20万円宇宙葬:10月に初打ち上げ 遺灰、4割が日本人

毎日新聞 2014年07月02日 18時43分(最終更新 07月02日 21時01分)

「宇宙を技術者や科学者だけでなく一般の人も使えるようにしたい」と語るエリジウムスペース社のトマ・シベ最高経営責任者。手に持つのは、遺灰を入れるカプセル=平野美紀撮影
「宇宙を技術者や科学者だけでなく一般の人も使えるようにしたい」と語るエリジウムスペース社のトマ・シベ最高経営責任者。手に持つのは、遺灰を入れるカプセル=平野美紀撮影
遺灰を入れる1センチ角のアルミニウム合金製のカプセル(右)=平野美紀撮影
遺灰を入れる1センチ角のアルミニウム合金製のカプセル(右)=平野美紀撮影

 故人の遺灰をカプセルに詰め、宇宙へ打ち上げる「宇宙葬」。1990ドル(約20万円)という格安料金でサービスを始めた米ベンチャー「エリジウムスペース」(本社・サンフランシスコ)のトマ・シベ最高経営責任者(CEO)が来日し、初の打ち上げを10月に実施する計画を明らかにした。50〜100人程度の遺灰が宇宙へ旅立つ見通しで、約4割は日本人だという。

 世界初の宇宙葬は1997年、米セレスティス社が実施した。宇宙を舞台にしたテレビドラマ「スター・トレック」の生みの親、ジーン・ローデンベリー氏ら24人の遺灰が、ロケットで軌道上に打ち上げられた。これまでに約600人が宇宙へ旅立ったとみられる。

 エリジウムスペースは、米航空宇宙局(NASA)の技術者だったシベ氏が2013年3月に起業した。他の商用・科学衛星に遺灰カプセルを乗せて打ち上げる「相乗り」のため、先行他社の半額以下という低価格が強みだ。日本でも同年秋からビジネスを始めた。生前予約は受けないため、現在は遺族からの申し込みに限られる。

 遺灰は1センチ角のアルミニウム合金製の容器に入れる。容器を乗せた人工衛星は米の民間ロケットで打ち上げられる。初打ち上げ分はいったん国際宇宙ステーションに運んだ後放出。高度350〜400キロの低軌道を数カ月〜1年程度周回し、最後は大気圏に突入して燃え尽きる。

 カプセル内のものは変質せず、他の人工衛星に影響を与えないことが条件だ。このため、火葬文化がある米国と日本を最初のマーケットに選んだ。米国では年間約250万人が亡くなり、火葬は約4割。一方、日本は年間死者数約120万人のほとんどが火葬され、米国に匹敵する市場という。

 シベCEOは「もともと宇宙は、詩的で美しい場所。高額な宇宙旅行は無理でも、宇宙葬なら多くの人の手が届く。残された人が星空を見上げて故人をしのぶのはとてもロマンティック」と話す。来年以降も、年に1回以上の打ち上げを予定している。

 単身者の増加や超高齢社会の到来で、葬儀や墓のあり方が多様化している。地球を見ながら宇宙空間を漂った後、「流れ星」となって消えるのも悪くなさそうだ。【平野美紀/デジタル報道センター】

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