南の島のダーハの奇跡 ~真夏の沖縄ナンパ旅 1日目~







「人間が想像できることは、人間が必ず実現できる」

ジュール・ガブリエル・ヴェルヌ 






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「asapen、くれぐれもオンリーワン中毒にはなるなよ」
「ならないよ。安◯奈美恵にでも出会わない限りね」



強い日差しと暖かい風を受けながら、2人のサラリーマンが那覇空港に降り立った。3日分の荷物を抱え、雑談を交わしながら空港を移動する。我々の願いが通じたのか、この日は清々しいほどの晴天だった。日差しが眩しく、遠くから降り注いでいるように感じた。旅の初日にふさわしい天候だった。


プロジェクト六本木が発足して10ヶ月。プロジェクトメンバーであるasapenとケチャは、7日間のクラブナンパノック7日間のストリートナンパノック、 海ナンパを経験した。次にこなすべきナンパは?そう、旅ナンパである。旅ナンパは、ナンパの総合格闘技だ。 クラブナンパの「芋洗坂4STEP理論」。ストリートナンパの「PRストリートナンパ攻略メソッド」。海ナンパの「海ナンパ4STEP理論」。乱のための「4STEPハリケーン」 。全ての技術を駆使して相手と戦う。プロジェクト期間を残すところ2ヶ月のこの時期、今まで構築してきたナンパ理論の再現性を確かめるためには、沖縄旅ナンパは2人にとって絶好の機会であった。


ナンパは準備が8割である。旅ナンパについても例外ではない。出発の前に沢山の情報を集めた。沖縄について知っているナンパ師に情報を頂いた。互いに多忙な生活の中ミーティングを繰り返し、目標を決め、戦略を作り上げ、ルーティーンを考案した。


旅の目標と戦略は単純かつ明快だ。期間は3日間。目標は2人で10即。昼間や夕方は海やショッピングモールでナンパし、夜はクラブでナンパをする。1日1人組ずつ、乱を仕掛ける。4即、4即、2即。合計、10即。これが我々の旅の指標となる。


東京から那覇までの機内。2人はPCを開き、旅の戦略とルーティーンの最終確認を行った。ひと通りそれが終わると、ケチャはすやすやと眠り始めた。一方のasapenは全く眠らなかった。神経質な顔付きで戦略とルーティーンの確認を続けていた。いつもの風景だった。ケチャはおおまかな戦略を共有できれば、あとは気にしない。天性のナンパの才能を駆使して、当たり前のように奇跡を起こしながら、凄まじい成果を生み出していく。


一方のasapenは戦術から詳細のトークまで、隙間なく構築していく。恋愛に関する天性の才能が無く、アドリブが効かないことは、とうの昔から認めている。その弱点をカバーするために、国内外問わずあらゆるナンパ理論を研究し、実践でなめらかに作動するまで反復練習を重ねてきた。となりで寝ている魅力的なモテる男と同じように振る舞えるようになるまで、それらを実践し身につけてきた。


一見同じスタイルのナンパ師に見えるが、2人のバックボーンは全く違っていた。それゆえに、互いに互いを尊敬し合えるコンビが生まれた。asapenは、となりで百万ドルの笑顔で眠る天才とコンビを組んで旅ナンパが出来る事を、誇りに感じていた。3泊4日の沖縄旅ナンパ。楽しみで仕方がなかった。眠れるはずがなかった。


空港でレンタカーを借りて、ホテルまで運転した。ホテルにチェックインし、それぞれが予約した部屋に向かった。ひと通り荷物を展開した後、シャワーを浴び、服を着替えた。今日はこれから買い出しと同時に国際通りでナンパし、深夜にクラブへ行く。テーブルと椅子の位置を動かし、PCの設定を行っている所にケチャが部屋に訪れた。準備は完了した。ホテルの目の前は国際通りだ。2人は部屋を出て。エレベーターを1Fまで降りた。ホテルのロビー、出口に通じるドアの近くで、2人は立ち止まった。互いに目を合わせ、がっちりと握手をした。歩を進めた。ホテルの自動ドアが開いた。



さあ、南の島のゲームの始まりだ。




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[国際通り]
沖縄の那覇市にある繁華街。 沖縄県警、県庁、市役所の所在地。約1.6kmの通りで、1日の歩行者数は約2万人。沖縄を楽しむためには不可欠な観光スポット。70%をみやげ屋が占める。






19:40 


那覇市の国際通りは多くの人で賑わっていた。ファミリー層と若者が入り交じっていた。そして、多数のキャッチがいた。新宿や渋谷に比べれば圧倒的に人は少ないが、ナンパをするには十分な人数であると感じた。


初の沖縄ナンパへの意気込みをもう1度入れようと、柔軟体操でもしようかとasapenが身体をひねっている間に、ケチャが颯爽と歩き出した。視線をその方向に向けた。2人組のターゲット。直ぐに先を行くケチャを追いかけた。ゲームの始まりはいつも突然だ。



「やあ。パーティーでもしていたのかい?」



え?という表情をする2人組。おいケチャ、どういうことだ。asapenは額に手をあてた。オープナーはヤンバル・オープナーでいこうと決めたじゃないか。目線を上げてケチャを見た。そして、彼女たちの服装と持ち物を見た。はっとした。ケチャは正しかった。ケチャが幾つかの質問を彼女たちに投げかけた。左側にいる丸顔の彼女が答えた。


「これ、『かりゆし』っていうの。夏の間は、これが会社のドレスコードなの」



彼女たちは銀行員で働くOLだった。2人とも、可愛らしいアロハシャツのようなものを着ていた。「それが会社の正装だとは思わないよ」そう言いながら、ケチャが笑いかけた。彼女たちも、「そうよね」といいながら、可愛い笑みを浮かべた。asapenはひとり呆気にとられていた。ニューヨークで開発されたNeil Straussのパーティーオープナーは、遠く太平洋を越えた南国の島沖縄でも、正常に機能したのだ。アメリカのセダクション・テクニックが国境を越えた瞬間を目の当たりにしたことにasapenは感動を覚えていた。プレイヤーによれば、どんなオープナーも状況に合わせて上手く機能させることが出来るのだ。


しばらく並行トークで雑談をした後、ウォール・ブロッキングを使いビタ止めをした。沖縄の地元の子。近辺にいい飲み屋が無いか聞くと、丁寧に教えてくれた。しかし、ケチャとasapenはすぐに異変に気付いた。違和感を感じながらも、淡々とゲームを進めていった。飲み打診は失敗した。かろうじてケチャのナンバークローズが成功した。彼女たちは自宅に向かうための車を取りに、駐車場へと消えていった。


国際通りには、買い出しに必要なものが揃う店は無かった。サージングを暫くして気付いたことは、人は確かにいるが、ターゲットとなる女性2人組は殆ど確認できないことだった。すぐに作戦を変更することにした。車で買い出しに行き、ショッピングモールでのナンパを実行する。我々はホテルの駐車場へと戻り、車を出した。




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[MEGAドン・キホーテ宜野湾店]


http://www.donki.com/search/shop_detail.php?st_store_id=302



21:00 宜野湾ドン・キホーテ



車を北に運転し、宜野湾市にあるドン・キホーテに到着した。「地元の子をナンパするならば、ドンキやサンエーのようなショッピングモールが良い」沖縄ナンパ経験のある、 ワンダレさんhttps://twitter.com/wandare0729 が教えてくれた情報だった。我々は買い出しも出来るドンキに、サージングも兼ねて向かうことにした。


とても広い駐車場だった。車を止め入口付近へと向かった。店から出てくるターゲットを発見した。我々はすかさず声をかけた。



「ねえ、ちょっと教えて欲しいことがあるのだけど」



20才くらいのラフな格好の金髪ギャル2人。彼女たちは突然の声掛けに驚いたあと、こちらを確認し、そして目線を落として去って行こうとした。まさかのガンシカだった。「那覇市のクラブでいいところを知らない?」ケチャが粘った。「イエローがいいんじゃない?」そう答えて、彼女たちは自分達の車に向かって、直線的に歩いて行った。那覇にそのような名前のクラブがあると聞いたことはなかった。


2組目。同じく出口付近で声掛けた。レベルは7と5。7は小顔で、目が大きく、とてもかわいい顔立ちをしていた。オープンに成功し、入口から少し離れたところへと移動して和みをした。2人とも沖縄の田舎の友達だった。5は現在も沖縄に住んでいるが、7は関西在住だった。今は沖縄に帰省したタイミングだった。暫く和んでから電話番号を聞いたが、拒否された。ラインのみを獲得し、滞在中に遊ぶ約束を取り付けた。


ようやく店内へと入った。ケチャと店内サージングを開始。暫くして、ケチャと目を合わせた。悪くなかった。ここはターゲットに溢れている。そして、その層は20~23歳くらいの2人組。ここはメインの戦場になるかもしれない。その時はそう思った。



決して1箇所にとどまらずに、流しながらナンパをする。店の商品を利用して自然な形で声をかける。店ナンパは派手には動けない。しかし、トークのネタは揃っている。何を話題にすればいいか明確だからだ。


「流石に、そのハンドルはいかつすぎるでしょう」


車用品コーナーで、しゃがんでハンドルを物色している女の子2人に声をかけた。最初はとても驚いていたが、こちらの情報を開示するとすぐに打ち解けた。彼女たちも沖縄の田舎の方に住んでいる子たちであった。クラブのことを聞いた。あまり那覇にはいかないの。彼女たちはそう答えた。明日か明後日に飲みに行こう、そう提案し、番ゲをして放流した。


その後、食品コーナーにいたスウェット姿の2人組と、コスメコーナーにいたギャル2人組に声を掛けた。反応は悪くないが、アポを確定することはできなかった。皆、那覇ではなく沖縄の田舎(北の方)に住んでいる子たちであった。


22:00 我々は買い出しを終わらせ、荷物を車に詰め込み、ホテルまで戻った。道中、ケチャがasapenに向かって言った。



「気づいたことがある」
「何だ?」
「彼女たちを、皆オープンできた。会話も長時間することが出来た。それなのに」



「IOIを、全く感じられない」



頷いた。同意だった。ここでは歌舞伎町のドン・キホーテでされるようなガンシカは殆ど無かった。彼女たちは、親切丁寧に我々の問いに答えてくれた。しかし、どこかよそよそしかった。彼女たちの優しさは、旅行者に対して誰もが親切に振舞うような、義務に近い優しさであった。我々個人に対するIOIは殆ど無いように感じた。


彼女たちはすっぴんの子が多かった。何か目的があって来ているわけではなく、田舎から車でドン・キホーテまで軽く遊びに来ている、という感覚だった。出会いを意識し、しっかりと化粧と服装をキメて訪れる都心の女の子とはわけが違った。場所によってターゲットの属性は大きく変化する。宜野湾のドン・キホーテは番ゲをし後日準即をするには適しているかもしれないが、その日に即、それも2人同時の「乱」を決めるには適した場所ではなかった。


車内で議論をしているうちに、ホテルに到着した。部屋に戻り、買ったシャンパンや紙コップ、割り箸を準備した。まだ体力は有り余っていた。セッティングが終わると我々はホテルを出て、休むこと無く国際通りへと向かった。




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[UNDER GROUND GOLD]
国際通り近く、県庁前駅から徒歩2〜3分の場所にあるクラブ。収容人数100名。音楽:オールジャンル。エントランス:男性2000円 女性1000円(24時以降1500円) 住所:沖縄県那覇市松山1-34-3 カクテルプラザビル B1
http://www.musu-b.com/shop4315/




23:00 

ホテルから10分ほど歩き、松山付近にあるクラブ、「アンダーグラウンド」へと向かった。入口付近に到着した。クラブに入る前に、周囲にいる人の状況を確認した。3~4人の男性のグループが入り口でたむろしていた。5分後。女性2人が店内に入って行った。服装はB系だった。六本木でいうところのジュマンジと同じ傾向だろうか(参照:10点満点の女 ~六本木連続クラブノック4日目~。とにかく、人で溢れてはなさそうだった。虎穴に入らずんば虎児を得ず。入らなければ始まらない。不安をかき消し、2人はクラブのエントランスへ向かった。それぞれ2000円の料金を支払った。そのまま階段を下り、ダンスフロアへと躍り出た。



フロアはそこまで大きくなかった。広さはジュマンジの1F程度であろうか。人はまばらだった。数人がダンスフロアで踊っている程度だった。まだ時間が早かった。後ろから声をかけられた。スタッフがテーブル席を案内してくれた。六本木Vanityのダンスフロア周辺にあるVIPのテーブル席のようなものが、ここでは早い者勝ちで獲得できるようだった。テーブル席を離れ、早速サージングをすることにした。最初のターゲットを決め、声を掛けた。



「やあ、こんばんは。何飲んでるの?」



ソフトドリンクだよ。意外な答えが返ってきた。理由を聞いた。更に意外だった。彼女たちは高校生だった。18才だからいいの。彼女たちは楽しそうな笑みを浮かべながら、そう答えた。我々は未成年には決して手を出さない。「家に帰って勉強しなさい」冗談交じりにそう1言告げた後、すぐに放流した。ルールは守るためにある。


ケチャが、フロア付近で体を揺らしている2人組に声を掛けた。歯科衛生士と看護師。レベルは6と7。中々の上玉だった。「席で一緒に飲もう」我々の提案は受理された。彼女たちは、我々をテーブル席まで案内してくれた。


彼女たちはドリンクの注文方法を教えてくれた。ビールを買うか、ソフトドリンクを泡盛で割るとのことだった。バーカウンターのとなりに、ファミレスに必ずあるようなドリンクサーバーの機械があった。そしてその隣に、取っ手を引くと泡盛が出てくるタンクが並んでいた。「車で来る子が多いからね。ソフトドリンクは飲み放題よ」彼女たちはそう説明してくれた。沖縄のクラブでは、一切お酒を飲まない子(シラフの子)が一定数いることとなる。我々にとっては良い情報ではなかった。


テーブルに戻り、会話を再開した。いつも通り価値観を引き出し、ルーティーンを使って恋愛遍歴を引き出した。ある程度遊んでいる子たちのようであった。2人とも程よく飲んでいて、頬が少し赤らんでいた。「クラブにはいつも朝までいるのかい?」asapenが尋ねた。それが殆どで、クラブを出ることは滅多にない、そう2人は答えた。「お兄さんたち、仕事で来てるの?旅行で来てるの?」彼女たちから質問を受けた。旅行だよ、と正直に答えた。会話が盛り上がらなくなってきた。しばらく会話した後、彼女たちは「トイレに行ってくる」と我々に告げ、その場を離れていった。


彼女たちを目で追った。トイレに辿り着く前に、他の男性のグループに捕まっているのが見えた。そのまま彼女たちはそこにとどまっていた。完敗だった。あのセリフを言われた時点で、我々の敗北は確定していた。悔しさを抱えたまま、我々もその場を離れることにした。



その後、続けざまに4組に声を掛けた。2人がけのテーブルに座っている女性2人組は、スト値が低いためすぐ放流した。OLのグループからは、粘った上でラインの交換のみ。地元の4人組と2人組は、会話は成立したが、連れ出しや即のサインを全く感じることは出来なかったために、和みも虚しく放流した。未来のない案件に時間を投資してはならない。我々の有する時間は限られている。無駄なことは出来ない。それは分かっている。じゃあ、未来のある案件はどこにいるんだ?


ケチャにサインを出して、クラブの端のロッカールームで緊急ミーティングをした。時刻は1:50 案件の数は、殆ど増えていなかった。B系の女の子が多いからか、ナンパ箱でないからか、理由は分からなかった。ただ、はっきりと感じていたことはあった。ここにいても、乱できる案件を獲得することは出来ないだろうという予感だった。2人の意見が合致した。決心した。



「このクラブから出よう」



階段を駆け上がり、クラブを抜け出した。ケータイを取り出し、次のクラブへの道程を確認した。少し遠いが、ストリートナンパをしながら徒歩で向かうことにした。歩道橋で大通りを渡り、歓楽街である松山の方面に向かった。松山でサージングを開始した。ターゲットは全くいなかった。深海魚モードを発動。どんなに小さな人影も見逃さない。沢山の人影が現れた。キャッチだった。ぶわっと、四方を囲まれた。キャバ、セクキャバ、ピンサロ、ソープ、、 ひっきりなしに誘われた。必死に振り払ったが、彼らの方が手慣れていた。立場が逆だった。我々が深海の餌だった。


たまらず、タクシーに乗った。運転手に住所を告げ、我々は次のクラブへと向かった。




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[B-STYLE (以前のクラブ名:code:b)]
国際通り隣の繁華街、松山から更に離れた場所にあるクラブ。沖縄で最も盛り上がっているクラブ(2013/8月現在、地元ナンパ師による口コミ)。国際通りからタクシーで5〜10分程。広さは六本木Vanity程度。日本人のみ入場可。音楽:オールジャンル。エントランス: 男性2000円、女性1500円 住所:沖縄県那覇市松山1-34-3
http://www.musu-b.com/shop4315/




2:30

入り口付近には誰もいなかった。人の行き来がない。クラブの盛り上がり具合は、クラブの入り口を見れば大体は予想できる。嫌な予感を振り切り、クラブに入った。店員が、やたらと丁寧に席に通してくれた。その理由もすぐ分かった。客がいないからだ。テーブル席に通され、泡盛の水割りセットが用意された。テーブル席からダンスフロアをひと目見た。それだけでターゲット全員を確認することが出来た。男性が2組。そして、女性が1組。このクラブにいる我々以外の人間は、それで全てだった。


「厳しいな」ケチャが呟いた。「どう戦っていいか、分からない」我々はもどかしさを感じていた。武器を揃えたが、戦う相手がいない。asapenは思考を巡らしていた。ふとasapenの脳裏に、「沖縄初日、0即」の文字が浮かんだ。あってはならないことだった。悔しさのような、怒りのような感情がふつふつと湧き出てきた。この状況は必ず打破しなくてはならない。そして打破するのは、常に自分でなければならない。考えろ。考えるんだ。そして、考えるだけではいけない。行動するんだ。行動しなければ、考えたことは実現しない。



「出るか?」ケチャがasapenに聞いた。asapenは難しい表情を浮かべた。ぐずぐずしている暇はなかった。決断しろ。そして、行動に移せ。意を決した。「出よう」 asapenはケチャに言った。


「あの子たちと一緒にね」



テーブル席を立った。asapenは、女性2人組がいるダンスフロアに向かった。



2人は地元の人ではなかった。九州からの旅行者だった。レベル6のOLと、職業不明のレベル7。7は旅行者ではあったが、これから沖縄に長期滞在する予定だと言っていた。即座にケチャにサインを送り、ヘルプを頼んだ。ケチャが会話に参加してきた。一気に場が盛り上がった。「今まで何してたの?」「飲み屋で飲んでいたの」「クラブに来たのは?」「ついさっき。踊りに来たの。パーッとやりたいの」「君たちは、誰もいないクラブでも踊って楽しめるタイプ?」asapenが仕掛けた。えー、と女の子たちは互いの顔を見て、答えを渋っていた。ケチャと顔を見合わせた。ケチャの顔には笑みが浮かんでいた。うなずき合った。彼女たちは今までの案件とは違う。確実なIOIがある。そして、場の主導権が我々に移ろうとしている。


asapenは時計を盗み見た。2:45 もう、先程いたクラブ「アンダーグラウンド」には戻れない。ストリートも望みが薄かった。最後のチャンスだった。絶対に逃すわけにはいかなかった。ケチャが飲み打診をするサインを送ってきた。行こうか。いや、待て。決断を留まり、asapenはもう1度時計を見た。そして、もう1度連れ出しの方法を考えた。絶対に逃してはいけない案件だった。ミスは許されない。だからこそ、より良い方法を試してみなければならなかった。考えろ。考えるんだ。この状況に1番適した、連れ出しの方法を。


暫くして、閃いた。自分の記憶が頼りだったが、それに賭けることにした。ケチャにサインを返した。そして、自分が打診する旨のジェスチャーをした。asapenは彼女たちに話しかけた。「踊り足りないでしょ?他にいいクラブを知っているんだ。一緒に行かないかい?」最高ね、とレベル7が笑顔で答えた。6を見て、答えを促した。6も頷いた。我々は彼女たちを出口まで導き、クラブを出た。




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[ファンタジースペース]
国際通りのど真ん中、むつみ橋交差点から歩いて1〜2分の場所にあるクラブ。1〜5F各階にフロアが分かれている。(1F:HIPHOP/R&B/TOP40/REGGAE、2F:エントランス、3F:LOUNGE 4F:EVENT FLOOR 5F:DINING BAR)それぞれのフロアの大きさは広くない(六本木のハートランドの面積の半分程度) 音楽:オールジャンル。エントランス: 男性2500円、女性1000円 住所:沖縄県那覇市牧志2-17-46
http://locoplace.jp/t000273660/




2:55  B-STYLEからタクシーで10分程で到着した。国際通りのむつみ橋交差点の近くにあるクラブ、ファンタジースペースの入り口。紫色にライトアップされたビルの1階に、エントランスがあった。周辺に若者の集団がちらほらと見えた。それぞれが数人でたむろしながら、タバコを吸っていた。


タクシーを降り、7が勢い良くエントランスに入っていった。受付のおばちゃんと会話をしているところに、我々が遅れて到着した。7の困ったような表情が目に入った。受付のおばちゃんが残念そうに言った。「ごめんね。今日はね、クラブは3時で閉まいなの」


えー、そんな。どうしよ。レベル7が不機嫌そうな表情を我々に向けた。どうしようもない雰囲気が漂った。asapenはケチャに目線を送った。ケチャが目線に気付き、そして、この状況が、作り出されたものだということに気付いた。asapenはこのクラブが3時で閉まることを知っていた。クラブに踊りに来た彼女を、直接ホテル飲みに誘うのは不自然すぎた。そのため他のクラブに誘った。しかし残念ながら、クラブはもうクローズしていた。彼女たちは他のクラブを知らない。彼女たちは、このまま夜を終わらせるには、まだ何か足りないと思っている。場の空気は、エネルギーに満ちていながらも、向かう方向が定まっていなかった。やっとここまできた。最後は、彼女たちを適切な方向に、そっと押してあげるだけで良かった。



「ひとつ提案があるんだけど」


asapenは彼女たちに言った。



「俺たちのホテルにシャンパンがあるんだ。朝まで一緒にお祝いしないかい?」



OKを貰った。すぐにタクシーを拾った。我々は、国際通りにある我々のホテルへと向かった。




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3:15 2つある部屋のうち、セッティングが完了しているasapenの部屋へと彼女たちを誘導した。シャンパン(スパークリングワイン)を手際よく開けた。ケチャが話を盛り上げている間に、彼女たちのコップにスパークリングを注いだ。我々のコップには、彼女たちに見えないように「のんある気分」を注ぐ。我々はゲームに負けた時は、ためらいなくこれを飲み干す。自ら飲むことで、相手にも飲むことを促す「メガンテ」を改良した「ノーダメージ・メガンテ」だ。お酒を飲めない我々が、苦肉の策で編み出したルーティーンである。


山手線ゲームで場を盛り上げ、STEPを徐々に移行する。キングス・ゲーム・テンション・エレベーター。フィンガー・サイン。ノーダメージ・メガンテの連発。場は最高潮の盛り上がりに達した。ケチャにサインを送った。「乱」のサイン。サインが受領された。いけるか?緊張が走った。お題にフリータイムを指定。フェイズシフト。asapenが7に。ケチャが6に。ダブル・ギラ。ディープキス。さあどうだ。このまま決めろ。乱が決まれば、4即だ。



「asapen!」



ケチャが叫んだ。振り向いた。サインを出していた。ショッピング・セパレートだった。乱は不可能か。戦術を変更し、トゥワイス・セパレートで4即を狙う。そのために、まずそれぞれが即を完了させる。「飲み物を買ってくる」ケチャが6と部屋を出た。部屋には7とasapenのみとなった。女友達がいなくなり、彼女の態度が変わった。再度、フェイズシフトをした。ゆっくりと、彼女にキスを仕掛けた。抵抗はなかった。キスが返ってきた。


彼女はハーフだった。日焼けの跡がとても刺激的だった。そして彼女のダーハは、今まで抱いてきたどの女性よりも上質で、きめ細やかだった。



行為を手早く済ませ、ケータイを確認した。ケチャから「少し時間をくれ」とメッセージが届いていた。返信し、7と会話をしながらケチャからの連絡を待った。暫くして、即完了の報告を受け取った。もう少し7と一緒に居たい気持ちを抑えて、部屋に戻ってきてくれ、とメッセージを返した。了承の返事を受け取った。asapenは意識を切り替え、深呼吸をした。我々の戦いはまだ終わっていなかった。


部屋に戻ったケチャから、すれ違いざまにケチャの部屋のキーを受け取った。再度飲み直す空気を作る。「飲み物なくなっちゃったじゃん。仕方ないから、俺らで買い出しに行ってくるよ」とasapenは言い、今度は6の手を引いて、部屋を出た。「忘れ物をした」と、コンビニのあるロビーではなく、ケチャの部屋に向かった。ケチャの部屋に到着し、和みをした。フェイズシフト。ギラ。グダついた。ルーティーン、ラスト・ミニッツ・テンション・エレベーター。再度和んで、そして、ギラ。再度グダ。ケータイが振動した。ケチャの即報告だった。緊張が走った。あとはasapenだけだ。再度和み。ギラ。グダ。和み。ギラ。グダ。雰囲気ぶち壊しルーティーン。パワー・ギラ。鬼グダ。


雰囲気を完全に壊してしまった。ケチャが突破したグダを越えられなかった。とても悔しい想いだった。


我々は最初の部屋に戻った。部屋ではケチャと7がいちゃついていた。ケチャが笑顔を浮かべながらasapenに目線を送ってきた。意味は通じた。我々はこの後、彼女のダーハ値を表現するための新たなランクを作らなくてはならない。時刻は5:00だった。いつまでもいちゃついているケチャを女の子から引き剥がし、電気を付けて、4人一緒に部屋を片付けた。その後、彼女たちをロビーまで見送った。



彼女たちが国際通りに消えていくのを確認した後、2人はがっちりと握手を交わした。「旅ナンパ初日、3即」この戦果を生み出せたことを喜び合った。そして、新たに出会った奇跡のダーハに、ダーハ値「極(きわみ)」という新しいランクを与えた。我々は互いを褒め称えた。しかし、それは短い間だけだった。すぐに2人は押し黙った。そして、それぞれが今日の出来事を内省していた。この結果が、我々の実力からもたらされたもののようには感じていなかった。どうも上手く主導権を握れなかった。今回の成功に、我々が最も重要視する理論の再現性(誰が何度やっても、同じように成功すること)があるとは思えなかった。我々は今日出会った沢山の違和感を拭えないでいた。


綱渡りのような戦いだった。少しでもミスをしたら、結果は0だったであろう。そして、旅の残り日数は2日だ。我々は初日のミスを反省し、それを次回に活かさなくてはならない。しかし、今回はどこが悪いのかが明確に分からなかった。どうしてあんな風に上手く行かなかったのかが、2人とも腑に落ちていなかった。原因が特定できなければ、改善策は作れない。その原因が分からない。そうなると、どのようなアクションプランを立てればいいのかを決めることが出来ない。


この旅では明日以降、初日のように上手く結果が出ることはないだろう。真夏の沖縄ナンパ旅。残り2日は、極めて困難な戦いが待っているだろう。2人は何となくそう感じていた。そう思わずにはいられない結果だった。




沖縄ナンパ旅の初日が、幕を閉じた。






<沖縄ナンパ旅1日目>
【結果(定量)】

・稼働
20-22、23-5、合計8時間
・番ゲ (2人の合計値)
17件
・連れ出し
1件(OL、フリーター)
・即(2人の合計値)
3即(OL、フリーター)













<追記>

エントリーに出てくるルーティーンの解説や、asapenへの質問の回答を記載しております。ぜひ購読お願い致します。

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コメント

  1. 前はアドバイスありがとうございました!かざみです!
    まるで刑事のような頭脳ですね!クラブがやってないことを知っててそこに連れて行こうとするところは凄かったです!

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