集団的自衛権:81年見解を変更 戦後安保の大転換

毎日新聞 2014年07月01日 21時46分(最終更新 07月02日 08時24分)

集団的自衛権行使に関する政府解釈変更を決定する臨時閣議に臨む安倍晋三首相(左)と太田昭宏国交相=首相官邸で2014年7月1日午後4時57分、藤井太郎撮影
集団的自衛権行使に関する政府解釈変更を決定する臨時閣議に臨む安倍晋三首相(左)と太田昭宏国交相=首相官邸で2014年7月1日午後4時57分、藤井太郎撮影

 政府は1日、臨時閣議を開き、憲法9条の解釈を変更して集団的自衛権の行使を容認すると決めた。集団的自衛権は自国が攻撃を受けていなくても、他国同士の戦争に参加し、一方の国を防衛する権利。政府は1981年の政府答弁書の「憲法上許されない」との見解を堅持してきたが、安全保障環境の変化を理由に容認に踏み切った。自国防衛以外の目的で武力行使が可能となり、戦後日本の安保政策は大きく転換する。

 閣議決定文の名称は「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」。安倍晋三首相は閣議後に首相官邸で記者会見し、「海外派兵は一般に許されないとの原則は全く変わらない。日本が戦争に巻き込まれる恐れは一層なくなる」と理解を求め、内閣官房に関連法案作成チームを設ける考えを示した。

 今回の閣議決定は、81年見解の基となった72年国会提出資料の「国民の権利を守るための必要最小限度の武力行使は許容される」との考え方について「基本的な論理」とし、「今後とも維持されなければならない」と位置付けている。

 そのうえで「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃」が発生し、「我が国の存立が脅かされ、国民の権利が覆される明白な危険」があれば日本が武力行使できると明記。「国際法上は集団的自衛権が根拠となる場合がある」との表現で、集団的自衛権の行使容認に加え、集団安全保障も否定していない。

 併せて、従来の「自衛権発動の3要件」に代わる武力行使の新3要件を策定。日本か他国かにかかわらず「我が国の存立が脅かされ、国民の権利が覆される明白な危険」があれば武力行使できるとした。公明党の山口那津男代表は記者会見で「憲法の規範性を維持する役割を果たせた」と強調。ただ、自衛隊の活動範囲や、何が「明白な危険」に当たるかは示さず、政権に裁量の余地を残している。

 このほか閣議決定では、武力攻撃に至らない侵害▽国連決議に基づく多国籍軍支援▽国連平和維持活動(PKO)−−などで自衛隊の活動を拡大するため、法整備を進める方針も示した。【青木純、高本耕太】

 ◇従来の政府見解

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