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ニューズウィーク日本版への抗議

共同代表のコメント(敬称略・五十音順)

上野千鶴子(東京大学名誉教授)

卑劣なヘイトスピーチに抗議する動きを、「けんか両成敗」のような一見「中立的」な立場で論じるのは、卑劣な行為に対する抗議を、それと同等の「卑劣な」レベルに落としこむための常套手段だ。
メディアの「中立性」の仮面に隠れたこのような論じ方は、卑劣そのものというべきだ。

宇都宮健児(前日弁連会長)

ニューズウィーク日本版(2014.6・24号)における「『反差別』という差別が暴走する」というタイトルでの深田政彦氏の記事は、「差別する側」と「差別される側」、「いじめる側」と「いじめられる側」を、同一視して論じるきわめて悪質な記事である。

北原みのり(コラムニスト・ラブピースクラブ代表)

差別は悪いことだけど、だからと言って、汚い言葉でケンカしちゃいけないよ。
まさか、ニューズウィークがそんなこと大威張りで書く時代になるとは思いませんでした。あんたは学級委員か。
大真面目に、そんなことをわざわざ言いたいならば、取材趣旨をきちんと説明した上で取材すべきでしょ。取材趣旨を伝えずにご自分の幼い正義感(?)を振り回すのは、卑怯、って言うんですよ。
ニューズウィークの記者のような、卑怯を辞さない幼稚な正義感と、痛みを感じられない弱さがジャーナリズム側にも根付いてしまっているとしたら、この国のジャーナリズムの未来はないと思う。

佐高信(評論家)

「ニューズウィーク」も落ちたもの。
問題の出発点がわからない こんな記事を載せるとは!

若森資朗(一般社団法人 協同センター・東京)

「ニューズウィーク・日本版 6・24」の“「反差別」という差別が暴走する”の記事は、 在特会とカウンターを同列にして捉え、カウンターがまさってきていることを悪いことのように書いている。
これはあまりにもことの本質を見ていない、いや見ることが出来ない記者の記事だ。
ましてやこの記事が、カウンターを落とし込めるために意図的に書かれたとしたら、それは犯罪的でさえある。
聞くに堪えないヘイトスピーチを、公然と激しく浴びせかけられ、そのためマイノリティの心が傷つくことに思いをはせることが出来ない、想像力のない人間のすることだ。
差別者、差別団体に対抗することは、差別でも何でもない。
理不尽で、到底許すことの出来ない行動に対する正当な糾弾活動だ。
その点をしっかりと理解して、記事にすべきだ。
マスコミの劣化に歯止めをかけ、マスコミ本来の役割を取りもどす立場になることを望む。

和田春樹(歴史家・東京大学名誉教授)

ヘイトスピーチについて書くなら、ヘイトスピーチ側がどんなことを言って、何をしてきたかをひとまず説明すべきです。ところが、この記事を読むと、ヘイトスピーチ側のひどさがまったくわかりません。私は法的規制については、それに対する懸念も理解するので、まずは現行法での警察の制止をもとめるべきで、基本的には市民レベルの批判行動で対処すべきだと思っています。ですから、ヘイトスピーチに対するカウンター行動の出現とその努力には敬意を表しています。この記事によると、カウンター派のC.R.A.C.や男組はむしろヘイトスピーチ派より暴力的で、「死ね」「死ね」と連呼しているような集団で、のりこえねっと共同代表の辛淑玉さんもおなじく非理性的な人間であるかのように紹介しているのは、あまりに不当だと思います。批判があるなら、批判をするのは、当然で、カウンター派は耳を傾けるべきですが、反ヘイトスピーチ派を攻撃するだけの論文では、意味はありません。著者は日本のヘイトスピーチは許容されるべき市民社会内の一つの意見だとでもいいたいのでしょうか。納得できません。

Newsweek LLC への抗議(メール)

日本語原文

Newsweek LLC 御中
要請書


 私たちは、ヘイトスピーチとレイシズムを乗り越える国際ネットワーク(略称のりこえねっと)と言い、昨年9月に日本で結成された団体です。
 今日本には「朝鮮人殺せ!」「韓国人女性は皆売春婦だ」というような、特定の民族に対するヘイトスピーチが横行しています。このような状況をただすために、私たちは活動を始めました。私たちの団体には、元内閣総理大臣や大学教授をはじめ、各界の著名人が賛同して共同代表になり、多くの日本の市民の注目を集めています。新聞・雑誌・テレビなどでもその活動を取り上げられています。海外でも、ブルームバーグやBBCを初め、アメリカ・韓国・フランス・ドイツの新聞・テレビ局などでも、すばらしい活動であると紹介されました。
 先日、御社のニューズウィーク日本版2014年6月24日号における深田政彦氏執筆の記事の取材に際しても、私たちは人種差別を許さない御社の姿勢を考慮し、取材を受けたところです。しかし実際の記事は、私たちの予期したものと違い、一見中立を装いながら、その実、私たちの活動を中傷し、在日特権を許さない市民の会(略称在特会)をはじめとする排外主義団体を免罪するものになっています。私たちは深く傷つきました。そしてこの記事の不正義に対し、抗議声明を発しました。
全文は、こちら(日本語) にあります。
 ニューズウィーク日本版6月24日号 深田政彦氏執筆記事「『反差別』という差別が暴走する」は、こちら(英文) を参照してください。
 この記事は、人種差別と闘う御社のイメージを傷つけるものと考えます。この記事に対し、日本支社が謝罪と訂正するよう、御社が毅然とした対応をとるよう強く求めます。

2014年6月24日
のりこえねっと ヘイトスピーチとレイシズムを乗り越える国際ネットワーク


※のりこえねっとでは、この記事について、ニューズウィーク日本版編集部に公開討論を申し入れています。討論については、応じていただくよう、御社の対応をお願いします。


English

The International Network to Overcome Hate Speech and Racism
2-7-1-311, Okubo, Shinjuku,
Tokyo, JAPAN 169-0072

June 24, 2014

Newsweek LLC
7 Hanover Square, 5th Floor
New York, NY 10004

Request To Newsweek LLC

We are members of The International Network to Overcome Hate Speech and Racism (abbr. NORIKOENET). We founded this organization last September in Japan.

Today in Japan, so many hate speeches toward certain nations and ethnicities are seen such as “Kill Koreans” ”All Korean women are bitches”. We started our activities to normalize such situations. Many citizens sympathize our activities including influential figures in each field, such as former Prime Minister and university professors. Many of these become co-representatives of our organization to which many Japanese citizens pay attention. Japanese newspapers, magazines and TVs introduce our activities. Not only domestic ones but also international, American, Korean, French, German presses and TVs such as Bloomberg and BBC reported our activities as meaningful ones.

Mr. Masahiko Fukada from Newsweek Japan interviewed us and wrote his article in Newsweek Japan edition June 24 issue. Because we respect your resolute attitudes towards racial discrimination, we accepted his interview. Instead of our respect to your organization, superficially he took neutral position, actually Mr. Fukada slandered our activities and justified activities of The Citizens Group Not Forgiving Special Privileges for Koreans in Japan (abbr. Zaitokukai) and other organizations which conduct discriminating activities. We are deeply hurt by this article. We wrote the protest statement in public. Here below is the URL of the statement. http://www.norikoenet.org/protest_against_newsweek.html(in Japanese)

Please refer to the article Mr. Masahiko Fukada, “Discrimination in the name of "anti-discrimination" goes berserk” Newsweek Japan Edition June 24 Issue.(in English)
We are afraid this article will damage your image of fighting against racial discrimination. We strongly request your resolute action to apologize for and correct this article. This means Newsweek Japan apologize and correct the article.

The International Network to Overcome Hate Speech and Racism

* We request the editorial department of Newsweek Japan to have public discussion about this article. We want your company to accept our request.

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ニューズウィーク日本版への抗議声明文

ニューズウィーク日本版 2014年6月24日号
深田政彦氏執筆「『反ヘイト』という名のヘイト」記事に抗議します。


 6月17日発売のニューズウィーク6月24日号における深田政彦氏執筆「『反ヘイト 』という名のヘイト」は、レイシズム(人種差別・民族差別)、ヘイトスピーチと闘う私たちには、許せない記事であり、抗議する。以下具体的に説明する。

 まず、第一に記事の取材意図を隠し、紹介者が「活動を高く評価している」といって、接近してきた取材手法に問題があると考える。私たちは自分たちだけが正しいとだけはいうつもりはないし、書き手が自由に書く権利は保障されなければならない。しかし、何の権力も持たない市民団体や活動団体を取材する際には、誠意がなくてはならない。すべてボランティアで活動している私たちは、自分の時間をやりくりし、資料も用意して説明したのに、取材意図もきちんと説明せずに、被取材者の期待と180度反対の立場で書くことは、取材者の倫理として問題である。その上で、「お話は記事の切り口や方向性を決めるのに重要な情報」となり、「コメント部分も録音に基づいておりますのでご安心ください」というお礼メールの文章は、“録音に基づいているから、名誉毀損で訴えるなよ”という恫喝である。このような逃げ道をつくっておく記事がどのようなものなのかは、想像に難くない。

 第二に、全く事実内容をねじ曲げている部分があることを抗議する。この短い記事の間でもいくつもあるが、全て指摘しておくと切りがないので、一つだけ指摘する。西川口でのヘイトデモにおける逮捕事件に関し、「(ヘイトデモに)参加しようとした42歳の男性が反ヘイト活動家の38歳の男性に顔を殴られ」と書かれている。実際は、「デモに参加しないように口頭で抗議をしている最中に興奮したUが突然暴れだしたため、制止に入ったMともみ合う形となり、その際に制止しようと無意識的にUの顔を押さえたことにより発生した」ということが事実である。この記載は、「男組を名乗る10人組に絡まれ集団暴行を受けたものですが、そのうちの一人(M)が格闘家であり男性の顔面、目の近辺を執拗に殴り続け頬骨骨折の重傷を負わせた」という桜井誠在日特権を許さない市民の会(在特会)会長のデマと同様の立場のものである。本人が否認しているという新聞記事もあるのに、全く無視していることも意図を感じる書き方である。

 第三に、「『反差別』という差別が暴走する」(見出しより)という一方的な視点からの記述になっていることである。ヘイトスピーチにはわずか一行のみ「容認しない」とだけ書き、あとは抗議する市民を揶揄し、暴力的だというレッテルばりするために言を費やしている上に、悪意を感じさせる書き方に終始する。C.R.A.C.の野間氏は「組織」をしばき隊に「衣替え」し、怒りの感情を「利用」。男組は「傘下」に差別反対東京アクションを設立する。辛淑玉のりこえねっと共同代表は「まくしたて」、「一般市民の恐怖をあおる」。この記事は「在特会もカウンターもどっちもどっち」論よりも明らかにヘイトスピーチの側に立っていることは、ヘイトデモ参加者が「反ヘイト団体からの暴力を恐れて」おり、「攻防戦の結果、在特会の勢いは既に失速。デモや集会は中止になり、告知すらままならない」と同情的に書くことにも現れており、許すわけにはいかない。

 第四に、決定的な問題点は、長年にわたるヘイトデモ・ヘイトスピーチによって傷つき、苦しんでいる当事者については、全く触れられていないことだ。レイシストの街宣に抗議しようものなら、女性でも高齢者でも障害者でも罵倒して攻撃する姿は枚挙に暇がなかった。深田氏も参加したと思われる6月11日の『のりこえシンポ 2014.6.11』でも、「お散歩」と称した新大久保コリアンタウンでの韓流ショップへの嫌がらせ映像が上映された。このような恐ろしい状況を、誰が阻止しえたのだろうか。京都朝鮮学校襲撃事件で、授業中に街宣を学校にかけ、子ども達がおびえ苦しんでいる時に警察は動いたのだろうか。この時警察は被害届を8時間以上にわたり受取りを拒絶したのだった。このような被害の実態をまるで無視した記事には疑問を感じざるを得ない。

 第五に、一方的に法規制議論を持ち出して誹謗している。「反ヘイト団体の糾弾対象は…『表現の自由』とへ拡大」と捏造しているが、深田氏は法規制には疑問を投げかけているようである。またアメリカでは法規制がないと深田氏は指摘しているが、差別に敏感な同国では、黒人差別発言をしたNBAのオーナーが永久追放され、罰金2億円というような社会的制裁を受ける社会である。この点を触れない議論は全くのミスリードである。

 この間ニューズウィーク日本版は、嫌韓記事を掲載し、問題のある雑誌となっていた。この記事は、それらの記事と同様に一見中立を装いながら、その実、在特会をはじめとする排外主義団体にすりよっているものになっている。私たちはこのような記事では、決してヘイトスピーチやヘイトクライムがなくならないことを指摘しておく。深田氏ならびにニューズウィーク編集部は「議論を重ねる国」をめざしているようだが、議論を重ねているうちに、在特会の会員は30倍にも増え、21世紀では考えられないヘイトスピーチが氾濫する国になった。

 私たちは、ヘイトスピーチ・ヘイトクライム、レイシズムが日本から無くなるまで、行動を続ける。被害を受けている当事者自身の尊厳をかけて、当事者との連帯をかけて、行動を続けることを表明する。

2014年6月19日
ヘイトスピーチとレイシズムを乗り越える国際ネットワーク


※のりこえねっとでは、この記事について、ニューズウィーク日本版編集部に公開討論を申し入れた。討論については、のりこえねっとTVで放送を予定している。詳細が決まったらホームページ等で告知するので、ご注目いただきたい。

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