日本が攻撃を受けていなくても武力行使を認める集団的自衛権は、自衛隊の活動に転機をもたらす可能性がある。集団的自衛権だけでなく、多国籍軍支援や離島防衛でも自衛隊の役割は広がる見通しだ。自衛隊の活動はどう広がり、歯止めはあるのか。活動拡大には法律の裏付けが必要で、安保法制を巡る論議は今後、具体的な法整備に舞台を移す。
■集団的自衛権 新3要件が「歯止め」
政府が集団的自衛権の行使を認めた最大の狙いは日米同盟を強化して抑止力を高めることにある。自衛隊と米軍が一緒に活動する場面が増え、アジア太平洋地域を中心に米軍の活動の一部を自衛隊が肩代わりする可能性が出てくる。
集団的自衛権行使が必要な例として、政府は8つの事例を示している。朝鮮半島有事で現地から救出した邦人を輸送中の米艦が攻撃を受けた際、自衛隊が米艦を守るケースや、日本上空を通過してグアムやハワイに向かう弾道ミサイルの迎撃など多くは対米支援だ。
アジアでの能力維持に多くの予算を割きづらい米国はこうした日本の動きを歓迎している。ただ自衛隊の海外活動が米国の動向に左右される余地が広がり、より厳しい環境での活動が拡大していく懸念をはらむ。政府は行使を限定的にするため一定の歯止めを設けた。
「密接な関係にある他国への武力攻撃で、国民の権利が根底から覆される明白な危険がある」など3つの要件がそれだ。首相は記者会見で「新3要件は憲法上の明確な歯止めとなる」と強調。公明党は「明白な危険がある」との表現は当初の「おそれ」より対象を限定できるとみる。
だが実際の判断では曖昧な面を残す。「明白な危険がある」かどうかは首相の総合判断に委ねられるからだ。一方で他国の戦争に巻き込まれかねないため、時の首相は慎重に判断せざるを得ず、実際に行使する公算は小さいとの見方もある。
公明党が歯止めと位置付ける「(国民の権利が)根底から覆される」との文言も、どう判断するか不透明な部分が残る。
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