[集団的自衛権] 憲政に汚点残さないか
( 7/2 付 )

 いったい誰のための、何のための「解釈改憲」なのか。

 安倍内閣が、集団的自衛権の行使を認める憲法解釈変更の閣議決定に踏み切った。

 戦後70年を来年に控え、自衛隊発足60年のその日にである。

 平和憲法は、300万人以上の同胞と千万人単位のアジア諸国民が犠牲になった先の大戦への痛烈な反省から生まれた。

 「もう二度と海外で戦争はしない」。国民はそう誓い、国際社会でも平和国家としての存在感を高めた。

 集団的自衛権は、他国への武力攻撃を自国に対する攻撃と見なして反撃する権利だ。その行使容認は、憲法9条の「専守防衛」の理念を踏み外す行為と言わざるを得ない。

 安倍晋三首相は記者会見で「集団的自衛権の行使は、ほかに手段がない場合に限られ、必要最小限度である」と限定的な容認を強調した。

 しかし、いくら限定的といっても、専守防衛からの逸脱に変わりはない。

 限定容認がなし崩しにならないか、と国民も心配している。

 6月下旬、共同通信社が実施した全国電話世論調査で、行使を一度認めれば、容認の範囲が広がると懸念する回答が62.1%に上った。憲法改正でなく解釈変更で行使を認める考えに、反対57.7%、賛成29.6%だった。

 解釈変更の土台とした1972年の政府見解の読み替えも、あまりに乱暴だ。

 72年見解は、13条の幸福追求権などを根拠に9条の下でも必要な自衛措置を認めた。その上で「外国の武力攻撃によって(中略)、やむを得ない場合に必要最小限度の措置にとどまる」とした。

 つまり個別的自衛権さえ必要最小限度と縛ったのである。当然ながら、集団的自衛権は憲法上許されないと結論付けた。

 それを今回は、9条の下での自衛措置に集団的自衛権も含まれると真逆の解釈に変えた。

 これでは9条の骨抜きではないか。そう言われても仕方がない。

 行使容認の理由には、東アジアの安全保障環境が根本的に変わり他国に対する攻撃でも、わが国の存立へ脅威があるとした。

 それなら抜け道ではなく、憲法改正に正面から打って出るべきである。解散で信を問うてもよい。そこで、誰のための、何のための改憲か主張する。それこそ、首相の言う「憲法を国民の手に取り戻す」ことにつながるはずだ。

 憲法の根幹を解釈だけで変えては憲政を汚す恐れがある。


 
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