西村奈緒美 西村奈緒美
2014年7月2日16時49分
全国唯一の常設闘犬場、高知・桂浜の「土佐闘犬センター」が今年度から、闘犬の常時公開をやめた。かつては観光客でにぎわったが、動物愛護の世論の高まりに配慮し「とさいぬパーク」に名称変更。子犬とふれあう企画などを増やし、犬種の保存に軸足を移す。
2日、生後2カ月半の子犬と遊ぶ「仔犬(こいぬ)ふれあいツアー」があった。兵庫県から社員旅行で訪れた竹之内育さん(26)は「もっと獰猛(どうもう)かと思ったけど意外と普通の犬でした」。本田歩美さん(28)は「怖いイメージだったけど、子犬はかわいかった」と話した。
センターは、全国初の観光客向け民間闘犬場として1964年にオープン。68年にNHK大河ドラマ「竜馬がゆく」が放送され、観光客が増えると、約250席がすぐに埋まるほどにぎわった。多い日は1日5試合が行われ、春、秋、正月には大規模な「本場所」も開かれた。
パークや県の資料によると、闘犬の歴史は戦国時代にさかのぼるという。幕末には「風俗を乱す」として禁止令が敷かれたが、愛好家らの請願が相次ぎ、明治の中ごろに解禁された。
土佐闘犬(土佐犬)の雄2頭が、木枠で囲まれた直径4メートルほどの土俵に入り、3人の審判が判定する。先に鳴いたり、3歩以上逃げたりすれば負け。かみつかれた犬がけがをすることもあった。
2010~11年に環境省が開いた「動物愛護管理のあり方検討小委員会」では、「残虐だ」「血が出るなど目を覆いたくなる」といった意見が出た。東京都、神奈川県、福井県、石川県は条例で土佐犬による闘犬を禁止。飼い主のしつけや管理が不十分で、人に危害を加える事故が起きたこともある。
パークによると、かつては旅行パンフレットでも紹介されたが、近年は「イメージが悪い」と敬遠されがち。ここ数年の来場者数(非公表)は、ピークだった1970年ごろの6割ほどに減ったという。
土佐犬は94年、高知県の天然記念物に指定された。現在は県内で300頭ほどいる。創業者の長男で、経営を引き継いだ「パークサービス高知」の弘瀬隆司社長(49)は「闘犬の文化を守りながら闘犬以外の魅力を発掘し、土佐犬が生き残る道を考えなければいけない」と衣替えを決意した。
弘瀬さんがヒントにしたのは秋田犬だ。
大正時代まで大館(おおだて)地方の闘犬場でさかんに試合が行われたが、強さを求めて土佐犬などとの交配が繰り返され、雑種化が進んだ。
本来の秋田犬を守ろうと、27年に秋田犬保存会(現一般社団法人)が発足。立ち耳で巻き上がった尾といった特徴が残る個体を交配させ、現在の秋田犬に近づいていった。
31年に国の天然記念物に指定され、国内飼育数は現在約2万5千頭。忠犬ハチ公の映画化で人気が高まり、海外でも約3500頭が飼われている。同会の庄司有希さん(23)は「先人の危機感と努力が秋田犬を守った」と振り返る。
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朝日新聞社会部
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