料亭、ディズニー、三越に学んだ「気づかい七則」

印南敦史 | ライター
2014.07.02 07:30

「気がきく人」の習慣


大正時代に創業した料亭「橘家」の長男として生まれ、大学卒業後は三越に入社。社内研修制度を利用してフロリダのディズニーワールドで「ディズニーのマネジメント」を学んだのち、グアム三越の社長兼ティファニーブティック支配人に。三越退社後は、料亭の気づかいやおもてなし精神、ディズニーメソッドを取り入れたコーチングスタイルを確立し、精力的に活動中。

要約しても華々しさがわかる経歴を持つ著者が、経験を通じて学んだ「うまくいく習慣」を紹介した書籍が、『「気がきく人」の習慣』(上田比呂志著、アスコム)。

「うな重を、自分から見てお重の遠い側から食べれば、崩した部分が相手に見えない」など、序章の段階から興味深いエピソードが次から次へと飛び出します。きょうは、第二幕中で紹介されている「気づかい七則」をご紹介しましょう。

           

しつらえる


「しつらえる」とは、「準備を整える」「空間を演出する」ということ。たとえば料亭は柳のようなやわらかさでおもてなしを提供し、三越は四季の変化を感じさせるしつらえなどで空間を演出、ディズニーはエンターテインメントという型で、しつらえを完全に仕組み化したのだそうです。

大切なのは、お客様をお迎えするという気持ち。その気持ちを示すための準備をすることが、空間をしつらえることであり、心をしつらえることであり、演出というしつらえを用意することでもあるというわけです。(99ページより)


心を整える


「自分自身を乱れなくお客様を受け入れられる状態にしておく」こと。目をつぶって深く相手のことをイメージし、なにが求められているかを感じてみる。しかし「考える」ことには慣れているものの、「感じる」ことには慣れていない人は多いので、感じ取る訓練をすることも、心を整える方法のひとつだそうです。

自分の状態を見なおし、お客様をもてなすための準備をしていく。心が整えば、自然体の自分で、嫌みのない気づかいを行なうことができるといいます。(101ページより)


技を磨く


大切なのは「人に喜んでもらうにはどんなことをすればいいか?」という意識を持ち続け、その表現方法である技を磨いていくこと。この意識は気づかいの作法のようなもので、どんな仕事をするときにも応用がきくといいます。

たとえば、忙しい上司に話しかけるときには「3分だけお時間いただけますか?」と時間を明確にしたり、人に資料を見せるときには「ペラ1枚にまとめる」ことで、相手が要点を速く理解できるように心がけるなどがいい例だとか。(103ページより)


笑顔で接する


笑顔で接することが気づかいの基本である理由は、笑顔は相手に「私はあなたのことが好きです」「あなたのおかげで私はとても楽しい」「あなたにお目にかかれてうれしい」というメッセージを伝えることになるから。

そして意識すべきは、心の扉は無理やり開けようとすると固く閉じてしまうものだということ。相手に心をすっと開いてもらうためには、相手が興味ありそうなお話を、笑顔とともに披露することが大切だというわけです。(105ページ)


耳をかたむける


三越時代に著者が学んだことのひとつが、「とにかくお客様のお話に耳をかたむける」ということ。笑顔で接するのと同じように、こちらが学ぶ姿勢を持ち、耳をかたむけていると、相手の心の扉が開いてくるからだといいます。不思議なもので、心を込めて耳をかたむけることが、お客様に対してのおもてなしになるそうです。

なお、話の聞き方について心がけるべきポイントは次の3つ。


1.承認の言葉を入れる(「なるほど」「そうですね」と、相手の話を受け止めているというメッセージを伝える)
2.質問をはさむ(「こういった場合はどうでしょうか?」など、話の流れを止めない範囲で問いかけると、深く聞いているということが伝わる)
3.相手の言葉を繰り返す(相手の言葉を繰り返すと、こちらがよく知らないことでも「わかっているね」という雰囲気が生まれる)(107ページより)


想像を超える


相手の想像以上のことをすると感動を呼べるという考え方。そのため、相手も自分の欲求として自覚していないようなところに光を当てていき、目に見えないニーズをつかみとっていく。「疲れたな」と感じたとき、そこにイスがあればうれしい。だから、相手の先回りをして、イスを置いて差し上げる。それこそが気づかい。

相手の立場に立って初めて、どうすれば想像を超えることができるかが見えてくるといいます。(110ページより)


始末をする


次へとつながるお見送りをし、尽きない名残りとすること。たとえば三越の場合は、「御用聞き」という仕組みがそれに当たるのだそうです。お中元、お歳暮の時期になると御用聞きがご自宅にうかがい、注文を承ってくるというもの。そして御用聞きの真髄は、できるだけお客様の希望を叶えて差し上げることだといいます。

三越はご年配のお客様が多いので、ご家庭に行って「電球が切れちゃった」という話になれば、お手伝いしながら取り替える。こうした振る舞いが「始末」となって、お客様とのつながりを深めていくというわけです。(113ページより)



料亭、ディズニー、三越と、異なる業種でおもてなしを極めてきた著者の言葉は、ひとつひとつが強い説得力を感じさせます。冒頭で取り上げたうな重の話のように、興味深いエピソードも満載。目を通してみれば、新鮮な驚きを感じることができるはずです。


(印南敦史)

  • 「気がきく人」の習慣
  • 上田比呂志|アスコム
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