こんばんは、吉本ユータヌキです。
“おばはん”はすごい。
“おばはん”と呼ぶと一見文句の様に思えるかもしれないが憎しみ果汁100%ではなく、半分は優しさでできているこの呼び方。うるさいし図々しいなと思うがどこか憎めない存在でもある。
僕が高校生の時の話。スーパーの中にある飲食店で働いていたのですが、各店舗の規模はそんなに大きくなく、休憩になるとスーパー全体での共同休憩室を利用していました。そんな休憩室では“暗黙のルール”がありました。
それは、先に部屋にいた人がテレビのリモコンを制覇できるということ。
いわゆるチャンネル権の獲得できるというわけです。
スーパーの休憩は大体お昼過ぎの13,14時にパートのおばはんが密集していて、僕もよくこの時間帯に休憩をもらっていました。
そうなると休憩室で流れる番組はそう...僕の大嫌いな修羅場の宝石箱ことドロドロの昼ドラですよ。
昼からおばはんとドロリッチするぐらいならば興味がなくてもワイドショーが良い。ワイドショーも大概ドロリッチだが。もはやニュースでもいい。とりあえず休憩中に昼ドラはヤダ。いや、百歩譲って昼ドラも我慢するとしよう。
しかし、おばはんというのはすごく強い生き物で、人類史上最強とも呼ばれる生命体なので
DVDデッキを繋げて韓国ドラマ見よるんですわ。
どうやら過去にパートのおばはんが集結してスーパーの店長にDVDデッキを備えろとクーデターを起こしたらしく、それ以降休憩室にはDVDデッキが常備されていました。
え、そこまでする?と思いがちなのですが、おばはんという生き物は未確認非行物体ですから。共同部屋だろうとテレビの占領もお構いなし、自分の見たいもの、したいことに向かって真っ直ぐ生きている。図々しいどころか“図々々々しい”ぐらいが丁度良いのです。
そんなある日、僕がお昼休憩で休憩室に入ると珍しく誰もいなかったのです。
おばはんは侮れない。もしかしたら気配を消して油断した僕の首元に噛み付いてくるかもしれない。大阪のおばはんはいつも身体のどこかにヒョウやトラを飼っているから。
殺伐とした部屋の隅々をバイオハザードの如く緊張しながら確認したのですが奴らはいませんでした。
お、ラッキーゆっくりテレビ見れる!と思いながらリモコンを手元に置き、ワイドショーを見ていると少しずつ特定危険生物の“OBA-HAN”が侵入してきました。
しかし、僕は負けてはならぬと物怖じすることなくリモコンを死守しました。
吉田沙保里ですよ。僕はチャンネル界の吉田沙保里となって死守しました。
天井からぶら下げられているテレビなのでリモコンがないとチャンネルを切り替えることができない。つまり、DVDすら見れないという八方塞がりでフォール勝ちを収め、僕は意気揚々と両腕を上げ、雄叫びをあげて勝利宣言をしようとしたところで判定は覆りました。
テレビの向きを変えられてしまいました。
ええええええええええええええええええええええええええええ。
そんな技ある!!!????それは掟破り過ぎひん???
さすがにその考えはホームセキュリティーもガラ空きやわぁぁぁ。
リモコン持ってても見えへんかったら意味ないやーん。
僕は
ンァッ! ハッハッハッハー! この日本ンフンフンッハアアアアアアアアアアァン!
アゥッアゥオゥウアアアアアアアアアアアアアアーゥアン! コノヒホンァゥァゥ……
アー! 世の中を……ウッ……ガエダイ!
と泣き喚きながら部屋を後にしました。
あの日を境に僕は“おばはん”に感服宣言を掲げたわけですよ。
おばはんってのは“図々々々々々々々々しい”。サザエさんのエンディングにも見えそうなぐらい図々しい。天敵だ。
しかし、女性はいつか必ず“おばはん”になる。
ウチの母親はさすがにそこらへんの図々しい“おばはん”へ進化することはないか思っていたが、最近少しずつおばはんの片鱗が見えてきた。
寝る時にテレビを消さない。消して寝なさいと言ったところで『タイマーしてるから!』と言い返してくる。
タイマーをしてるのはわかった。まだ理性があるのと努力が見える。
しかし、タイマーが切れるまでに寝てしまっているのをみつけた時にテレビを消しにいくと
『見てる!寝てても見えるから!!!』
人の想像を遥かに越える能力を身につけた瞬間から“おばはん”のはじまりなのだろう。
“おばはん”はすごい。
おわり