【麻生大臣の(4年前の)国債解説】と同じ誤解に基づいた記事です。
- 終戦直後のような預金封鎖は本当に起きるのか?国民に浸透した「超財政悪化不安」の現実味と対策 (ダイヤモンド・オンライン)
一方、国債消化原資となっている個人金融資産にも、限界がある。わが国の経常収支は何とか黒字を維持しているものの、黒字幅は急速に縮小している。経常収支の黒字幅が縮小することは、国内の資産蓄積のペースが鈍るということだ。
足もとの経常収支のペースを考えると、今後金融資産の大幅な積み上げは期待できないだろう。そうなると、これから国債消化の原資にも限界が見えてくる。ある試算によると、あと10年以内に国債消化のための個人金融資産の原資が枯渇する可能性があるという。それが現実のものになると、国債市場が不安定化することになるだろう。
下のグラフを「家計金融資産が増加しているから、政府債務(≒国債)を積み上げられる」と解釈しているわけですが、因果関係は逆で、「国債残高増加→マネーストック増加(銀行の預金創造)→家計金融資産増加」です。
なので、「国債消化のための個人金融資産の原資が枯渇する」を心配する必要はありません。
では何が問題なのかというと、余剰供給力の消失です。生産と国内需要の差を表す経常収支の黒字は、史上最長の景気拡大(円安景気)の末期に25兆円に達しましたが、東日本大震災後に急減し、現在ではほぼゼロとなっています。*1
日銀短観も、日本経済の余剰供給力の消失を裏付けています。
- 焦点:短観が裏付けた供給力不足、物価上昇材料に (ロイター)
ダイヤモンドの記事では、経常収支黒字縮小の問題を「金融資産蓄積ペースの鈍化」としていますが、国債を発行すればマネーストックはいくらでも増やせます。本当の問題はそこではなく、余剰供給力が消失すると、国債発行→マネーストック増加→財政支出→インフレ・クラウディングアウト、となることです。マネーを増やしてもインフレになるだけで、実質所得を増やせない状態です(生産設備が破壊された敗戦直後がこの状態)。*2
「悪いインフレ」の到来が懸念されるところです。