早野透=桜美林大教授・元朝日新聞コラムニスト
2014年7月1日16時19分
与謝野馨さんは自ら「全身がん政治家」というほど、若いころから四つものがんを経験している。先々週末、BS朝日から声がかかって、その与謝野さんと一緒に「いま日本は」という番組に出た。集団的自衛権について議論するためである。
「大事な岐路だ。どっちに行ってもいいが、やるならちゃんと議論しないと。気分でずるずる行くのはよくない」
与謝野さんは、いま咽頭(いんとう)がんのせいで声が出ない。のどを指で押さえて食道から空気を出して声を出す。むかし、一緒にシャンソンバーで歌った美声は聞けない。
与謝野さんのブログから引用したフリップが用意されている。
「日本は、日本国憲法によって運営されている。その憲法の解釈をロクな議論をせずに変えるという。日本の総理大臣はそんなに偉くない」
与謝野さんは第1次安倍政権の末期の30日間、官房長官を務めた。その与謝野さんが、安倍さんの一存で勝手に解釈を変えたらいけないとクギを刺しているのである。
「梶山静六さんから、われわれの世代は戦争がいかに悲惨なものか知っている、与謝野君、よく覚えておいてくれと言われたんですよ。あの戦争で310万人が死んで、その半数は餓死だったんですよ」
梶山さんが官房長官のとき与謝野さんは副長官で仕えていた。梶山さんは陸軍航空士官学校出で、田中角栄門下の武闘派といわれた。与謝野さんは、改憲派の雄中曽根康弘さんの弟子だけれども、梶山世代までの戦争体験の反省が憲法9条を産んだことを軽んじてはいけないと思っている。のどから音を絞り出してテレビ出演したのは、9条を勝手に解釈する安倍さんの暴走に、いてもたってもいられなかったかららしい。
■「チボー家の人々」と第1次大戦
パソコンで与謝野さんのブログ「馨は語る」をのぞいてみた。
そこに、100年前の夏(ヨーロッパメモ)という記事が載っていた。
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