安倍晋三内閣は1日夕、集団的自衛権の行使を可能とする憲法解釈の変更を閣議決定する。これにより、集団的自衛権を「保有すれども行使できず」としてきた不自然な憲法解釈が是正される。日本を取り巻く安全保障情勢が激変するなか、国の存立と国民の生命財産を守る実効ある手立てが講じられる。世論調査でも、6割超が理解を示した。
閣議決定に先立ち、自民、公明両党は同日午前、閣議決定案に正式合意した。同案では、わが国や「わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃」が発生し、国の存立や国民の権利が「根底から覆される明白な危険」がある場合、必要最小限度の武力を行使することは「自衛のための措置として、憲法上許容される」としている。
これまでは例えば、在韓米軍が駐留する朝鮮半島で有事が発生した場合、放置すれば日本に重大な影響を及ぼすにもかかわらず、自衛隊は米軍に武器・弾薬を提供することもできなかった。こうした異常事態が解消されるほか、国連平和維持活動(PKO)に参加する自衛隊が、武装集団に襲われている遠方の他国部隊を救出する「駆けつけ警護」も可能となる。
従来の政府解釈では「自衛隊のための必要最小限度の範囲」を判断する政策論を法律論にすり替え、集団的自衛権行使はその範囲を超えると断定した。しかし、憲法9条は集団的自衛権の行使を禁止していないとする学説は根強くあった。
ここにきて政府が憲法解釈見直しに踏み切ったのは、海洋覇権を目指す中国の軍事力が急拡大する一方、米国の国力に陰りが見え、日本を含む米国の同盟国に応分の負担を求められているからだ。安倍首相は「国民の生命と平和な暮らしを守るのが首相の責任だ。行政府が憲法を適正に解釈することは当然で必要なことだ」と訴えてきた。
安倍首相の説得を反映してか、産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が6月28、29両日に実施した合同世論調査では、集団的自衛権について「全面的に使えるようにすべきだ」が11・1%、「必要最小限度で使えるようにすべきだ」が52・6%となり、合わせて63・7%が行使を容認し、国民の理解も広がっている。