庵野秀明、貞本義行、山賀博之の発言集、作品に関する資料などを掲載
『機動戦士ガンダム F-91』特集に掲載されたインタビュー。
「ふしぎの海のナディア」の総監督である庵野秀明さんは、アニメファン時代も、プロになったいまも、富野さんの作品の熱烈なファンなのだそうだ。一昨年の「逆襲のシャア」も、ふんい気に酔いしれることができる、たいへんすきな作品だという。
「富野さんは、自分のいいたいことや、やりたいことがしっかりあって、しかもお客さんに見せることもちゃんと計算して作れるひとです。何をいいたいのかわからないままフィルムを作ってしまうエセ演出家が多いなか、数少ない本当の演出家だと思います」
庵野さんは、本誌4月号でも「富野さんは作品のなかに自分をさらけ出しているところが、すごい」という意味の発言をしている。たとえば、前ページまでのインタビューにあるように富野さんは、社会、時代、文明に関する考えや人生観などをオブラートに包まず、かなり直接に作品に込める。そのため、作品自体に富野さん本人がにじみでて、生々しいタッチのものになることが多い。そんなところが富野さんらしく、また魅力のひとつであるという。
「富野さんの作品は表現が露骨なんです。たとえば『無敵鋼人ダイターン3』('78年)みたいに、コメディふうに作っても、結局、本音が出てしまう。あの作品の底にはすごく暗いものを感じますね」
また、ロボットアニメという子ども向けだったジャンルのなかで、あらがって新しいものを作ろうとしていた姿勢にも魅かれたという。
「最初に意識して富野さんの作品を見たのが『無敵超人ザンボット3』('77年)なんです。いままでのロボットアニメとはちがうことをやろうとしている、そのこころざしにまず魅かれました。『伝説巨神イデオン』('80年)では、ロボットアニメで、<人の命のはじまり> を描こうとした。これは、スゴイ。富野という人は、そこまで描こうとしているのかと驚きました。そういうところもほかの人にはないものだと思います」
たがいに理解できず憎しみあい、戦ってしまう人間たち、ドロドロしたエゴなど、富野さんの作品では強烈に人間の否定的な部分を描くことが多いようだが。
「いえ、そうではなくて、まず否定的な部分を全部描いて、それをふまえて人間を肯定しようとしているんです。富野さんは、人類全体を信じていますよ。たとえ、どんなにいまの人間がだめでも、いずれよくなるにちがいないと信じて作っているんだと思います。ニュータイプ論というのも、若い者を信用しているということでしょう。そのへんは見ていて気持ちいいです」
それでは、「F-91」に対しては、どんな期待をしているのだろうか。
「鉄仮面というのがいいですね。一度、リアル路線にいった『ガンダム』に、こういう昔のロボットアニメに近いものを出そうというのが、いいと思います。それから、テーマは家族だそうですが、富野さんは最初の(作家性を発揮した)作品が『ザンボット3』だったとすると、あれもテーマは家族でしたから、原点に戻ったことになります。その意味でも、期待できるものと思います」
映画「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」('88年)はファンクラブを作ろうと思ったくらいすきな作品だそうだ。
「1作目でかっこよかったシャアが、ああいうふうに年をとったというのもいいですね」
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