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2014年07月02日
集団的自衛権が閣議決定されましたが、これについては機会を改めて「じっくり」書くことにして、本日はこの話題です。
イラク北部で勢力を拡大しているイスラム教スンニ派の過激武装集団「イラク・シリアのイスラム国(ISIS)」が6月29日、「イスラム国」として国家の樹立を宣言しました。
同時にリーダーであるアブー・バクル=バグダディーがイスラム社会最高権威の「カリフ」であるとして、「全てのイスラム教徒は彼に忠誠を誓い支持する義務がある」と表明しました。
「イスラム国」(旧ISISあるいはISIL)とは、2000年にヨルダン人のザルカーウィーが設立したテロ組織で、2004年に国際テロ組織・アルカイダと合流しました。ところが2006年に分離・改組しています。
2010年にリーダーとなったアブー・バクル=バグダディーは、1971年生まれのイラク人といわれていますが、その素性がほとんどわかりません。一部報道で公表されている写真も本物なのかどうかは不明です。
それでは今後この「イスラム国」が勢力を拡大し、例えばイラク全域だけでなくシリアまでも制圧して中東全域の勢力図を大きく変えてしまうかどうかは、このバクダディーの指導力にかかっていることになります。それではその可能性はどれくらいでしょう?
単なる金目的のテロ集団のリーダーであるだけならば局地的な混乱で終わります。しかし多数のイスラム教徒から指導者として受け入れられれば、その影響は中東全域だけではなく全イスラム社会に拡散して、国際社会に与える影響が(原油価格の急上昇などの悪影響も含めて)大きくなります。
何しろ世界中でイスラム教徒は16億人もいて、そのうち「イスラム国」も含まれるスンニ派は14億人もいるからです。
シーア派は2億人で、主にイランとイラク(北部を除く)にいます。イラクでは少数派であるスンニ派のサダム・フセインが倒されたあとは、マリキ首相らシーア派が米国の支援を受けて政権を掌握していますが、北部に多いスンニ派を弾圧し「イスラム国」が勢力を伸ばす原因を作ってしまいました。
逆にシリアではスンニ派が多数を占めますが、政権はシーア派(分派のアラウィー派)のアサドが掌握し、スンニ派を中心とする反政府軍と泥沼の内戦が続いています。同じスンニ派の「イスラム国」は、特に今年に入ってからシリアの反政府軍から武器と兵士を受け入れ急激に勢力を拡大しました。
ところでイスラム教とは、610年にメッカの商人だったムハンマドが突然に神の声を聞いたところから始まります。唯一の神(ヤハウェ、アラビア語ではアッラーフ)の教えが絶対と信じ、ムハンマドは神でも教祖でもなく、神の教えを唯一聞ける「預言者」とされています。
632年にムハンマドが亡くなると誰も神の教えを聞けなくなったため、650年頃にムハンマドが聞いた神の教えをまとめたクルアーン(コーラン)が編纂され、これが今でもイスラム教徒の生活のすべてです。
ムハンマドの死後、指導者(カリフ)としての地位はムハンマドの縁戚者が受け継いでいったのですが、661年に4代目カリフのアリーが暗殺され、シリア総督のムアウィアがカリフの地位を奪いウマイヤ朝を開きます。
このウマイヤ朝から始まるカリフを正統と認めるのがスンニ派で、あくまでもカリフの地位はムハンマドの血縁者に限ると考えるのがシーア派です。以来1350年間もスンニ派とシーア派は憎み合い、殺し合ってきました。
1979年のイラン革命で、亡命先のパリから帰国したホメイニ師が熱狂的に迎えられたのは、ホメイニ氏がムハンマドの子孫だとされていたからです。
「イスラム国」に話を戻しますと、バグダディーはムハンマドの子孫で、全イスラム教徒が忠誠を誓い支持する義務があると主張していますが、大きな矛盾があります。
そもそも「イスラム国」はスンニ派のはずで、スンニ派はムハンマドの血縁ではなく神の教義そのものを重視するからです。またイスラム教は、神のもとにすべてのイスラム教徒が(国王も含めて)平等と教えており、いきなり「忠誠を誓え」と強がっても誰もついてきません。
またスンニ派で神の最大支援者を自負するサウジアラビア王室も、これでは「イスラム国」を支援するとは考えにくくなります。
したがって「イスラム国」とは、やはり石油などの利権を狙うテロ集団に近く、スンニ派に限っても広く受け入れられるものではありません。したがって中東全域の勢力図が大きく変わることもなく、さらに原油市場の需給関係が大きく変化して価格が急上昇する可能性も「ほとんど」なくなったと考えます。
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