ソウル=貝瀬秋彦 北京=倉重奈苗 ワシントン=大島隆
2014年7月1日20時50分
安倍政権が集団的自衛権の行使を認める閣議決定をしたことが、各国に波紋を広げている。日米同盟強化につながると歓迎する米国に対し、歴史問題で関係が悪化している韓国は不信感をにじませ、尖閣問題などで対立する中国は強い懸念を表明した。
■韓国、安保政策の重大な変更
「平和憲法に従った防衛安保政策の重大な変更と見て鋭意、注視する」。韓国外交省報道官は1日夜、安倍政権の閣議決定を受けて声明を読み上げた。
声明は、日本政府が今後の法制化の過程で「平和憲法の基本精神を堅持し、地域の平和と安定を害さない方向で透明に進めなければならない」と指摘。朝鮮半島の安保や韓国の国益に影響を及ぼす事案では、韓国の同意がない限り、日本の集団的自衛権行使は「決して容認できない」と強調した。
また、歴史に起因する疑心と憂慮を払拭(ふっしょく)し、周辺国から信頼されるよう「歴史修正主義を捨て、正しい行動を見せなければならない」と注文を付けた。
韓国政府は日本の集団的自衛権行使に関し、正面からの反対は避けてきた。国連憲章で認められた権利である上、同盟国である米国が強く支持している事情もある。北朝鮮情勢などを考えれば、マイナスばかりではないのも確かだ。
一方で、国内では警戒感が強い。メディアは「日本が戦争ができる国に」と伝え、ソウルの日本大使館前では1日、市民団体が集会を開き、「侵略国家に回帰するという宣言と同じだ」として反対を訴えた。
従軍慰安婦問題をめぐる河野談話の検証で安倍政権への不信が増すなか、韓国政府は世論も意識しながら日本政府を牽制(けんせい)した。韓国政府関係者は「安倍政権のような歴史観を持った日本が集団的自衛権行使に突き進んだら、本当に歯止めがかかるのかという国民の不安は大きい。日本はそのことを、きちんと認識すべきだ」と指摘する。(ソウル=貝瀬秋彦)
■中国、日本の反対の声に注視
中国では、閣議決定を国営新華社通信が速報するなど高い関心を示した。外務省の洪磊副報道局長も1日の定例会見で、「我々は日本国内に強烈な反対の声があることを注視している」と指摘。その上で「中国脅威をでっち上げ、自らの政治的立場を推進するやり方に反対する。中国の主権と安全を損なってはならない」と懸念を強調した。
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朝日新聞国際報道部
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