福岡・熊本両国税局は1日、九州7県の2014年(1月1日時点)の路線価(1平方メートル当たり)を発表した。平均路線価(標準宅地の変動率)は7県すべてで下落し、九州全体で前年比1.5%下落した。金融緩和によるマネー流入と九州新幹線の開業効果の継続で、下落幅は前年(マイナス2.3%)から縮小したが、二極化傾向も鮮明になっている。
九州の67税務署のうち、管内の最高路線価が上昇したのは福岡市の「博多」「福岡」「西福岡」3署だけだった。博多駅前2丁目駅前通りが10.4%増と大きく伸び、繁華街である福岡市中央区天神2丁目の渡辺通りが横ばいだった前年から2.4%上昇に転じた。「緩和マネーで外資やファンドが過熱気味に買っている」(日本不動産研究所九州支社の山崎健二副支社長)
下落率が5%を超えるところも20署あった。大分県の臼杵市臼杵「辻ロータリー」(9%下落)のように「人口減で土地取引数が減少傾向をたどり、公共投資でも地価の下支えはできていない」(不動産鑑定士)場所が中心。民間への図書館運営の委託で集客が増え、地価下落を免れた佐賀県武雄市のような地点は少数派だ。市況改善は地方部に及びづらい。
九州の全標準宅地を見渡すと上昇は福岡県が2211カ所(前年は932カ所)で最多。熊本県が487カ所(同98カ所)で続いた。福岡市以外では「九州新幹線の開通で宅地整理や商業施設の開業が進み、熊本駅前や熊本市中央区、東区を中心に上昇が目立つ」(不動産鑑定士の戸取憲正氏)。
熊本市は12年4月の政令市移行による企業の事務所開業も市街地の上昇につながった。今後も国際会議場のMICE(マイス)施設を核とした「桜町再開発事業やJR九州の熊本駅再開発をにらんで上昇を期待する向きは多い」(同)。
一方、その他の県の上昇地点は長崎県は123カ所、佐賀県は19カ所、鹿児島県と大分県が5カ所にとどまった。宮崎県は継続して調査している2421地点全てで上昇地点がゼロとなった。上昇地点ゼロは5年連続。鹿児島県も「鹿児島中央駅周辺を中心に九州新幹線の開通効果で地価上昇が続いたが、マンション建設の最適地は減った。来年以降の上昇は不透明」(不動産鑑定士の前田豊氏)という。
沖縄国税事務所によると、沖縄県の標準宅地の平均路線価は横ばいとなった。観光関連を中心とする好調な景気動向や県内人口増加に伴う住宅需要などが下支えした。県内の最高路線価は那覇市久茂地3丁目の「国際通り」で5.5%上昇し、1平方メートル当たり58万円だった。県内6税務署の最高路線価は上昇と横ばいが3カ所ずつで、前年に3カ所あった下落箇所はゼロとなった。
不動産鑑定士、JR九州