iPS細胞による世界初の臨床研究を進めている理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの高橋政代プロジェクトリーダーが2日、臨床研究の一部中止を検討していることが分かった。短文投稿サイト「ツイッター」で明らかにした。理研広報は投稿が高橋氏本人の発言だと認めた。研究不正と認定されたSTAP細胞を巡る問題で、臨床研究を進める環境ではないとしている。
臨床研究は理研と先端医療センター病院(神戸市)が進め、高橋氏は臨床研究の責任者を務めている。網膜が傷んで視力が急激に落ちる「加齢黄斑変性」の治療で、患者の皮膚からiPS細胞を作り網膜の細胞に成長させて移植する。患者の皮膚からiPS細胞を作る作業はすでに始め、早ければ今夏にも患者に移植する見通しだった。
高橋氏は「現在進行している患者さんの治療のための細胞準備はやめるわけにはいきませんが、まだ始まっていない患者さんの治療については中止も含めて検討いたします」とコメントした。
理由として、STAP論文を発表した理研の小保方晴子研究ユニットリーダーらが同センターに所属し、「万全を期すべき臨床のリスク管理としてこのような危険な状況では責任が持てない」としたうえで、「患者さんも現場もとても落ち着ける環境ではない」と説明。理研が小保方氏を検証実験へ参加させ処分を先送りしたことについても「理研の倫理観にもう耐えられない」と批判した。
理研広報は臨床研究を中止するかどうかについて「高橋氏ひとりでは決められない。(臨床研究で)連携する組織と協議しなければいけない」としている。
▼iPS細胞 皮膚などの細胞に特定の遺伝子を入れ、受精卵のように体のさまざまな細胞や組織に成長できる「万能性」を持たせた細胞。病気やけがで失われた身体機能を回復させる再生医療や創薬への応用が期待されている。京都大学の山中伸弥教授が2006年にマウスの細胞で初めて作製し、その後ヒトでも成功した。山中教授は12年にノーベル生理学・医学賞を受賞した。
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