July 2, 2014
元NASA職員や若いハッカー、熟練エンジニアなどのグループが、1990年代半ばに放棄され漂流を続けている宇宙探査機を、太陽を回る軌道から地球の軌道に取り戻すという壮大な夢の実現に向けて動いている。
この探査機はISEE-3(International Sun-Earth Explorer-3)と呼ばれ、1978年に太陽風の調査などの目的で打ち上げられた。1997年に運用を終了したあと、NASAはほとんど関与してこなかった。
しかし今年5月、天文愛好家らがISEE-3との交信に成功。民間グループが地球軌道外の探査機を制御するのは史上初となった。グループはクラウドファンディングで16万ドル(約1600万円)の資金を獲得。6月28日にはプロジェクト・メンバーがゴールドストーン深宇宙通信施設のDSS-24アンテナを使って同期通信に成功し、探査機の軌道パラメータの調整に必・・・
この探査機はISEE-3(International Sun-Earth Explorer-3)と呼ばれ、1978年に太陽風の調査などの目的で打ち上げられた。1997年に運用を終了したあと、NASAはほとんど関与してこなかった。
しかし今年5月、天文愛好家らがISEE-3との交信に成功。民間グループが地球軌道外の探査機を制御するのは史上初となった。グループはクラウドファンディングで16万ドル(約1600万円)の資金を獲得。6月28日にはプロジェクト・メンバーがゴールドストーン深宇宙通信施設のDSS-24アンテナを使って同期通信に成功し、探査機の軌道パラメータの調整に必要な情報を取得したとしている。
またグループはNASAから、少なくとも7月16日まで活動継続の承認を受け、その間に初の軌道制御操作を試みる予定だ。
これが成功すれば、今月末までにエンジンが再起動され、探査機は現在の太陽中心軌道から地球周回軌道に投入される。プロジェクトリーダーの一人、宇宙開発企業スカイコープ(Skycorp)代表のエンジニア、デニス・ウィンゴ(Dennis Wingo)氏にプロジェクトについて話を聞いた。
◆NASAが放棄するまでにISEE-3が成し遂げたことは?
太陽の方向へ地球から百万マイル近くも離れた場所へ到達した。当初のミッションは太陽の調査だった。 ISEE-3は彗星に大接近した初めての探査機でもある(1985年にジャコビニ・ツィナー彗星のイオンテイルの中を通過、彗星の核から7800キロの距離まで接近した)。
◆NASAは送信機器を破棄したのに、どうやって探査機と通信したのか?
我々が協力関係にあるソフトウェアラジオ(SDR)メーカー、エトゥス・リサーチ(Ettus Research)社は、NASAが使っていたハードウェア装置すべてをエミュレートできるソフトウェアを搭載したハードウェア部品を作っている。それらを組み合わせ、探索機の言語で通信し、受信データを解析した。
◆現在の軌道を変更する理由は?
そうしなければ地球の軌道に投入できないからだ。このままでは月に衝突する可能性もゼロではない。探査機を月上方の望ましい軌道に乗せるため、探査機の位置を確認し、スラスターを起動する必要がある 。
◆正しい軌道に投入すれば、月との衝突を避けることができるのか?
そうだ。4月12日にようやくプロジェクトが開始したので、あまり時間がなかった。 探索機が月に接近するにつれ、圧力が高まり、軌道変更が難しくなる。軌道変更に必要な燃料が足りなくならないように、これからの数週間は軌道修正に集中しなければならない。
◆すべて順調に行った場合、次のステップは?
探査機を安定した地球の軌道に載せ、観測機器を再稼働して教育に役立てたい。観測データをウェブ上で公開し、誰もがアクセスし、利用できるようにするつもりだ。
ILLUSTRATION BY NASA