだろう。国民多数が反対しているからと言って、選挙で国会の過半数を大きく上回る議席を駆り立ててどんどん法律を作って行くだろう。安倍政権にとって憲法の規定なんて関係ない。 繰り返すが、今回のような集団的自衛権行使容認の閣議決定は国民の声を無視した、民主主義の否定の一典型だ。
安倍政権の暴走を無批判に、精々形ばかり批判を交えて報道し続ける大メディア。 民主主義社会が健全に機能し、政権の言動と本質を国民にきちんと情報提供させるためにも大メディアを監視し、大メディア、特にNHKに抗議の声を上げることも重要だ。
(大貫康雄)
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