マンション計画の白紙化、駅前開発の凍結、小売業の出店抑制――。東京五輪特需が沸騰するなか、建設業界で「深刻なリスク」が顕在化した。工事現場で実際に手を動かす建設職人の人手不足によって需給バランスが崩れ、職人の労務費は上昇の一途。それが建設コストの上昇につながり、日本経済の足かせになっている。職人不足の弊害や実勢コストなどを継続的に取材してきた日経アーキテクチュア誌と日経コンストラクション誌が、日本全国で進行する「人材危機」の実情をリポートする。
建設職人の労務費高騰が、2016年3月の北海道新幹線の開業を見据えた開発計画を直撃した。JR函館駅前で計画が進んでいた2つのプロジェクトが相次いで白紙に戻り、新幹線開業に間に合わない公算が高くなったのだ。
函館市は2014年5月29日、JR函館駅に隣接する敷地で進めている「函館駅前市有地等整備事業」を中止すると発表した。同事業は、市や北海道旅客鉄道(JR北海道)が所有する約1万m2(平方メートル)の敷地に、一般見学ができる菓子工場や物販店などの複合施設を整備する計画だった。
[左]JR函館駅周辺の位置図。駅に隣接する敷地で計画されていた複合施設とホテルが、労務費高騰を理由に白紙に戻った(資料:函館市の資料とJR北海道への取材を基に日経アーキテクチュア誌が作成)
[右]複合施設の配置図。見学できる工場のほか、テナントを誘致する計画だった。左側がJR函館駅(資料:函館市)
■「事業費が3億円膨らんだ」
北海道新幹線は函館駅を通らず、北斗市内に設置する新駅「新函館北斗駅」を通るが、函館市は新幹線開業を街づくりの好機と捉え、函館駅前の再開発に着手していた。
事業主は2012年にプロポーザル方式で選ばれた洋菓子メーカーのペシェ・ミニョン(函館市)。事業費は11億5400万円を予定していた。
しかし、昨今の労務費高騰などで事業費が3億円ほど膨らむことが判明。同社は函館市に規模縮小を提案した。JR北海道を含め3者で協議した結果、計画を中止することが決まった。函館市の担当者は今後について「建築や街づくりの専門家の意見を聞いて検討する。新幹線開業に間に合うかどうかは不明だ」とした。
北海道旅客鉄道、人材不足、建設業界、小田急電鉄
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